省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金は、企業の省エネ対策を支援する国の補助金制度です。しかし、具体的にどのような取り組みが補助対象か詳しく知らない方も多いでしょう。
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金では、省エネに関わる先進設備の導入などの取り組みに対する経費を一部補助してくれます。補助金を活用すれば、初期投資を抑えて自社のエネルギー利用効率を最大化させて、コスト削減につなげられるのがメリットです。
今回は省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金について、対象設備・申請方法などを詳しく解説します。本記事を読めば、省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金を詳しく理解し、スムーズな申請が可能です。補助金を活用し、自社の光熱費削減を効率的に図りましょう。
自社で使える助成金・補助金・優遇制度が分かる
目次
- 1 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金とは?
- 2 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金の補助対象事業・設備
- 3 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金の補助対象外となる事業
- 4 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金の補助金額・補助率
- 5 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金を申請する流れ・ステップ
- 6 一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)とは?
- 7 エネルギー管理支援サービス事業者(エネマネ事業者)とは?
- 8 2024年(令和6年)省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金のスケジュール
- 9 省エネルギー投資促進支援事業費補助金の過去の採択結果・採択率
- 10 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金の申請は「F&M Club」に相談を
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金とは?
「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」は、企業や事業者の省エネ対策を後押しする国の制度です。省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金は、エネルギー消費量の削減や効率化を目指す設備投資を支援します。例えば、高効率な発電システムの導入や脱炭素を目的とした設備の切り替えなどが対象です。
さらに、エネルギー管理システムの導入なども支援範囲に含まれます。補助金額は事業規模や取り組み内容によって異なりますが、最大で対象経費の2/3が支給されます。省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金を活用すれば、企業は初期投資の負担を軽減しつつ、長期的な経営効率の向上と環境負荷の低減を同時に実現が可能です。
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金の補助対象事業・設備
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金は、主に3つの型に分類されています。各型には異なる特徴や対象があり、企業や事業者のニーズに合わせて選択が可能です。以下、各対象事業・設備について詳しく解説します。
工場・事業場型
工場・事業場型は、省エネに関わる先進設備やオーダーメイド型設備を支援する制度です。オーダーメイド型設備とは、「機器設計が伴う設備」または「事業者の使用目的・用途に合わせて設計・製造する設備」を指します。
先進設備に関しては、省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金の公式ホームページで対象設備のリストを公開しています。補助金を受けるためには、上記リストにある対象設備からの選択が必要です。なお、オーダーメイド型設備に関してはメーカーへの特注品となるため、設備リストはなく指定された条件を満たす必要があります。
工場・事業場型で導入する設備の申請条件は、以下のとおりです。
申請分類 | 申請条件 |
先進設備・システムの導入 | 申請単位において、原油換算量ベースで、以下いずれかの要件を満たす事業 ①省エネ率+非化石割合増加率:30%以上 ②省エネ量+非化石使用量:1,000kl以上 ③エネルギー消費原単位改善率:15%以上 |
オーダーメイド型設備の導入 | 申請単位において、原油換算量ベースで、以下いずれかの要件を満たす事業 ①省エネ率+非化石割合増加率:10%以上 ②省エネ量+非化石使用量:700kl以上 ③エネルギー消費原単位改善率:7%以上 |
本制度を活用すれば、企業は初期投資の負担を軽減しつつ、長期的なエネルギーコストの削減を実現できます。省エネ設備の導入は初期費用が高額になりがちですが、補助金を利用して積極的に省エネ投資を行えます。
電化・脱炭素燃転型
電化・脱炭素燃転型は、化石燃料から電気や低炭素燃料への転換に伴う設備導入を支援する制度です。具体的な対象設備としては、以下の設備が該当します。
- 産業ヒートポンプ
- 業務用ヒートポンプ給湯器
- 低炭素工業炉
- 高効率コージェネレーション
- 高性能ボイラ
具体的な補助対象設備は、省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金の公式ホームページで検索が可能です。また、上記5種に該当しない場合でも、電化・脱炭素燃転に貢献する指定した設備も対象となります。具体的な対象設備のリストは、「その他SIIが認めた高性能な設備一覧」から確認が可能です。
上記制度の利用により、企業は長期的な視点でエネルギー構造を転換できます。電力の脱炭素化が進む中、電化への移行は将来的なCO2排出量削減に大きく貢献が可能です。
エネルギー需要最適化型
エネルギー需要最適化型は、エネルギー管理の効率化による省エネルギー化を支援する制度です。具体的には、エネマネ事業者と「エネルギー管理支援サービス」を契約し、 SIIに登録されたEMS(エネルギーマネジメントシステム)を導入した際に補助金を受給できます。
SIIで事前に登録されたエネマネ事業者から、EMSを導入する必要があります。対象となるエネマネ事業者は「エネマネ事業者検索」から検索が可能です。なお、申請条件として以下の項目が指定されています。
- 申請単位で、「EMSの制御効果と省エネ診断による運用改善効果」により、原油換算量ベースで省エネルギー率2%以上を満たす事業
上記の制度を活用すれば、企業は単なる省エネ以上の効果を得られます。例えば、生産設備の稼働状況に合わせた最適なエネルギー供給やピーク電力の抑制による契約電力の低減などが可能です。さらに、蓄積されたデータを分析してエネルギー使用の無駄を発見し、さらなる効率化につなげることも可能です。
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金の補助対象外となる事業
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金は、多くの省エネ投資を支援しますが、一部の事業は補助対象外となります。具体的な対象外となる事業は、以下のとおりです。
- 新規事業活動を開始する新築・新設の事業所へ新たに導入する設備
- 既存の事業所において新たに設備を追加する増設
- 事業活動に供していない設備
- 居住を目的とした事業所・居住エリアにおける設備更新
- 発電設備を新たに導入して売電を目的とする事業
- 売電する事業所であって発電設備を更新する場合の売電量が増加する事業
- 環境アセスメント制度対象の事業所に設置する設備
- コンバインドサイクル発電方式の設備
申請の際は、上記の対象外となる条件を十分に確認して申請しましょう。
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金の補助金額・補助率
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金の補助金額と補助率は、事業の種類や申請者の企業規模によって異なります。具体的な対象事業ごとの補助金限度額・補助率は、以下のとおりです。
対象事業 | 対象経費 | 補助率 | 補助金限度額 |
工場・事業場型(先進設備・システムの導入) | 設計費・設備費・工事費 | 中小企業者:2/3以内 大企業、その他:1/2以内 | 上限額:15億円/年(20億円/年) 下限額:100万円/年(初年を除く) ※()内は非化石申請時 |
工場・事業場型(オーダーメイド型設備の導入) | 設計費・設備費・工事費 | 中小企業者:1/2以内 大企業、その他:1/3以内 | 上限額:15億円/年(20億円/年) 下限額:100万円/年(初年を除く) ※()内は非化石申請時 |
電化・脱炭素燃転型 | 設備費(電化の場合は付帯設備も対象) | 1/2以内 | 上限額:3億円/事業全体(5億円/事業全体) 下限額:30万円/事業全体 ※()内は電化の場合 |
エネルギー需要最適化型 | 設計費・設備費・工事費 | 中小企業者:1/2以内 大企業、その他:1/3以内 | 上限額:1億円/事業全体 下限額:100万円/事業全体 |
一般的に、中小企業は大企業よりも高い補助率が適用されます。例えば、工場・事業場型では中小企業は最大で補助対象経費の2/3、大企業は1/2が補助されます。
補助金額には上限が設けられており、工場・事業場型の場合は最大15億円です。申請時には、具体的な省エネ効果の試算と投資回収年数の計算が求められます。上記の数値が補助金額の決定に影響を与えるため、慎重な検討が必要です。
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金を申請する流れ・ステップ
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金の申請は、以下の5つのステップで行われます。各ステップを丁寧に進めれば、スムーズな申請が可能となります。
①公募要領を確認
申請の第一歩は、公募要領の確認です。公募要領には、補助金の目的・対象となる事業や設備・申請資格・補助率・申請期限など重要な情報が詳細に記載されています。
まず、自社の事業が補助対象に該当するかを慎重に確認します。対象外の事業や設備もあるため、確認の段階で見落としがないようにすることが重要です。
次に、申請に必要な書類や提出方法、審査基準などをチェックします。特に、エネルギー削減効果の算出方法や投資回収年数の計算方法は申請の核となる部分であるため、十分に理解しておきましょう。
また、公募期間や補助事業の実施期間にも注意が必要です。上記の期間を逃すと、申請そのものができなくなったり、補助金が受け取れなくなったりする可能性があります。
②事業計画立案・書類作成
公募要領の確認後は、具体的な事業計画の立案と必要書類の作成に移ります。公式ホームページに実施計画書などの様式が格納されているため、アクセスしてダウンロードしましょう。
提出書類は交付申請書・実施計画書の他にも、決算書・登記簿謄本など数多くの書類があります。公募要領を確認し、自社で申請する事業で必要な書類をもれなく確認しておきましょう。
書類作成には時間がかかるため、余裕を持ったスケジュール管理が重要です。また、記入漏れや計算ミスがないよう複数人でのチェックも効果的です。
③SIIホームページでアカウント登録
事業計画と必要書類の準備が整ったら、次はSII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)のホームページでアカウント登録を行います。具体的な手順は、以下のとおりです。
- SIIのホームページにアクセスし、画面下部の「アカウント登録はこちら」をクリック
- プライバシーポリシーが表示されるため、「上記の内容に同意しますか?」
- をクリックし、チェックを入れる
- 画面で指示されるアカウント登録情報を入力し、「アカウント情報の送信」をクリック
- 受信したメール本文に記載のURLをクリックし、アカウント登録が完了
アカウント登録は比較的簡単なプロセスですが、システムの混雑や技術的なトラブルに備えて、締切直前ではなく余裕を持って行いましょう。
④補助事業ポータルにログインして必要情報を入力
アカウント登録が完了したら、いよいよ補助事業ポータルにログインして、申請に必要な情報を入力します。まず、登録したIDとパスワードを使って補助事業ポータルにログインします。ログイン後、申請画面に進み以下のような情報の入力が必要です。
- 事業者情報
- 申請予定の設備情報
特に、エネルギー削減効果や投資回収年数の数値は審査の重要なポイントとなるため、正確な入力が必須です。入力作業は一度に完了させる必要はなく、途中保存も可能です。ただし、最終的な申請締切に間に合うよう計画的に作業を進めることが重要です。
⑤申請書類を印刷して郵送
補助事業ポータルでの情報入力が完了したら、最後のステップとして申請書類の印刷と郵送を行います。
まず、ポータル上で入力した情報を基に、システムが自動的に申請書を生成します。入力した内容を確認し、問題がなければ申請書を印刷しましょう。
申請書に加えて必要書類を全て揃えたら、書類をファイリングして、SII宛に郵送します。ファイリングの方法は公募要領に記載されているため、事前に確認しておきましょう。
一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)とは?
一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)は、環境・エネルギーに関する課題解決につながる技術革新と市場創出を目的とする団体です。経済産業省や環境省などの補助事業の執行団体として重要な役割を果たしています。
SIIの主な業務は、各種補助金の公募・審査・交付を行うことです。「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」もSIIが管理しています。
また、省エネ診断や情報提供などのサービスも実施し、企業の環境配慮型の取り組みを幅広くサポートしている点も特徴です。エネルギー政策の実施において、政府と民間をつなぐ重要な橋渡し役となっています。
エネルギー管理支援サービス事業者(エネマネ事業者)とは?
エネルギー管理支援サービス事業者(エネマネ事業者)は、エネルギーマネジメントシステム(EMS)でエネルギー使用の効率化を専門的にサポートする事業者です。SIIで事前に登録された事業者であり、省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金ではエネルギー需要最適化型の申請に大きく関わります。
エネマネ事業者は、省エネ補助金の申請支援も行います。効果的な省エネ計画の立案から申請書類の作成、導入後のフォローアップまでをトータルでサポートしてくれる点が特徴です。
2024年(令和6年)省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金のスケジュール
2024年(令和6年)の省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金は4次公募が始まっており、申請スケジュールは以下のとおりです。
- 単年事業:2024年9月13日(金)~2024年10月31日(木)
- 複数年事業:2024年9月13日(金)~2025年1月14日(火)
審査期間を経て、採択結果の発表は単年事業で2024年12月中旬頃、複数年事業は2025年3月上旬頃となる予定です。採択された事業者は補助対象事業を開始し、実績報告書の提出や確定検査を経て補助金が交付されます。
ただし、スケジュールは随時変更が加えられます。最新のスケジュールに関しては、SIIのホームページを定期的にチェックしておきましょう。
省エネルギー投資促進支援事業費補助金の過去の採択結果・採択率
省エネルギー投資促進支援事業費補助金の過去の採択結果と採択率は、年や申請区分によって変動します。例えば、直近で行われた2次公募の採択結果・採択率は、以下のとおりです。
事業区分 | 申請件数 | 採択件数 | 採択率 |
設備単位型 | 2,345件 | 1,316件 | 56.1% |
設備単位型 +エネルギー需要最適化型 | 5件 | 5件 | 100% |
申請数の多い設備単位型では56.1%という結果でした。約半数の企業が不採択となっているため、申請には入念な準備が必要です。詳細な採択結果はSIIのホームページで公表されているため、申請を検討する際は過去の結果を参考にしましょう。
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金の申請は「F&M Club」に相談を
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金は、企業の省エネ投資を強力に後押しする重要な制度です。さまざまな事業タイプや補助率があり、多くの企業にとって魅力的な支援策となっています。
しかし、申請手続きは複雑で、専門知識が必要です。「F&M Club」のサポートを活用することをおすすめします。F&M Clubは補助金申請に関して、以下のようなサポートを提供しています。
- 最適な補助金メニューの選定
- 事業計画の立案支援
- 申請書類の作成サポート
- 審査対応のアドバイス
F&M Clubのサポートを受ければ、採択率を高めてスムーズな申請手続きが可能となります。省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金を検討している企業は、ぜひF&M Clubに相談してみてください。