観光地・観光産業における人材不足対策事業とは?対象事業者・申請の流れを紹介

観光地・観光産業における人材不足対策事業とは?対象事業者・申請の流れを紹介

近年、観光業における人材不足が深刻化しています。特に、旅館・ホテルを営む企業では観光需要で予約は埋まるものの、人手が不足していてスタッフの負担が増大しているケースも多いでしょう。

上記のケースで悩んでいる場合は、観光地・観光産業における人材不足対策事業を活用するのがおすすめです。宿泊業における人手不足解消のための設備・システム導入にかかる経費を一部補助してくれるため、経済的負担を抑えながら業務効率化を図れます。

今回は、観光地・観光産業における人材不足対策事業について対象事業者・申請の流れなどを紹介します。本記事を読めば、事業の内容を詳しく理解してスムーズな申請が可能です。補助金を活用し、自社の人材不足を解消してスムーズに事業運営できる体制を整えましょう。

自社で使える助成金・補助金・優遇制度が分かる

目次

観光地・観光産業における人材不足対策事業とは

「観光地・観光産業における人材不足対策事業」とは、宿泊業における人手不足を解決するために政府や業界団体が取り組む一連の施策です。具体的には、人手不足を解消するための設備投資・サービス導入に関わる経費の一部を支援します。

観光地や観光産業は、日本経済の重要な柱のひとつとして位置づけられています。しかし、近年は深刻な人材不足が顕在化しており、観光需要を確実に取り込むためにも問題の解決が急務です。上記の支援を通じて、観光産業の持続的な発展とサービス品質の向上を目指しています。

なぜ観光業で人手不足が発生しているのか

観光業で人手不足が発生している主な原因は、労働環境と賃金水準の問題です。観光業は季節変動が大きく、長時間労働や不規則な勤務が多い傾向にあります。そのため、ワークライフバランスを重視する若年層から敬遠されがちです。

次に、賃金水準がほかの産業と比べて低い場合が多く、生活の安定を求める人々にとって魅力的な職場とはいえません。また、少子高齢化による労働人口の減少も影響しています。

特に、地方では若者の都市部への流出が進んでおり、地元の観光産業が人材を確保しづらい状況です。さらに、新型コロナウイルスの影響で一時的に離職した人々が他業種へ転職し、復帰しないケースも増えています。

観光業における人手不足のデータ

帝国データバンクの報告によれば、2023年10月時点での正社員・非正社員の人手不足の割合を以下表のように報告しています。

引用:人手不足に対する企業の動向調査(2023年10月)|帝国データバンク

引用:人手不足に対する企業の動向調査(2023年10月)|帝国データバンク

観光業に関わる「旅館・ホテル」では、全業界を通して正社員が1位・非正社員が2位と高い割合で人手不足であると報告されています。新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き、海外の観光需要が増えているため、人手不足が顕在化しているとみられています。また、近年の円安の影響もあり、訪日客数の増加に拍車をかけている点も人手不足が深刻化している要因です。

観光地・観光産業における人材不足対策事業の対象事業者

人材不足対策事業の対象となる事業者は、宿泊事業者です。なお、申請する宿泊事業者は以下3つの要件を満たす必要があります。

  • (1)次の①または②のいずれかに該当すること

① 宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドラインの登録を受けている、または宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドラインの登録申請をしていること

② 金融商品取引法第24 条に基づき有価証券報告書を内閣総理大臣に提出する会社またはその子会社および関連会社であり、かつ観光施設における心のバリアフリー認定制度の認定を取得済みまたは 1 年以内に取得予定である方

  • (2)地域(DMO、地方公共団体など)と連携し、訪日外国人宿泊者数を向上させるための取り組みをおこなっていること
  • (3)地域(DMO、地方公共団体など)と連携し、地域一体での求人活動など、人手不足解消のための具体的な取り組みをおこなっていること

引用:観光地・観光産業における人材不足対策事業|観光庁 

なお、上記の要件で指定されている「高付加価値化のための経営ガイドラインの登録」は観光庁の公式Webサイトに申請方法が記載されています。提出資料が非常に多いため、登録手続きは早めに進めておきましょう。

観光地・観光産業における人材不足対策事業の補助率・補助金額

観光地・観光産業における人材不足対策事業の補助率・補助金額は、以下表のとおりです。

補助率2分の1
補助上限額1施設あたり500万円

引用:観光地・観光産業における人材不足対策事業|観光庁 

なお、補助金は複数の宿泊施設で申請が可能ですが、1事業者あたり4施設が上限です。

観光地・観光産業における人材不足対策事業の補助対象経費

観光地・観光産業における人材不足対策事業の補助対象経費

観光地・観光産業における人材不足対策事業の補助対象経費は、宿泊施設の人手不足解消につながる設備・備品・システムなどの導入費用です。補助対象となる具体的な経費は、以下が例としてあげられます。

  • スマートチェックイン・アウトシステム、チャットボット、宿泊施設管理システム(PMS)などの各種システム
  • 配膳・清掃ロボットなどの設備

なお、月額・年額で使用料を払うサブスクリプション型システムの場合は、最大2年分の費用が補助対象です。補助金を申請する際は、上記の使用料を精算時までに前払いで支払いを完了させる必要があります。

観光地・観光産業における人材不足対策事業の補助対象となる製品例

観光地・観光産業における人材不足対策事業では、業務効率化・自動化を支援する製品やサービスが補助対象です。上記の製品を導入すれば、限られた人材で高品質なサービスの提供が可能となり、結果として人材不足の緩和につながります。

以下に、補助対象となる具体的な製品例をあげて特徴や導入効果をみていきましょう。なお、補助対象となる製品・サービスの例は、観光地・観光産業における人材不足対策事業の公式Webサイトで公開されています。

Staysee(宿泊管理サービス)

引用:Staysee

Stayseeは、宿泊施設向けのクラウド型宿泊管理システムです。予約管理や部屋割り、会計管理まで宿泊業務に必要な機能をひとつのシステムで網羅しています。従来、紙や複数のシステムで管理していた情報を統合し、スタッフの業務負担を大幅に軽減できるのが特徴です。

また、オンライン予約サイトとの連携が可能で、各サイトからの予約情報をシステムに自動で反映させられます。売上情報もCSV形式で簡単に出力できるため、経営管理業務も効率化が可能です。

Stayseeの導入により、宿泊施設は限られた人材でも効率的に業務を遂行でき、人手不足によるサービス品質の低下を防げます。業務効率化によって生まれた時間を接客などの付加価値の高い業務に充てられるため、全体的なサービスレベルの向上にもつながります。

経理・会計業務おたすけパック(経理システム)

引用:NTTコミュニケーションズ

経理・会計業務おたすけパックは、NTTコミュニケーションズが提供する経理・会計システムです。請求書発行・請求書受領・経費精算・会計処理の4業務に対応し、経理業務全般をサポートします。

利用者の状況に応じて3つの料金プランから選べる点も特徴です。最低限の機能だけでいい場合は「かんたんプラン」で費用を抑えるなど、希望の条件に合わせてプランを選べます。

経理・会計業務おたすけパックを導入すれば、経理担当者の負担を軽減し、人的ミスを減らすことが可能です。法令改正や税制の変更にも自動で対応し、常に最新の法令に準拠した形で状態で業務を進められます。

Phantas(業務用清掃ロボット)

引用:Phantas

Phantasは、最先端のAI技術を搭載した業務用清掃ロボットです。Phantasは自律走行と高度な障害物回避機能をもち、床の清掃や消毒作業を自動でおこなえます。

操作は簡単で、清掃エリアを設定するだけでロボットが最適なルートを計算し、効率的に作業を進めます。夜間や営業時間外にも稼働させられるため、スタッフの勤務時間外に清掃を完了させることも可能です。水拭き機能も備えており、あらゆる床の汚れをきれいに掃除してくれます。

Phantasの導入で清掃業務にかかる人手を大幅に削減でき、スタッフはより付加価値の高い業務に集中できます。人材不足の状況でも高水準の衛生管理とサービス提供が実現し、顧客満足度の向上につなげられる点は大きな魅力です。

観光地・観光産業における人材不足対策事業を申請する流れ

観光地・観光産業における人材不足対策事業を申請する流れ

人材不足対策事業の申請には、いくつかのステップがあります。各手順を理解して計画的に進めれば、申請手続きから補助金の受給までをスムーズにおこなえます。以下では、具体的な流れをみていきましょう。

①公募要領を確認して公式Webサイトから応募

まずは、公募要領を確認しましょう。公募要領には事業の目的や補助対象・応募資格・提出書類・スケジュールなど、申請に必要なすべての情報が記載されています。

公募要領の内容を読んでおけば、「自社が補助金の対象となるか」「どのような準備が必要か」を把握できます。なお、公募要領は観光地・観光産業における人材不足対策事業の公式Webサイトから入手が可能です。

公募要領を確認したら、公式Webサイトから応募手続きを開始します。専用のオンライン申請フォームが用意されており、必要事項を入力して応募する流れです。

②計画申請手続き

次に、事務局から送付される案内に従い、具体的な事業計画を作成して計画申請手続きをおこないましょう。申請は公式Webサイトからアクセスできるマイページからおこないます。計画申請に必要な事業計画書などの必要書類は、公式Webサイトからダウンロードが可能です。

事業計画書には、施設情報・効率化したい業務内容など必要事項を詳細に記載します。計画書は審査の重要なポイントとなるため、明確で説得力のある内容にする必要があります。計画の実現可能性や事業の有効性が評価されるため、計画書では具体的な数値や根拠を盛り込むことが効果的です。

計画申請手続きでは、指定された書式やフォーマットに従って書類を作成しましょう。また、設備導入前の写真・有価証券報告書など必要な添付書類を忘れずに提出します。

③計画採択後に交付申請の実施

計画が採択されると、次に交付申請をおこないます。計画申請と同様に、マイページから申請しましょう。事前に提出した計画申請の内容を再度確認し、マイページ上での画面指示に従って交付申請を完了させます。

なお、申請内容について修正や追加の書類提出がある場合は、事務局からメールまたは電話にて連絡が来ます。交付申請の段階でマイページ上から申請内容の修正や書類提出が可能です。

④計画に沿って事業を実施

交付決定を受けたら、計画に基づいて事業を実施します。具体的には、計画書に記載した内容に従って補助対象となる設備・システムなどを導入しましょう。なお、事業の実施には各公募回ごとに下記の締切が設けられています。

  • 一次公募・二次公募:2024年12月13日
  • 三次公募・四次公募:2025年1月17日

上記の期日までに事業を完了させられない場合、補助金交付の対象外となるため注意しましょう。なお、設備・システムの導入する際にもらえる領収書や契約書などの証拠書類は、後の完了報告手続きで必要です。証拠書類をなくさないよう、しっかりと保管しましょう。

⑤完了報告後に清算手続きを実施

事業が完了したら、完了報告書を提出して清算手続きをおこないます。完了報告書には実際の支出額などを詳しく記載します。完了報告後に補助金の最終的な交付額が確定する流れです。

清算手続きでは、補助対象経費の証拠書類(領収書・請求書など)を提出します。不適切な経費や書類の不備があると、後に補助金の返還を求められる可能性があります。

そのため、事前に必要書類を整理し、正確な報告をおこなうことが大切です。清算が完了すると補助金の受領が確定し、一連の手続きが完了します。

観光地・観光産業における人材不足対策事業を申請する際のポイント

観光地・観光産業における人材不足対策事業を申請する際のポイント

申請手続きをスムーズに進めて補助金を有効に活用するためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。以下では、特に注意すべき事項を解説します。

一次〜三次で交付決定されていない場合は四次公募に応募できる

人材不足対策事業は、一次から三次までの公募で交付決定を受けていない事業者でも四次公募に再度の応募が可能です。一度不採択になっても申請内容を見直して四次公募に応募すれば、補助金を受給できる可能性があります。

四次公募に応募する際には、今までの申請内容を振り返り、評価ポイントや不採択の理由を分析しましょう。たとえば、事業計画の具体性や実現可能性、予算の妥当性などを再検討して改善点を明確にします。

また、公募要領の変更点や最新の情報を確認して応募要件を満たしているか再度チェックしましょう。専門家のアドバイスを受けて、申請書の質を高めることも効果的です。

1事業者あたり4施設までが補助対象となる

補助金の申請において、ひとつの事業者が補助対象として申請できる施設の数には制限があります。具体的には、1事業者あたり最大4施設までが補助対象です。

自社で複数の宿泊施設を運営している場合は、上記の制限を踏まえてどの施設を優先的に申請するかを慎重に検討しましょう。人材不足が特に深刻な施設や事業効果が高く見込まれる施設を選定すれば、申請内容の説得力が増します。

期日までに完了報告を実施しなければならない

補助金を受けた事業者は、事業完了後に所定の期日までに完了報告を提出する義務があります。完了報告では、実際に支払った費用などを詳細に報告しなければなりません。報告が適切におこなわれない場合、補助金を受給できません。

完了報告を円滑に進めるためには、事業実施中から経費の領収書や契約書などの証拠書類をきちんと保管しておくことが重要です。また、報告書の作成には時間がかかるため、早めに準備を始めましょう。

観光地・観光産業における人材不足対策事業の応募スケジュール

2024年の観光地・観光産業における人材不足対策事業の応募スケジュールは、以下の表のとおりです。

公募回申請受付期間
一次公募2024年3月29日(金)13:00~2024年5月31日(金)17:00
二次公募2024年7月1日(月)13:00~2024年8月9日(金)17:00
三次公募2024年9月2日(月)13:00~2024年9月30日(月)17:00
四次公募2024年10月15日(火)13:00~2024年10月31日(木)17:00

上記以降のスケジュールは、現在公開されていません。最新情報は公式Webサイトにて随時確認しましょう。

観光地・観光産業における人材不足対策事業の申請は「株式会社エフアンドエム」がサポート

観光地・観光産業における人材不足対策事業の申請は「株式会社エフアンドエム」がサポート

観光地・観光産業で人材不足対策事業を申請する際は、「株式会社エフアンドエム」のサポートを利用しましょう。同社は中小企業向けにバックオフィス業務をサポートしており、補助金・助成金の申請に関しても豊富な実績とノウハウをもっています。申請手続きは複雑で時間がかかるため、専門家のサポートを受けるとスムーズに進められます。

エフアンドエムでは、事業計画の策定から必要書類の作成、提出まで一貫してサポートを提供している点が特徴です。自社で必要書類を作成する手間などを省けるため、本業の時間を犠牲にする必要もありません。また、申請上有利になる「高付加価値化のための経営ガイドライン」への登録も支援しています。

過去の実績から効果的な申請書類の作成ノウハウももっているため、審査に通過しやすくなる点が魅力です。観光地・観光産業における人材不足対策事業の申請を考えている方は、ぜひ一度「株式会社エフアンドエム」に相談しましょう。

まとめ

観光地・観光産業の人材不足は、労働環境・賃金・少子高齢化などが原因で深刻化しています。政府は観光地・観光産業における人材不足対策事業を通じ、補助金を提供して業務効率化を支援しています。

申請手続きは計画申請・交付申請・事業実施・完了報告という流れです。一度不採択となっても公募機会が複数あるため、再度チャレンジすることも可能です。

もし、補助金を申請する余裕がない方は「株式会社エフアンドエム」に相談しましょう。事業計画の策定から申請手続きまで一貫してサポートします。補助金を活用して自社の宿泊事業における人手不足を解消し、円滑に事業を運営できる体制を整えましょう。

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