令和7年両立支援等助成金の拡充されたポイントは?コースの概要や申請の流れも紹介

令和7年両立支援等助成金の拡充されたポイントは?コースの概要や申請の流れも紹介

令和7年(2025年)より、両立支援等助成金の「出生時両立支援コース」「育休中等業務代替支援コース」で制度の拡充が発表されました。上記の制度利用を検討している企業は、具体的な拡充ポイントが気になるところでしょう。

「出生時両立支援コース」「育休中等業務代替支援コース」では、支給要件・支給額等が大きく変更されています。今回の拡充により、より多くの企業が両立支援等助成金を利用できるようになっている点が特徴です。

今回は令和7年両立支援等助成金の拡充されたポイントについて、コースの概要や申請の流れとともに紹介します。本記事を読めば、両立支援等助成金の変更点を把握してスムーズに制度を活用できます。両立支援等助成金を活用し、優秀な人材が定着する労働環境を整備しましょう。

両立支援等助成金とは仕事と育児・介護の両立を支援する助成金制度

両立支援等助成金は、従業員が育児や介護と仕事を両立しやすい職場環境を整備する事業主に対し、経済的な支援をおこなう助成金制度です。具体的には、育児休業の取得促進や介護休業のサポート等助成対象となる取り組みに対して、コースごとに定められた助成金を支給してくれます。両立支援等助成金により、従業員が安心して育児や介護に専念できる環境を整え、企業の持続的な成長と社会全体の福祉向上を目指しています。

両立支援等助成金には全部で6種類のコースがある

両立支援等助成金には6つのコースがあり、各コースの概要と支給額は以下のとおりです。

コース名概要支給額
出生時両立支援コース男性労働者が育児休業を取得しやすい職場環境を整備し、実際に育児休業を取得させた事業主に助成。・第1種(1人目):20万円
・第1種(2人目以降):10万円
・第2種:60万円
介護離職防止支援コース介護支援プランを作成し、労働者の介護休業取得や介護両立支援制度の利用を促進した事業主に助成。・介護休業:30万円(休業取得時)、30万円(職場復帰時)
・介護両立支援制度:30万円
育児休業等支援コース育休復帰支援プランを作成し、労働者の育児休業取得と職場復帰を支援した事業主に助成。・育休取得時:30万円
・職場復帰時:30万円
育休中等業務代替支援コース育児休業や短時間勤務制度を利用する労働者の業務を代替する体制を整備した事業主に助成。・手当支給等(育児休業):最大140万円
・手当支給等(短時間勤務):最大128万円
・新規雇用(育児休業):最大67.5万円
柔軟な働き方選択制度等支援コーステレワークやフレックスタイム制等、柔軟な働き方を選択できる制度を導入し、労働者が利用した事業主に助成。・制度を2つ導入し、対象者が制度利用:20万円
・制度3つ以上導入し、対象者が制度利用:25万円
不妊治療両立支援コース不妊治療と仕事の両立を支援するための休暇制度や両立支援制度を整備し、労働者が利用した事業主に助成。30万円
参考:両立支援等助成金|厚生労働省

令和7年(2025年)から「出生時両立支援コース」「育休中等業務代替支援コース」の2種類が拡充された

令和7年(2025年)から、両立支援等助成金の「出生時両立支援コース」と「育休中等業務代替支援コース」が拡充されました。具体的には、以下のように上記2コースの拡充内容が厚生労働省から発表されています。

引用:両立支援等助成金|厚生労働省

各コースでの拡充内容に関しては、後述で詳しく紹介します。

両立支援等助成金が拡充された背景

両立支援等助成金が拡充された背景には、政府による以下の目的があります。

両立支援等助成金が拡充された背景
  • 少子化対策における男性育休の推進
  • 育休取得時の企業における業務体制のサポート
  • 支給要件の緩和による制度利用の促進

両立支援等助成金の拡充により、育児や介護に直面する従業員を支える企業の取り組みを後押しして持続可能な社会を目指しています。

少子化対策における男性育休の推進

少子化が深刻化する中で男性の育児参加は重要な課題とされていますが、育休取得率は過去に比べて上昇しているものの十分な水準とはいえません。本助成金の拡充で、男性が育休を取得しやすい環境を整えて取得率の向上が期待されています。また、男性の育児参加は子どもの成長だけでなく家庭内の役割分担の改善にも寄与しており、政府は働き方改革や家族の絆強化も目指しています。

育休取得時の企業における業務体制のサポート

育休取得者が増える一方で企業にとっては業務負担の分散が課題となっており、特に中小企業では育休中の代替要員の確保が困難な場合が多いです。そのため、本助成金の拡充で代替人員の確保や業務の効率化に向けた取り組みを支援し、円滑な業務遂行をサポートしています。両立支援等助成金の拡充を通して、育休取得が職場全体の負担になることを防ぎ、より多くの従業員が安心して育児に専念できる環境を整える狙いがあります。

支給要件の緩和による制度利用の促進

両立支援等助成金の利用が広がらなかった背景には、申請のハードルの高さがありました。支給要件の厳しさが、企業にとっての利用障壁となっているためです。今回の拡充では支給要件が緩和され、従来の中小企業だけでなく大企業等より多くの企業が制度を活用できるようになりました。

出生時両立支援コースの概要

両立支援等助成金の「出生時両立支援コース」は、男性労働者の育児休業取得を促進し、仕事と育児の両立を支援する制度です。出生時両立支援コースは、以下の2種類にわかれています。

出生時両立支援コースの種類
  • 個々の男性労働者の育児休業取得を支援する「第1種」
  • 企業全体での男性育児休業取得率の向上を支援する「第2種」

企業の職場環境に応じて、上記の支援コースを使い分けましょう。

①第1種(男性の育児休業取得)

第1種は男性労働者が子の出生後8週間以内に育児休業を開始し、連続して5日〜14日以上取得した場合に、事業主に助成金が支給される制度です。第1種の具体的な支給額は、以下のとおりです。

第1種(男性の育児休業取得)の支給額
  • 子どもが1人目の場合:20万円
  • 子どもが2人目以降の場合:10万円

また、雇用環境整備措置を4つ以上実施した場合、育休取得時に10万円が加算される措置が実施されています。

②第2種(男性育休取得率の上昇等)

第2種は、事業主が男性労働者の育児休業取得率を高める取り組みをおこない、一定の成果をあげた場合に助成金が支給される制度です。第2種における具体的な支給額は、以下のとおりです。

支給要件支給額
以下のいずれかを満たす。

・前事業年と比較して男性の育児休業取得率が30ポイント以上上昇し、かつ50%以上となった場合
・直前の2事業年における男性の育児休業取得率がいずれも70%以上
60万円
参考:両立支援等助成金|厚生労働省

さらに、申請時にプラチナくるみん認定を受けている場合は、上記の支給額に15万円が加算されます。

出生時両立支援コースで前回から拡充されたポイント

令和7年(2025年)から、出生時両立支援コースは以下の点で拡充されました。

出生時両立支援コースで前回から拡充されたポイント
  • 第2種は第1種未受給でも申請可能になった
  • 第2種の支給要件が緩和された

今回から1種を受給していなくても第2種の申請が可能で、支給要件も以下のように変更されています。

変更前変更後
以下のいずれかを満たす。

・第1種の助成金の支給申請日の属する事業年における男性労働者の育児休業取得率と比較して、第1種申請時事業年の次の事業年から始まる3事業年以内に30ポイント以上上昇している

・第1種申請時事業年における、雇用保険の被保険者として雇用する男性労働者のうち当該事業年において配偶者が出産したものの数が5人未満であって、かつ男性労働者の育児休業取得率が70%以上である場合に、第1種申請時事業年の次の事業年から始まる3事業年の中で2年連続して70%以上である
以下のいずれかを満たす。

・男性労働者の育児休業取得率が前事業年と比較して30ポイント以上上昇し、50%以上となっている

・支給申請日の属する事業年の前々事業年において、雇用保険の被保険者として雇用する男性労働者のうち当該事業年において配偶者が出産したものの数が5人未満である場合に、支給申請日の属する事業年の直前の2事業年における男性の育児休業取得率がいずれも70%以上である
引用:両立支援等助成金|厚生労働省

また、前回まであった「1日以上の育児休業を取得した男性労働者が2名以上いる」の要件が削除されています。総じて第2種の支給要件が緩和されており、より多くの事業主が制度を利用できるようになりました。

育休中等業務代替支援コースの概要

​​育休中等業務代替支援コースは育児休業や短時間勤務制度を利用する労働者の業務を代替する体制を整備した事業主に対し、助成金を支給する制度です。本コースは令和6年1月に新設され、育児休業や短時間勤務制度の利用促進と企業の業務体制の円滑な維持を目的としています。具体的には、育児休業や短時間勤務制度の導入による業務代替の体制整備に貢献する取り組み内容に応じて、以下の助成金が支給されます。

育休中等業務代替支援コースの助成金額
  • 育児休業中の手当支給:最大140万円
  • 育児休業中の手当支給:最大128万円
  • 育児休業中の新規雇用:最大67.5万円

なお、プラチナくるみん認定事業主に対しては、以下の取り組みに対して指定の加算措置が執りおこなわれます。

プラチナくるみん認定事業主に対する加算措置
  • 育児休業中の手当支給:業務代替手当の支給額を4/5に割増
  • 育児休業中の新規雇用:代替期間に応じた支給額を増額(最大82.5万円)

育休中等業務代替支援コースで前回から拡充されたポイント

令和6年12月17日から、「育休中等業務代替支援コース」は以下の点で拡充されました。

育休中等業務代替支援コースで前回から拡充されたポイント
  • 業務体制整備を社労士に委託した場合の経費給付額が20万円に増額
  • 常時雇用する労働者の数が300人以下の事業主も支給対象

今までは業務体制整備経費が2万円〜5万円でしたが、今回からは社労士に委託した場合に20万円まで増額されています。また、今までは支給対象が中小企業に限定されていましたが、今回から従業員が300人以下の事業主まで支給対象が拡大しました。より多くの企業が制度を利用できるとともに、支給される助成額も大きく増額となっています。

両立支援等助成金を申請する際の流れ

両立支援等助成金の申請手続きは、コースごとに異なる手順が定められています。今回は、制度内容が拡充された「出生時両立支援コース」と「育休中等業務代替支援コース」の申請手順を詳しく説明します。

「出生時両立支援コース」の場合

今回は、出生時両立支援コースの第1種における申請手順について解説します。具体的な申請順は、以下の表に記載のあるとおりです。

出生時両立支援コースの申請手順概要
①育児休業取得の促進策の実施男性労働者が育児休業を取得しやすい職場環境を整備する。
②育児休業の取得男性労働者が子の出生後8週間以内に育児休業を開始し、連続して5日〜14日以上取得する。
③必要書類の準備以下の書類を準備する。

・支給申請書
・支給要件確認申立書
・育児休業規程の写し
・出勤簿や賃金台帳の写し 等
④申請書類の提出育児休業が終了した日の翌日から起算して2か月以内に、管轄の労働局雇用環境・均等部(室)に申請書類を提出する。
⑤審査と支給決定労働局による審査の後、支給の可否が決定される。

詳細な手続きや必要書類については、厚生労働省の公式サイトを参照してください。

「育休中等業務代替支援コース」の場合

育休中等業務代替支援コースの申請手順は以下のとおりです。

育休中等業務代替支援コースの申請手順概要
①業務代替体制の整備育児休業や短時間勤務制度を利用する労働者の業務を代替するための体制を整備する。
②代替措置の実施以下のいずれかの措置を実施する。

・新たに労働者を雇用して業務を代替してもらう
・既存の労働者に手当を支給して業務を代替させる
③育児休業の取得・短時間勤務制度の利用該当する労働者に、育児休業の取得・短時間勤務制度の利用をおこなってもらう。
④必要書類の準備以下の書類を準備する。

・支給申請書
・業務代替措置の実施を証明する書類
・育児休業または短時間勤務制度の利用状況を示す書類
・出勤簿や賃金台帳の写し 等
⑤申請書類の提出管轄の労働局雇用環境・均等部(室)に申請書類を提出する。
⑥審査と支給決定労働局による審査の後、支給の可否が決定される。

詳細な手続きや必要書類については、厚生労働省の公式サイトを参照してください。

令和7年4月から施行される育児・介護休業法改正との関係性

令和7年(2025年)4月1日から施行される育児・介護休業法の改正は、両立支援等助成金の制度とも深く関連しています。今回の法改正では、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充や育児休業の取得状況の公表義務の拡大等が盛り込まれています。 

上記に伴い、両立支援等助成金の支給内容や要件も見直されて企業が法改正に対応しやすいよう支援策が強化される予定です。具体的には、育児・介護休業を取得しやすい職場環境の整備する企業に対して助成金の支給要件が緩和され、支給額も増額される見込みです。

参考:育児・介護休業法が改正されました ~令和7年4月1日から段階的に施行~|厚生労働省

男性育休を支援する制度は各自治体でも用意されている

男性の育児休業取得を促進するため、各自治体でも独自の支援制度が設けられています。具体的な自治体の男性育児休業支援制度として、以下があげられます。

自治体の男性育児休業支援制度の例概要
とちぎ男性育休推進企業奨励金(栃木県)初めて男性従業員に育児休業を取得させた中小企業事業主に20万円の奨励金を支給。
つくば市男性育児休業取得促進奨励金(つくば市)男性労働者が14日以上の育児休業を取得し、職場復帰後も市内事業所で1か月以上勤務した場合に10万円〜40万円の奨励金を支給。 

各自治体によって支援内容や要件が異なるため、自社が拠点を置く自治体の公式ウェブサイトで確認しましょう。

まとめ

両立支援等助成金は仕事と育児・介護の両立を支援するため、企業に助成金を支給する制度です。特に、「出生時両立支援コース」では男性労働者の育児休業取得を促進するため、助成金の支給要件が緩和されて支給額も増額されました。また、「育休中等業務代替支援コース」では育児休業や短時間勤務制度を利用する労働者の業務を代替する体制を整備した企業に対し、助成金の支給対象が拡大されました。

さらに、令和7年4月から施行される育児・介護休業法の改正もあり、企業と労働者双方の育児・介護の両立支援がより強化される予定です。両立支援等助成金を活用し、優秀な人材が定着する労働環境を整備しましょう。