補助金は受給することだけに注目されますが、実は返還する場合もあります。
手続きや運用のミス、悪質な場合などには返還義務が生じるためトラブルが発生しないように理解を深めましょう。
目次
補助金を返還する2つの場合
補助金を返還する場合は大きく分けて2つあります。
自主返還
自主返還は、受給者が自らの意思で補助金を返還することです。
多くの場合、何かしらの誤りを含んだ状態で補助金を申請したり、受給したりした際に該当します。
例えば、以下のようなケースが考えられます。
- 補助金の用途に誤りがあった場合
- 申請条件に合致しなかったことに気づいた場合
- 当初の計画よりも費用が少なく済み、対象外になった場合
- 補助対象外の経費に使用してしまい、計画とおりに遂行できなかった場合
自主返還の手続きを行うことで、意図しない不正受給を回避できます。そのため、何かしらの誤りに気づいた際は、迅速な申告や手続きが重要です。
不正受給
不正受給は、虚偽の申請や不正な手段を用いて補助金を不当に受け取る行為です。
この場合、事務局などの調査により不正受給が判明すると、受け取った補助金を全額返還しなければなりません。
例えば、以下のようなケースが考えられます。
- 架空の経費を計上した場合
- 対象外の事業に補助金を利用した場合
また、不正受給が発覚した場合、全額返還だけでなく、以下の厳しいペナルティが科されることがあります。
- 刑事罰の適用(詐欺罪など)
- 今後の補助金申請が制限される
- 社会的な信用の低下
単に返還すれば済む問題ではなく、事業の存続にも影響を及ぼしかねないため、不正受給は絶対に避けるべき行為です。
補助金の返還義務が生じる理由とは
補助金の返還義務が生じる理由についても解説します。
返還義務が生じる基本ルール
補助金の返還義務が生じる理由は、受給条件に違反した場合や、補助対象外の経費に利用した場合です。
返還に関する全般的なルールは、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」に基づいています。
具体的には、以下のような状況が該当します。
- 申請せずに事業内容を変更した場合
- 事業を中止した場合
- 進捗が大きく遅延する場合
- 誤った申請や報告の修正が必要な場合
事前に認められた計画に沿って確実に事業を遂行することが重要です。
詳細は公募要項を確認
補助金の返還義務に関する詳細なルールは、公募要項に記載されています。
補助金の種類によって詳細が異なるため、公募要項を細かく確認することが重要です。
例えば、公募要項には以下の内容が記載されています。
- 対象経費の範囲
- 実施期間の要件
- 成果報告の要件
対象経費や実施期間、成果報告の要件を満たしていない場合、返還義務が生じます。
公募要項の理解が不十分であることで、意図せず返還義務が生じることもあるため、注意が必要です。
加算金の納付も必要
補助金の返還義務が生じた場合、返還額に加えて加算金の納付が求められる場合があります。
主に不正受給に対するペナルティとして科されるもので、公募要項に記載された方法に基づいて算出されることが大半です。
なお、不正の内容が悪質である場合、刑事罰を受ける可能性があります。
この場合、罰金が加算金とは別に科されることがあり、適用される法令に基づいて算出された金額を支払わなければなりません。
場合によっては非常に高額な支出となる可能性があるため、加算金・罰金どちらの観点からも不正受給は絶対に避けるべきです。
補助金の返還義務が発生する具体例
具体的にどのような状況で補助金の返還義務が発生するか紹介します。
IT導入補助金
導入したITツールが申請内容と異なる場合:
申請時に計画したITツールと異なるものを導入していた場合、返還義務が生じます。
導入したITツールの活用状況が確認できない場合:
導入していても、計画書に記載された通りに業務改善されていない場合や、対象外のツールを購入した場合は返還義務が発生します。
架空の経費を計上した場合:
導入事業者と共謀して架空の経費を計上した場合は、不正受給とみなされます。この場合、全額返還に加え、加算金の納付が求められます。
ものづくり補助金
申請内容と異なる用途に使用した場合:
補助対象の設備やソフトウェアを申請内容と異なる用途に使用した場合、返還義務が発生します。
購入後すぐに転売した場合:
補助金を受けて購入した設備を購入後すぐに転売し、業務改善に活用していない場合、返還義務が生じます。
実際に発生していない経費を申請した場合:
実際には発生していない経費を虚偽申請している場合も、返還義務が発生します。
成果報告書の内容に不備があった場合:
成果報告書の内容が事実と異なる、または記載が不十分な場合は、返還対象となります。
事業終了後の一定期間中に利用を中止した場合:
事業終了後の一定期間は、補助金で購入した設備を継続して利用する義務があります。
この期間中に利用を中止した場合、返還義務が発生します。
小規模事業者持続化補助金
経営計画書と実際の事業内容が異なる場合:
申請時に提出した経営計画書と実際の事業内容が大きく異なっている場合、返還義務が生じます。
計画された販路開拓が実施されなかった場合:
計画書に記載した販路開拓や広告活動が実施されていない場合、返還義務が発生します。
例:補助金を利用して作成した広告物が配布されていない場合などがあります。
補助事業を中断または中止した場合:
補助事業を中断または中止した場合も、返還が求められます。
不正に補助金を申請した場合のペナルティ
不正に補助金を申請した場合、事業者に対して厳しいペナルティが科されます。
一定期間は補助金を利用できない
不正に補助金を申請した場合、ペナルティとして一定期間、補助金の申請や利用が禁止されます。
多くの場合、3年から5年間の利用停止措置が科され、その間に再発防止に向けた対応策の提出が求められることがあります。
また、該当の補助金に申請できないだけではなく、他の関連する補助金や公的支援の利用も制限されます。
ペナルティを受けることによって、企業の成長戦略や資金調達計画に大きな支障が生じかねません。
返還義務や加算金が科される
不正受給が発覚した場合、受け取った補助金の全額返還だけではなく、基本的に加算金が科されます。
加算金は、補助金を受領した日から返還の日までの日数に応じて、補助金額の年10.95%の割合で納付が必要です。
また、期日までに返還しない場合、これに加えて延滞金が発生します。
なお、悪質性が高い場合は、刑事告発され、有罪になると20%程度の罰金が科される場合があります。
いずれにしろ、返還義務と合わせて多額の金銭的負担となるため、不正に補助金を受給することは絶対に避けなければなりません。
企業情報が公開される
不正受給が判明した場合、企業名や代表者名が公表される場合があります。
公開される情報には違反の内容や返還額なども含まれるため、どのような不正を犯し、どのような処分を受けたのかが一目瞭然です。
Webサイトなどで公開されるため、簡単に情報収集されてしまい、社会的な信用の失墜に繋がります。
特に、取引先や顧客からの信頼を失うリスクは高く、経営に大きなダメージを与えるでしょう。
刑事告発の対象となりかねない
悪質な不正受給の場合、刑事告発の対象となり得るため、これは非常に大きなペナルティです。
例えば、虚偽の書類を作成したり、意図的に経費を水増ししたりする場合は、詐欺罪や公文書偽造罪に該当する可能性があります。
刑事告発され有罪と判断された場合、罰金や懲役刑が科され、社会的信用の失墜を避けられません。
まとめ
補助金を不正に受給してしまうと、返還義務が生じてしまいます。
意図していなくとも、計画を推進する際のミスで不正な受給になる可能性があるため注意が必要です。
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