ものづくり補助金・IT導入補助金・省力化投資補助金の要件緩和を徹底解説!

過去最大とも言われる最低賃金の引き上げに物価高、そして深刻化する人手不足に頭を悩ませる事業者も多いのではないでしょうか。企業を後押しするため、国はものづくり補助金・IT導入補助金・省力化投資補助金で要件緩和を進めています。

本記事では、ものづくり補助金・IT導入補助金・省力化投資補助金の要件緩和について詳しく解説します。本記事を読めば、上記補助金の要件緩和を理解し、自社の経営戦略にあった形でスムーズに活用が可能です。自社にあった補助金を活用し、安定的な経営を実現しましょう。

自社で使える助成金・補助金・優遇制度は?

補助金の要件緩和が進む背景

補助金の要件緩和が進む背景として、主に以下の2つがあげられます。

補助金の要件緩和が進む背景
  • 最低賃金の引き上げ・物価高賃上げへの配慮
  • 国のDX推進と人手不足対策が加速

特に、最低賃金の引き上げが今回の補助金の要件緩和に大きく影響を与えています。

最低賃金の引き上げ・物価高賃上げへの配慮

最も大きな理由としてあげられるのが、継続的な最低賃金の引き上げと昨今の物価高騰に伴う賃上げへの配慮です。現在、政府は経済の好循環を実現するため、全国的に高い水準での賃上げを推進しています。

実際に、全国加重平均の最低賃金は年々上昇を続けており、多くの企業で人件費の負担が増加しています。上記に加えて原材料費やエネルギー価格の高騰が経営を圧迫し、利益の確保自体が以前より難しくなっているのが実情です。

上記のような状況下で従来の厳しい要件のままでは、資本が限られる中小企業にとって賃上げと設備投資の両立は非常に困難です。そこで政府は、補助金で求められる賃上げ目標の基準を一部緩和するなど企業の負担を軽減しつつ生産性向上への投資を促そうとしています。

国のDX推進と人手不足対策が加速

もう一つの背景が、国をあげたDXの推進と深刻化する人手不足への対策です。少子高齢化が急速に進む日本では、多くの産業で働き手の確保が喫緊の課題となっています。

特に、中小企業においては人手不足が原因で事業の継続が困難になるケースも少なくありません。上記の構造的な問題を解決する切り札として期待されているのが、デジタル技術やロボットの活用による業務の自動化・効率化です。

具体的には、人の手で行っていた作業をAIやロボットに任せたり、業務を効率化するITツールを導入したりなどの取り組みがあげられます。政府は補助金の要件を緩和し、今までIT投資や設備更新に踏み出せなかった企業にも門戸を広げ、日本全体の生産性向上を加速させたいと考えています。

ものづくり補助金・IT導入補助金・省力化投資補助金とは?

以下では、ものづくり補助金・IT導入補助金・省力化投資補助金の概要を表形式にしてまとめています。

補助金名目的・概要活用例
ものづくり補助金新製品・サービス開発、生産プロセス改善など革新的な取り組みに必要な設備投資を支援する補助金制度・新商品開発のための最新製造機械の導入
・工場ラインの刷新
IT導入補助金会計ソフトや販売管理システムなどITツールの導入により、業務効率化や売上アップを目指す補助金制度・インボイス対応会計ソフトの導入
・顧客管理システムの導入
省力化投資補助金人手不足の解消を目的とし、IoTやロボットなど人の作業を代替する製品・システムの導入を支援する補助金制度・飲食店での配膳ロボットの導入
・倉庫内での自動搬送ロボットの活用
・AI搭載の検品システムの導入

上記のように3つの補助金は活用目的で異なるため、自社の経営状況に応じて最適な制度を選びましょう。

ものづくり補助金・IT導入補助金・省力化投資補助金で最低賃金引き上げ特例の要件が緩和

2025年9月、経済産業省と中小企業庁は最低賃金引き上げにおける対応に苦慮する中小・小規模事業者を支援するために要件緩和を発表しました。具体的には、ものづくり補助金・IT導入補助金・省力化投資補助金の3制度における最低賃金引き上げ特例の対象が大きく広がりました。

上記の特例は通常1/2である補助率を2/3に引き上げる支援策で、具体的に対象となる事業者の条件が以下のように変更されています。

これまでの要件地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が、全従業員の30%以上いる事業者
新しい要件改定後の地域別最低賃金未満で雇用している従業員が、指定期間中に3ヶ月以上、全従業員の30%以上いる事業者

今回の最低賃金の改定によって対象範囲が拡大されたため、従業員の時給を引き上げる必要が生じた事業者の多くが特例の対象に含まれます。

国が実施する中小・小規模事業者への賃上げ支援策

国が実施する中小・小規模事業者への賃上げ支援策は、補助金の要件緩和以外にも以下があげられます。

国が実施する中小・小規模事業者への賃上げ支援策
  • 持続化補助金の賃金引き上げ枠
  • 賃上げ促進税制
  • 価格転嫁対策の強化

参考:最低賃金引上げに向けた経済産業省の中小・小規模企業への支援策|中小企業庁

持続化補助金の賃金引き上げ枠

「販路を拡大したいけれど、賃上げも考えなければならない」と悩む小規模事業者におすすめなのが、持続化補助金です。持続化補助金は商工会や商工会議所のサポートを受けながら、販路開拓の取り組みを支援する制度です。

補助上限額は通常50万円ですが、一定水準以上の賃上げに取り組む事業者に対しては上限額が150万円上乗せされる特例が用意されています。そのため、賃上げを実施すると販路開拓のための投資に最大200万円(補助率2/3)の支援を受けられる可能性があります。持続化補助金を活用すれば、従業員の待遇改善と事業の成長を同時に目指せる点がメリットです。

賃上げ促進税制

賃上げ促進税制は、従業員の給与を増やした企業に対して増加額の一部を法人税などから控除する制度です。なお、法人税は利益に対して会税されるため、「うちは今期赤字で、税金の控除は関係ない」と思われる企業も多いかもしれません。しかし、賃上げ促進税制の大きな特徴は中小企業向けに5年間の繰越控除措置が設けられている点です。

そのため、たとえ赤字の年であっても、賃上げに取り組めば税額控除の権利を将来に繰り越せます。そして、黒字化した年に過去の繰越分をまとめて控除が可能です。

価格転嫁対策の強化

政府は、サプライチェーン全体で公正な取引が行われるよう価格転嫁対策を強化しています。賃上げの原資を確保するためには、原材料費や人件費の上昇分を製品やサービスの価格へ適切に反映させる価格転嫁が必要であるためです。

具体的には、改正された下請法などに基づき、協議に応じない一方的な価格設定を禁止するなど、中小企業が価格交渉しやすい環境を整備しています。大発注側企業の取引状況を評価したリストを公表し、行政指導を強化するなど中小企業が賃上げの原資を確保できるよう国が後押しをしています。

補助金の申請を成功させるためのチェックポイント

以下では、補助金の申請を成功させるためのチェックポイントを3つ紹介します。

補助金の申請を成功させるためのチェックポイント
  • gBizIDプライムアカウントは取得済みか
  • 自社の課題と成長への道筋を明確にできているか
  • 採択率を上げる加点項目を見逃していないか

上記のポイントを意識し、補助金の申請手続きを慎重に進めましょう。

gBizIDプライムアカウントは取得済みか

まず、補助金を申請する際に不可欠なのがgBizIDプライムアカウントです。現在、多くの補助金申請は、行政サービスへのログインシステムであるJグランツを通じた電子申請が基本となっています。そして、Jグランツを利用するために必要なアカウントがgBizIDプライムアカウントです。

gBizIDプライムアカウントの取得には、オンライン申請と郵送申請の2種類が利用できます。郵送申請の場合は必要書類を郵送してから審査を実施しなければならず、アカウントが取得できるまで1週間程度かかります。

一方で、オンライン申請であれば最短即日でアカウント発行が可能です。特別な事情がない限り、オンライン申請でgBizIDプライムアカウントを取得しましょう。

自社の課題と成長への道筋を明確にできているか

多くの補助金で提出を求められる事業計画書は、自社の課題と成長への道筋を明確にできているかが見られます。高評価を得られる事業計画書を作成するためには、具体的に以下の点を明確に言語化できている必要があります。

事業計画書で示すべき内容具体例
自社の現状と課題は何か旧式の機械では生産性が低く、長時間労働の原因になっている
補助金で導入する設備やITツールが、課題をどう解決するのか最新の〇〇機を導入して製造時間を30%短縮し、残業を月平均10時間削減する
投資によって会社や従業員、社会にどのような良い未来がもたらされるのか生産性向上で得た利益を原資に賃上げを実現し、従業員の満足度を高める

現状の課題から未来への道筋まで一貫性のあるストーリーを描くことが、補助金の採択を勝ち取るための鍵です。

採択率を上げる加点項目を見逃していないか

採択率を上げる加点項目を見逃していないかも、補助金の申請前に確認しておきましょう。多くの補助金には、申請内容を評価する際の加点項目が設けられています。一つでも多く満たせれば、採択される可能性を大きく引き上げられるため、事業計画書に加点項目を盛り込みましょう。

例えば、ものづくり補助金では以下のような加点項目が設けられています。

  • 申請締切日時点で有効な経営革新計画の承認を取得している事業者
  • パートナーシップ構築宣言ポータルサイトにて宣言を公表している事業者
  • 指定された条件を満たす再生事業者
  • 申請締切日時点で有効なDX認定を取得している事業者
  • 健康経営優良法人2025に認定された事業者
  • 申請締切日時点で有効な「技術情報管理認証」を取得している事業者
  • 「J-Startup」「J-Startup地域版」に選定された事業者
  • グローバル枠に申請する場合に限り、新規輸出1万者支援プログラムポータルサイトにて登録が完了し、挑戦課題が掲載中となっている事業者
  • 申請締切日時点で有効な(連携)事業継続力強化計画を取得している事業者
  • 補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、従業員および役員の給与支給総額の年平均成長率を4.0%以上増加、並びに事業所内最低賃金を毎年3月、地域別最低賃金より+40円以上の水準を満たす目標値を設定し、設定した目標値を交付申請時までに全ての従業員または従業員代表者、役員に対して表明している事業者
  • 従業員規模50名以下の中小企業が被用者保険の任意適用に取り組む場合
  • えるぼし認定を取得している事業者
  • くるみん認定を取得している事業者
  • 申請締切日を起点にして、過去3年以内に事業承継により有機的一体としての経営資源を引き継いだ事業者
  • 申請締切日時点において中小企業庁「成長加速マッチングサービス」で会員登録を行い、挑戦課題を登録している事業者で登録されている課題のステータスが「掲載中」となっている場合のみ加点

参考:公募要領について|ものづくり補助金

加点項目は、補助金の公募要領に必ず記載されています。申請する補助金を決めたら公募要領を熟読し、どの加点項目を狙えるのかをリストアップしましょう。

まとめ

昨今の最低賃金上昇や深刻な人手不足は、多くの事業者様にとって大きな課題です。上記のような状況に対応するため、国は中小企業支援を強化しています。特に、ものづくり補助金・IT導入補助金・省力化投資補助金では、賃上げに取り組む企業への支援が手厚くなっている状況です。

具体的には、補助率が通常より高い2/3へ引き上げられる最低賃金引き上げ特例の要件が緩和されました。そのため、今まで対象外だった多くの事業者が、より有利な条件で設備投資やIT化を進めるチャンスが広がっています。

さらに政府は持続化補助金の賃上げ枠や賃上げ促進税制、価格転嫁対策の強化など多角的な支援策を講じています。補助金の採択を勝ち取るには、自社の課題と成長への道筋を示した事業計画の作成や加点項目の確認などの事前準備が不可欠です。自社の目的に合致した補助金制度を活用し、経営の安定化を進めましょう。

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