社内で労働者のキャリアアップを促進させるための助成金にキャリアアップ助成金があります。
非正規労働者を正規労働者に正規労働者に変更する際の費用負担などを軽減してくれるものです。
キャリアアップ助成税金の概要や支給の上限金額、そして申請の際に確認しておきたいチェックリストについて解説します。
目次
キャリアアップ助成金とは
最初にキャリアアップ助成金とはどのような制度であるか理解を深めておきましょう。
助成金の概要
キャリアアップ助成金は、パートやアルバイト、派遣社員など非正規雇用の労働者を支援するために設けられた助成金です。
企業に対して、これら労働者のキャリアアップ制度を促進させ、安定して働ける環境つくりを促進しています。
大きく分けて正社員化と処遇改善のふたつに分類でき、従業員の安定した雇用を目指すものです。
助成金の種類
キャリアアップ助成金には複数のコースがあり、それぞれ以下のとおりです。
正社員化コース | パートやアルバイト、契約社員など、非正規雇用の労働者を正社員として雇用するための費用を助成する制度 |
障害者正社員化コース | 非正規労働者の中でも、障害を持つ労働者を正社員として雇用するための費用を助成する制度 |
賃金規定等改定コース | 非正規社員の賃金を基本給ベースで3%以上増額させることに費用負担を補てんする制度 |
賃金規定等共通化コース | 正規社員の賃金を正社員と共通化させることに伴う費用を、助成する制度 |
賞与・退職金制度導入コース | 非正規社員に対しても賞与や退職金制度を導入し、実際に支給した際に生じる負担を軽減できる制度 |
社会保険適用時処遇改善コース | 非正規労働者向けに中長時間の労働を提供しそれに伴う費用負担を軽減する制度 |
キャリアアップ助成金は、どのコースを利用するかによって、対応すべき事柄が変化します。
後ほど解説するチェックシートなどを活用し、受給に向けて何から着手しなければならないのかを正しく認識しましょう。
給付される金額
それぞれのコースについて、給付される助成金の一例を挙げると以下のとおりです。
- 正社員化コース:有期雇用労働者を中小企業が正社員にした場合に80万円
- 障害者正社員化コース:有期雇用労働者を正規社員にした場合に90万円
- 賃金規定等改定コース:中小企業が5%以上の基本給を引き上げた場合の増額をした場合に6万5,000円/1人
- 賃金規定等共通化コース:中小企業の場合に60万円
- 賞与・退職金制度導入コース:中小企業が賞与か退職金を導入した場合に40万円
- 社会保険適用時処遇改善コース:労働時間を4時間以上延長した場合に30万円
キャリアアップ助成金の申請前に役立つチェックリスト3選
それぞれのコースで必要な準備が異なるため、以下で紹介するチェックリストを活用して間違えないように準備しましょう。
F&M Club
F&M Clubのキャリアアップ助成金向けチェックリストは、登録不要で無料ダウンロード可能です。
累計38,000社以上の中小企業のバックオフィス業務を支援した実績をもつF&M Clubが提供するテンプレートであるため、安心して活用できるでしょう。
また、F&M Clubでは、豊富な補助金申請支援実績などから得た“本当に役立つ”経営ノウハウ、資金繰り改善、補助金や助成金申請のサポートなどが、月額30,000円(税抜)で使い放題です。
自社で使える助成金・補助金・優遇制度が分かる
助成金サポート.jp
助成金サポート.jpは、助成金の最新情報や各種申請方法などの情報を発信するメディアサイトです。
さまざまな助成金についての解説があり、キャリアアップ助成金の基礎知識やチェックリストのダウンロードにも対応しています。
チェックリストはそれぞれの解説記事からダウンロードできるため、キャリアアップ助成金の最新記事を参照するようにしましょう。
東京労働局
東京労務局は、主に首都圏に向けて労働や雇用に関するサービスを提供する厚生労働省が所轄する組織です。
対応エリアが限られているものの、首都圏を担当する労務局として、さまざまな情報発信に力を入れています。
各種助成金に関する発信も多く取り扱い、その中にキャリアアップ助成金に関するものが含まれるため活用しましょう。
キャリアアップ助成金を受給するまでの基本的な流れ
キャリアアップ助成金を受給するまでの流れは、大まかに以下のとおりです。
キャリアアップ計画書の作成と提出
最初に「キャリアアップ計画書」を作成しなければなりません。
これは厚生労働省の「有期契約労働者等のキャリアアップに関するガイドライン」を踏まえて記載します。
作成が完了した後は、助成金の申請に向けて都道府県労働局または公共職業安定所(ハローワーク)に提出が必要です。
この作業を忘れてしまうと、助成金の受給ができなくなるため、最初に提出するようにしましょう。
また内容が認められた際は、証明書が送られてくるため、これを保管しておくことが重要です。
就業規則の改定と労働基準監督署への届け出
計画書が認定された後、就業規則や労働協定などの改定を進めます。
キャリアアップ助成金の場合は新しく転換制度を定め、例えば以下のような記載を追加します。
「勤続◯年以上の者、もしくは所定の研修を終えた者で希望する場合に、正規雇用に転換することがある」
「転換を希望できるものは評価ランクがA以上であり、事前の試験に合格した者のみとする」
なお、就業規則は会社側の一存で作成できますが、労働基準監督署へ提出する際には、従業員代表との議論結果を提出しなければなりません。
そのため、基本的には議論して合意できた場合、その内容を労働基準監督署へ提出する流れです。
契約の見直しや処遇の改善
就業規則の改定が完了したならば、実際に契約の見直しを進めます。
契約にあたっては、就業規則に記載した内容を踏まえなければなりません。
例えば、契約を見直す際に面接や試験が必要であると明記した場合、それらを実施して最終的な判断を下します。
転換が妥当であると判断された場合、対象者を転換し、新たな雇用契約書などを交付する作業が必要です。
6ヶ月以上の給与支給
労働者を転換して終わりではなく、6ヶ月間の賃金を支給しなければなりません。
契約書に沿った内容で、支給することが求められます。
もし契約書の内容と相違があった場合、6ヶ月支給しても後ほどの審査で受給が認められなくなります。
何かしら支給額に関する条件があるならば、契約書を交わす段階で説明して、労働者と合意することが重要です。
なお、6ヶ月間の間で、従業員が退職してしまうと、基本的にはキャリアアップ助成金を受けられません。
申請書類の作成と提出
労働者を転換させて、6ヶ月の賃金を支給したならば、この段階で受給に向けた手続きが可能です。
いくつもの書類を作成したり、添付したりする必要があるため、チェックリストを活用して、必要な書類を確認しましょう。
提出する書類に不足があると受け取りしてもらえず、手続きが長期化する可能性があります。
また、最初に提出した計画書の控えなどが必要となるため、これらもあわせて準備しておきましょう。
チェックリストで確認できる書類以外にも、個別に提出が求められるケースがあるため、もし指示があるならばそれにも対応します。
審査と支給
書類の提出が完了した後は、審査結果が出るまで待ちましょう。
基本的にここで解説したとおりの流れであれば、問題なく認められるはずです。
しかし、申し込み状況などにより審査に時間を要することは考えられるため、結果が出るまで焦らず待機しなければなりません。
キャリアアップ助成金を受給するためのポイント
キャリアアップ助成金を受給したいと考えるならば、いくつかのポイントをおさえましょう。
申請にあたっては、以下を意識するようにしてください。
チェックリストを活用し丁寧に準備する
申請に向けて書類などを準備する必要があるため、紹介したチェックリストを活用し、丁寧な準備を心がけましょう。
書類を作成するだけではなく、それぞれの書類について誤りが含まれないように気をつけなければなりません。
また、就業規則など正しく記載しなければ意味をなさないものも含まれるため注意が必要です。
焦って書類を作成し、誤りが含まれていると申請してから指摘されることになってしまいます。
申請が受け付けられないと計画通りに進められないなどのトラブルになりかねません。
事前に申請してから雇用や転換を実施する
キャリアアップ助成金の重要なポイントとして、先に申請してから、変革に取り組むということが挙げられます。
例えば、非正規の従業員の正社員に転換したいならば、先に申請して認められなければなりません。
転換してから申請してもキャリアアップ助成金の対象とならないため注意が必要です。
この順番を間違えてしまうことで、本来は受給できる可能性があるにもかかわらず、申請できないというケースが見受けられます。
不明点がある場合は代行サービスを活用する
チェックシートからも確認できるように、キャリアアップ助成金の申請には、必要な書類が多くあります。
これらの作成は難易度が高いため、不明点があれば専門家へ依頼しましょう。
書類作成から申請の代行まで支援してくれるサービスがあるため、これらを活用することで、少ない負担での受給が可能です。
また書類の内容に不備があることによる審査落ちなどのリスクを回避できます。
まとめ
キャリアアップ助成金の概要と、必要書類のチェックリストについて解説しました。
受給に向けて、実行しなければならないポイントがいくつもあるため、チェックリストで確認しましょう。
基本的には、チェックリストに沿って推進すれば良いですが、不明点がある場合は専門家に支援してもらう選択肢もあります。