「10億円以上の大規模投資を検討しているけれど、資金面がネック…」など大規模投資の資金で悩む中堅・中小企業も多いでしょう。大規模投資をおこなう企業におすすめなのが「大規模成長投資補助金」で最大50億円が補助されて事業拡大や賃上げ、生産性向上を支援してくれます。
とはいえ、大規模成長投資補助金をスムーズに申請する際には要件・申請方法などを事前に確認しておかなければなりません。本記事では、大規模成長投資補助金制度の概要から申請スケジュール・採択のポイントまで、分かりやすく解説します。
本記事を読めば、大規模成長投資補助金の概要を理解して、スムーズな申請が可能です。大規模成長投資補助金を活用し、最新設備・技術導入を通して他社との差別化を図りましょう。
自社で使える助成金・補助金・優遇制度が分かる
目次
大規模成長投資補助金とは?

大規模成長投資補助金は、中堅・中小企業が人手不足解消や生産性向上を目的とした大規模投資を支援する制度です。具体的には、工場や倉庫の新設・最新機械の導入・ソフトウェアの購入などが対象となります。
補助金額は最大50億円で投資額の3分の1以内が補助されますが、「投資額が10億円以上」などの条件を満たさなければなりません。大規模成長投資補助金を活用すれば、企業は経済的負担を抑えて事業拡大を図れます。
大規模成長投資補助金の予算
大規模成長投資補助金の予算は令和5年補正予算で1,000億円が計上され、さらに令和8年までの国庫債務負担を含めて総額3,000億円が確保されています。大規模成長投資補助金は大がかりな予算が組まれているため、補助上限額も50億円と高額です。
大規模成長投資補助金の採択率
大規模成長投資補助金の採択率は、過去の公募回によって異なる状況です。具体的には、2024年の第1回公募では有効申請件数736件中109件が採択され、採択率は14.8%でした。
第2回公募では有効申請件数605件中55件が採択され、採択率は9.0%となっています。上記の数値から、大規模成長投資補助金の審査は非常に厳格であることが分かります。
参考:令和5年補正「中堅・中小企業の賃上げに向けた省⼒化などの⼤規模成⻑投資補助⾦(中堅・中小成長投資補助金)」(1次公募)にかかる補助事業者の採択結果について|経済産業省
参考:2次公募の2次審査(プレゼンテーション審査)について|経済産業省
大規模成長投資補助金のスケジュール(3次公募)
大規模成長投資補助金の第3次公募に関するスケジュールは、以下のとおりです。
公募開始 | 2025年3月10日(月) |
申請締切 | 2025年4月28日(月)17:00(厳守) |
交付決定 | 順次実施予定(2025年6月下旬予定) |
補助事業期間 | 交付決定日から最長で2027年12月末まで |
参考:中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化などの大規模成長投資補助金|経済産業省
大規模成長投資補助金の第3次公募は2025年3月10日から開始され、申請受付は同年4月28日17時までとなっており、締切厳守です。プレゼンテーション審査は6月上中旬に予定されていて、申請企業の経営者などが出席します。
大規模成長投資補助金の採択結果の発表は6月下旬頃を予定しており、順次交付決定がおこなわれます。補助事業期間は交付決定日から最長で2027年12月末までであり、申請を検討される方は早めに申請手続きの準備をしておきましょう。
大規模成長投資補助金の対象事業者

大規模成長投資補助金の対象事業者は、常時使用する従業員数が2,000名以下の中堅・中小企業です。ただし、以下の条件に該当する場合は補助対象外となります。
- みなし大企業:大企業に実質的に支配されていると判断される企業
- 1次産業を主たる事業とする企業:農作物の生産など1次産業を主な事業としている場合
参考:中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化などの大規模成長投資補助金|経済産業省
なお、上記以外にも補助対象外となる条件があるため、詳細は公式サイトからダウンロードできる公募要領で確認しておきましょう。また、一定の要件を満たす場合、中堅・中小企業を中心とした共同申請(コンソーシアム形式)も可能です。
大規模成長投資補助金の申請要件

大規模成長投資補助金の申請要件は、主に以下の2つです。
- 専門家経費や外注費を除く補助対象経費が10億円以上である
- 補助事業終了後3年間において、対象事業に関わる従業員1名当たりの給与支給総額の年平均上昇率が、全国の過去3年間の最低賃金の年平均上昇率(4.5%)以上である
参考:中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化などの大規模成長投資補助金|経済産業省
なお、上記の内2つ目の賃上げに関して申請時に掲げた目標を達成できなかった場合、未達成率に応じて補助金の返還を求められます。
大規模成長投資補助金の補助対象となる事業の例

大規模成長投資補助金で補助対象となる事業の例として、以下があげられます。
- 生産施設の新設や増築:新しい工場や生産ラインの建設、既存施設の拡張など
- 最新機械装置の導入:生産効率を高めるための高度な機械や設備の購入・設置
- ソフトウェアや情報システムの構築:業務効率化を図るためのERPシステムや生産管理ソフトの導入
- 物流倉庫の建設や改修:商品の保管や出荷作業を効率化するための倉庫の新設や既存倉庫の改修
- 検査施設の整備:製品品質向上のための検査機器の導入や検査室の設置
基本的に、人手不足解消や生産性向上を目的とした投資は補助対象となります。
大規模成長投資補助金の対象経費
大規模成長投資補助金の対象経費は、企業の事業拡大や生産性向上を支援するための以下の項目が含まれます。
補助対象経費 | 詳細 |
建物費 | 補助事業に必要な建物の建設、増築、改修、中古建物の取得にかかる費用(※土地代・解体費などは除く) |
機械装置費 | 生産設備、測定器具、検査工具などの購入・製作・据付・運搬などの費用(※リース可) |
ソフトウェア費 | 専用ソフト・情報システムなどの購入・構築・クラウド利用、改良・修繕費用(※汎用ソフトやPCなどは除く) |
外注費 | 加工、設計、検査などを外部委託する場合の費用(※設備購入は除く) |
専門家経費 | 技術指導・助言を受けた専門家への謝金・旅費など(※日額上限あり) |
参考:中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化などの大規模成長投資補助金|経済産業省
なお、補助対象外となる経費もあるため、詳しくは公募要領を確認しましょう。
大規模成長投資補助金の補助金額・補助率
大規模成長投資補助金の補助金・補助率は、以下のとおりです。
補助金上限額 | 最大50億円 |
補助率(通常) | 補助対象経費の3分の1以内 |
補助率(特例) | 補助対象経費の4分の1以内(一部条件付きで追加採択の可能性あり) |
参考:中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化などの大規模成長投資補助金|経済産業省
補助金上限は50億円で補助率は投資額の3分の1以内と定められており、たとえば総額12億円の投資をおこなう場合の補助金額は最大で4億円です。なお、補助率4分の1の特例適用は本来の審査基準に満たない場合でも政策的に支援が必要と判断された事業について採択される可能性がある制度です。補助率4分の1の特例適用を受ける場合は、申請様式2に「4分の1適用希望」の明記が必要です。
大規模成長投資補助金の申請方法

大規模成長投資補助金の申請方法は、以下の手順で進められます。
- GビズIDプライムアカウントの取得:電子申請に必要なアカウントを取得
- 申請書類の準備:成長投資計画書・ローカルベンチマークなどの必要書類を作成
- 電子申請の実施:補助金申請システム「JGrants」を利用して申請
- 審査:書面審査とプレゼンテーション審査がおこなわれる
なお、GビズIDプライムアカウントは法人・個人事業主向けの共通認証システムで、補助金申請システム「JGrants」を利用するのに必要です。GビズIDプライムアカウントは、公式サイトからオンライン・郵送の2パターンでアカウント取得手続きが可能です。
大規模成長投資補助金の申請時に必要な書類
大規模成長投資補助金の申請時には、以下の書類を提出する必要があります。
書類名 | 概要・形式 | 備考 |
成長投資計画書(様式1) | 事業の目的・内容・効果をまとめた資料(パワーポイント形式) | 最大35ページ以内、PDFファイルで提出 |
成長投資計画書別紙(様式2) | 数値計画・財務計画の詳細(Excelファイル形式) | シート形式で記載 |
ローカルベンチマーク(様式3) | 財務健全性を示す指標(Excelファイル形式) | 指定セルに入力・提出 |
決算書など(直近3期分) | 財務状況を示す書類(PDFファイル形式) | 3期分の貸借対照表・損益計算書など |
金融機関からの成長投資計画確認書(様式4)※任意 | 金融機関の支援・確認を証明する書類(PDFファイル形式) | 任意提出だが、審査で加点対象となる |
リース取引にかかる誓約書(様式5)※該当者のみ | リース契約時の条件確認(PDFファイル形式) | リースを利用する場合に必要 |
リース料軽減計算書(様式6)※該当者のみ | リース費用の内訳と補助金適用範囲の明示(Excelファイル形式) | 機器リースの場合に必要 |
参考:中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化などの大規模成長投資補助金|経済産業省
上記資料の内、「リース取引にかかる誓約書(様式5)」「リース料軽減計算書(様式6)」は導入機器をリースして申請する事業者のみ必要です。
大規模成長投資補助金の審査方法

大規模成長投資補助金の審査は、以下の手順でおこなわれます。
- 1次審査(書面審査):提出された成長投資計画書(35ページ以内)をもとに、形式要件や計画の効果・実現可能性が評価される
- 2次審査(プレゼンテーション審査):1次審査を通過した申請者が、計画の詳細や実現性について直接説明し、評価を受ける
まず、1次審査(書面審査)では提出された成長投資計画書や別紙の数値計画をもとに「形式要件を満たしているか」「計画の効果や実現可能性があるか」を定量的に評価されます。
次に、2次審査(プレゼンテーション審査)では1次審査を通過した申請者が審査会にて計画の内容を定性的にも説明し、専門家による評価を受けます。2次審査の審査会は地域ブロックごとに開催され、外部有識者が審査員を務める流れです。
大規模成長投資補助金の審査基準
大規模成長投資補助金の審査は、企業の持続的成長と地域経済への波及効果を評価するために以下の5つの観点からおこなわれます。
審査項目 | 審査内容の概要 |
①経営力 | 長期ビジョン、事業戦略の明確さ、成果目標、経営管理体制、資金計画の適切性などを評価 |
②先進性・成長性 | 市場での競争優位性、差別化、労働生産性向上、人手不足の解消、将来的な成長可能性を評価 |
③地域への波及効果 | 地域経済や雇用への貢献度、取引の拡大、地域企業との連携による波及効果を重視 |
④大規模投資・費用対効果 | 「自社の規模に見合ったリスクのある大規模投資であるか」「投資による付加価値の創出が見込めるか」を評価 |
⑤実現可能性 | 財務基盤、実施体制、課題への対応力、スケジュールの妥当性など計画の実現性を評価 |
参考:中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化などの大規模成長投資補助金|経済産業省
大規模成長投資補助金を受給するためには、上記の基準を踏まえた成長投資計画書の作成が鍵となります。
大規模成長投資補助金には加点制度がある
大規模成長投資補助金には、以下の条件を満たす事業者に対して加点制度が設けられています。
加点制度 | 内容 |
①地域未来牽引企業 | 経済産業省が選定した「地域の中核企業」に該当する場合に加点。(申請時に該当する旨を記載し、確認できる資料を添付) |
②パートナーシップ構築宣言 | 「パートナーシップ構築宣言」に登録済みの企業は加点対象。(登録済みであることを示す証明資料が必要) |
③中小企業から中堅企業への成長加点 | 補助金の活用を通じて中堅企業化を目指す中小企業に対して加点。(従業員数や資本金の目標値を設定し、プレスリリースで対外公表する必要あり) |
④雇用・職場環境改善に関する加点 | 「えるぼし認定企業」「くるみん認定企業」に認定されている企業に対して加点。 |
⑤地域企業経営⼈材マッチング促進事業活⽤企業 | 「地域企業経営⼈材マッチング促進事業」を活⽤して採⽤した⼈材を事業実施体制に含めている企業に対して加点。 |
⑥金融機関から計画の妥当性の確認を受けている | 「⾦融機関による確認書」の提出に加え、⾦融機関の担当者などがプレゼンテーション審査に同席した場合に加点 |
参考:中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化などの大規模成長投資補助金|経済産業省
大規模成長投資補助金の審査を通過するポイント
大規模成長投資補助金の審査を通過するポイントとして、以下の4つがあげられます。
大規模成長投資補助金を申請する際は、上記のポイントを意識して書類を作成しましょう。
採択事例に近い事業で申請する
過去の採択事例を分析し、成功した事業内容や特徴を把握して近い事業で申請するのが成功への近道です。ただし、単なる模倣ではなく、自社の強みや独自性を明確に打ち出す必要があります。なお、地域創生・DX・カーボンニュートラルなど政府が注力する分野に合致した事業だと、高評価を得やすいです。
ローカルベンチマークの財務スコアでA評価をとる
ローカルベンチマークの財務スコアでA評価をとれるよう、資料を作成しましょう。ローカルベンチマークは経済産業省が提供する企業の財務健全性を評価する指標であり、補助金申請時の重要な評価項目です。
特に、財務スコアでA評価を取得すれば、事業を安定的に遂行できると判断されて審査で高い評価を得られます。財務スコアを向上させるためには、自己資本比率の改善・収益性の向上・適切な負債管理など、日頃から健全な財務運営を心掛けることが必要です。
また、財務諸表の正確性や透明性を確保し、第三者からの評価を高める努力も重要です。財務スコアの向上は一朝一夕には達成できないため、計画的な取り組みが求められます。
賃上げを適用する人数・割合を多くする
大規模成長投資補助金の目的のひとつは持続的な賃上げの実現であり、賃上げを適用する従業員の人数や割合を増やせば、審査において高く評価されます。大規模成長投資補助金の申請には、先述のとおり以下の賃上げ要件が求められます。
- 補助事業終了後3年間で、対象事業に関わる従業員1名当たりの給与支給総額の年平均上昇率が、全国の過去3年間の最低賃金の年平均上昇率(4.5%)以上である
上記の要件を上回る賃上げ計画を策定して適用範囲を広げ、審査通過の可能性を高めましょう。
最先端の取り組みをアピールする
大規模成長投資補助金の審査では事業の先進性や成長性が重要な評価基準となるため、最先端の取り組みをアピールしましょう。たとえば、AIやIoTを活用した生産性向上、環境負荷低減を目的としたグリーンテクノロジーの導入などが最先端の取り組みの例としてあげられます。
上記の取り組みは他社事業との差別化要因となり、審査において高く評価される可能性があります。ただし、最先端技術を単なる技術導入ではなく、自社の事業戦略や市場ニーズに適合した形での活用が重要です。
大規模成長投資補助金を申請する際の注意点
大規模成長投資補助金を申請する際は、以下の注意点があります。
成長投資計画書の内容は審査でも重要な評価基準となるため、丁寧に作成してください。
成長投資計画書はパワーポイントで様式指定されている
申請時に提出が求められる「成長投資計画書(様式1)」は、パワーポイント形式での作成が指定されている点に注意が必要です。成長投資計画書は事業の概要や戦略を審査員に効果的に伝える資料で、35ページ以内で作成する必要があります。
内容としては経営力、先進性・成長性、地域への波及効果、大規模投資・費用対効果、実現可能性の審査基準に沿って、定量的・定性的に記載しなければなりません。パワーポイント形式での資料作成になれていない場合は、専門家に代行してもらうのがおすすめです。
成長投資計画書の作成にはかなりの時間がかかる
成長投資計画書の作成は、事業の詳細な分析や将来計画の明確化を伴うため、相応の時間と労力を要します。特に、大規模成長投資補助金の申請では投資額が最低でも10億円と高額であり、公募期間も約2カ月と短期間です。大規模成長投資補助金の申請受付開始後に事業計画の立案を開始して申請することは現実的ではありません。
そのため、大規模成長投資補助金の申請を検討している企業は、既に事業計画を作成していることが前提です。計画書の作成には事業内容の詳細な検討、財務計画の策定、市場分析、リスク評価など多岐にわたる作業が含まれています。上記の内容を高い精度でまとめ上げるためには十分な時間を確保し、計画的に取り組むことが不可欠です。締切間際の作成では内容の精度や完成度が低下するリスクが高まるため、早めの着手と計画的な進行を心掛けましょう。
まとめ
大規模成長投資補助金は、中堅・中小企業の大規模投資を支援する制度です。補助金額は最大50億円、補助率は投資額の3分の1以内で賃上げや地域経済への波及効果などが評価基準となります。
大規模成長投資補助金の申請には成長投資計画書の作成が必須で、審査を通過するためには採択事例の分析や先進的な取り組みのアピールが効果的です。大規模成長投資補助金の申請資料作成には時間がかかるため、早めの着手が成功の鍵となります。大規模成長投資補助金をスムーズに申請・受給し、最新設備・技術導入を通して他社との差別化を図りましょう。
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