企業が研修につかえる助成金一覧|申請手続きや注意点も紹介

企業が研修につかえる助成金一覧|申請手続きや注意点も紹介

「研修を実施したいけれど、コストが心配…」という悩みを抱える企業担当者の方も多いのではないでしょうか。実は、国や自治体が提供する助成金を活用すれば、人材育成にかかる費用負担を大幅に軽減できます。例えば、厚生労働省の「人材開発支援助成金」では研修等職業・教育訓練にかかる費用の一部補填が可能です。

本記事では、企業が研修に使える主な助成金制度や申請時の注意点をわかりやすく解説します。本記事を読めば、研修に利用できる助成金制度を把握してスムーズに申請できます。助成金を活かしてコストを抑えながら研修を実施し、社員の満足度やエンゲージメントを向上させて優秀な人材の定着を図りましょう。

助成金申請、労務トラブル、資金繰り改善

企業の研修に使える助成金制度とは?

企業が社員研修を実施する際に活用できる助成金制度として、以下の2種類があります。

企業の研修に使える助成金制度
  • 人材開発支援助成金(厚生労働省)
  • スキルアップ助成金(東京都)

人材開発支援助成金は厚生労働省が提供しており、職業訓練や教育訓練にかかる費用の一部を補助します。また、東京都のスキルアップ助成金は中小企業が従業員のスキル向上を目的に研修を実施する場合に支給されます。

上記の助成金を利用すれば、企業は人材育成にかかるコストの大幅な軽減が可能です。なお、対象となる研修内容や申請手続きには細かな条件があるため、申請前に制度内容をよく確認しましょう。

企業の研修に助成金制度を活用するメリット

企業の研修に助成金制度を活用するメリットとして、以下の3点があげられます。

企業の研修に助成金制度を活用するメリット
  • 人材育成にかかるコストを削減できる
  • 質の高い研修を実施できる
  • 正社員だけでなく派遣社員等幅広い属性を対象とした研修も実施可能

上記3つのメリットに魅力を感じる企業は、積極的に助成金を活用しましょう。

人材育成にかかるコストを削減できる

助成金を活用すれば、企業が従業員のスキル向上を図る際にかかる研修費用・講師料・教材費等のコストを削減できる点がメリットです。特に、中小企業に対しては助成金の中で優遇措置が設けられているケースもあり、経済的な負担を軽減しながら効果的な人材育成が実現できます。​また、助成金は返済不要であるため、企業の将来的な財務状況に影響を与えずに資金を活用できる点も大きな魅力です。​

質の高い研修を実施できる

助成金を活用すれば、資金を用いて企業は外部の専門機関や講師を招き、より高度で専門的な研修を実施できる点がメリットです。​そのため、従業員は最新の知識や技術を習得できて業務の効率化や生産性の向上につながります。​

また、質の高い研修を提供すれば、従業員のモチベーションやエンゲージメントが向上して離職率の低下に寄与する点もメリットです。​企業にとっては、競争力の強化や組織全体のパフォーマンス向上といった長期的なメリットが期待できます。

正社員だけでなく派遣社員等幅広い属性を対象とした研修も実施可能

多くの人材関連の助成金は正社員だけでなく、派遣社員・契約社員等の非正規雇用者も対象としている点もメリットです。​そのため、企業は多様な雇用形態の従業員に対して均等な研修機会を提供でき、職場全体のスキルアップを図れます。

​また、非正規雇用者の能力向上は、正社員と同様に業務の質や顧客満足度の向上にもつながります。​さらに、非正規雇用者のキャリアアップ支援としても活用でき、企業の社会的責任を果たす一助となる点もメリットです。

企業の研修に使える助成金制度一覧

企業の研修に使える助成金制度として、以下の2つを紹介します。

企業の研修に使える助成金制度一覧
  • 人材開発支援助成金(厚生労働省)
  • スキルアップ助成金(東京都)

企業で研修を実施する際は、上記2つの助成金制度から自社の条件にあったものを選びましょう。

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、企業が従業員に対して職務に関連する専門的な知識や技能の習得を目的とした職業訓練を計画的に実施する際に、訓練にかかる経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。​

本制度を活用すれば、企業は人材育成にかかるコストを削減して従業員のスキルアップを図れます。​なお、人材開発支援助成金は助成金の利用目的によって以下4つのコースが用意されています。

人材開発支援助成金のコース
  • 人材育成支援コース
  • 教育訓練休暇等付与コース
  • 人への投資促進コース
  • 事業展開等リスキリング支援コース

上記4つのコースの中から、自社の人材育成方針にあったものを選びましょう。

人材育成支援コース

人材育成支援コースは、企業が従業員に対して実施する職業訓練に対して訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。​人材育成支援コースでは、以下3つの訓練が助成対象となります。​

人材育成支援コースの対象訓練
  • 人材育成訓練:職務に関連した知識・技能を習得させるための10時間以上の訓練(OFF-JT)
  • 認定実習併用職業訓練:厚生労働大臣の認定を受けた実習併用職業訓練(OFF-JT+OJT)
  • 有期実習型訓練:正社員経験の少ない有期契約労働者等を正社員等に転換するための訓練(OFF-JT+OJT)

なお、訓練ごとの経費助成率や助成額は以下のとおりです。

訓練メニュー対象労働者経費助成率(通常)経費助成率(加算)※賃金・資格等手当要件を満たす場合賃金助成額(1人1時間あたり)OJT実施助成額(1人1コースあたり)
① 人材育成訓練正規雇用労働者等・中小企業:45%
・大企業:30%
+15%・中小企業:800円
・大企業:400円
有期契約労働者等・中小企業:70%
・大企業:60%
+15%・中小企業:800円
・大企業:400円
② 認定実習併用職業訓練正規雇用労働者等・中小企業:45%
・大企業:30%
+15%・中小企業:800円
・大企業:400円
・中小企業:20万円
・大企業:11万円
有期契約労働者等・中小企業:70%
・大企業:60%
+15%・中小企業:800円
・大企業:400円
・中小企業:20万円
・大企業:11万円
③ 有期実習型訓練有期契約労働者等・中小企業:75%
・大企業:60%
+25%・中小企業:800円
・大企業:400円
・中小企業:10万円
・大企業:9万円

参考:人材開発支援助成金|厚生労働省

教育訓練休暇等付与コース

教育訓練休暇等付与コースは企業が従業員に対して有給の教育訓練休暇制度を導入し、実際に休暇を取得させて訓練を受けさせた場合に助成金が支給される制度です。​具体的には、3年間で5日以上の有給教育訓練休暇制度を導入し、労働者が当該休暇を取得して訓練を受けた場合に最大30万円の助成が行われます。​なお、賃金要件等指定された条件を満たす場合は、経費助成額が最大36万円に引き上げられます。​

人への投資促進コース

人への投資促進コースは、企業が従業員の能力開発を促進するための多様な訓練に対して助成を行う制度です。​人への投資促進コースは令和4年から令和8年までの期間限定で実施されており、以下の5つの訓練・制度が助成対象となります。​

人への投資促進コースの対象訓練・制度
  • 高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練:ITスキル標準(ITSS)レベル3・4に相当する高度なデジタル人材の育成や情報工学・情報科学分野の大学院での訓練
  • 情報技術分野認定実習併用職業訓練:IT分野未経験者を対象に、OFF-JTとOJTを組み合わせた訓練
  • 定額制訓練:サブスクリプション型の研修サービス
  • 自発的職業能力開発訓練:労働者が自発的に受講した訓練
  • 長期教育訓練休暇等制度:長期教育訓練休暇制度や短時間勤務制度を導入し、労働者が訓練を受講するための環境を整備した企業に対して助成

本コースを活用すれば、企業は従業員のスキルアップを支援して組織全体の生産性向上や競争力強化につなげられます。なお、訓練・制度ごとの経費助成率・助成額は以下のとおりです。

訓練メニュー・制度経費助成率(中小企業)経費助成率(大企業)賃金助成額(1人1時間あたり)経費助成額OJT実施助成額(1人1訓練あたり)
高度デジタル人材訓練75%60%・中小企業:1,000円
・大企業:500円
成長分野等人材訓練75%75%1,000円
情報技術分野認定実習併用職業訓練60%45%・中小企業:800円
・大企業:400円
・中小企業:20万円
・大企業:11万円
定額制訓練60%45%
自発的職業能力開発訓練45%45%
長期教育訓練休暇制度・中小企業:1,000円
・大企業:800円
20万円
教育訓練短時間勤務等制度20万円

参考:人材開発支援助成金|厚生労働省

事業展開等リスキリング支援コース

事業展開等リスキリング支援コースは企業が新たな事業展開や業務転換を行う際、従業員に必要なスキルを習得させるための訓練に対して助成する制度です。​企業の競争力強化と従業員の雇用安定を図る事を目的としており、​対象となる訓練内容の例は以下のとおりです。

事業展開等リスキリング支援コースの対象訓練例
  • デジタル化・DX推進に関する研修
  • 新製品・新サービスの開発に関する研修
  • グリーン化・脱炭素化に対応するための研修

​なお、助成対象となる訓練は「OFF-JTによる訓練で、実訓練時間が10時間以上である」の条件も満たす必要があります。事業展開等リスキリング支援コースの助成率・助成額は、以下のとおりです。

項目中小企業大企業
経費助成率75%60%
賃金助成額(1人1時間あたり)1,000円500円

参考:人材開発支援助成金|厚生労働省

スキルアップ助成金

東京都では、中小企業等が従業員のスキルアップを目的として実施する研修に対して、以下のような助成金制度を提供しています。​

スキルアップ助成金の種類
  • 事業内スキルアップ助成金:​自社で企画・実施する研修に対して、研修時間数や受講者数に応じて助成される。​助成額は、助成対象受講者数×研修時間数×760円で、1申請企業あたりの上限額は150万円。
  • 事業外スキルアップ助成金:​外部の公開研修を利用する場合に、研修費用の一部が助成される。​小規模企業者は経費の3分の2、中小企業等は2分の1が助成され、1人1研修あたりの上限額は25,000円。
  • DXリスキリング助成金:​デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するための研修に対して、費用の一部が助成される。対象経費の4分の3が助成され、1人1研修あたりの上限額は75,000円。
  • 育業中スキルアップ助成金:​育児休業中の従業員がスキルアップを目的とした研修を受講する場合に、費用の一部が助成される。中小企業等は対象経費の3分の2が助成され、大企業は2分の1となっている

参考:令和7年度事業内スキルアップ助成金|東京しごと財団

助成金を申請する際の手続き

助成金を申請する際の手続きは、一般的に以下の流れで実施します。

助成金を申請する際の手続き
  • 情報収集と助成金の選定
  • 計画書の準備と提出
  • 計画の実施
  • 支給申請書の作成・提出
  • 審査・支給

上記のステップを参考に、助成金の申請をスムーズに実施しましょう。

1.情報収集と助成金の選定

まず、自社の取り組みに適した助成金を選定します。​助成金にはさまざまな種類があり、対象となる業種や取り組み内容、従業員数等によって申請できる制度が異なります。​厚生労働省のホームページや各自治体の情報を確認し、最新の制度内容や募集期間を把握しましょう。​

2.計画書の準備と提出

申請する助成金が決まったら、必要な書類の準備に取りかかります。​多くの助成金では事前に計画書の提出が求められ、具体的な取り組み内容や実施期間等を記載して趣旨に沿った内容にしなければなりません。​計画書の様式や提出期限は助成金ごとに異なるため、必ず公募要領等の公式情報を確認しましょう。​

3.計画の実施

計画書の提出後、行政からの認定を受けたら計画に沿って取り組みを実施します。​計画を実施する際、実施内容を証明するための記録や資料をしっかりと残す事が重要です。​

例えば、研修費用を助成金の補助対象として申請する場合、研修の出席記録や写真、報告書等が必要となります。​また、計画の途中で変更が生じた場合には事前に変更届を提出する必要があります。​

4.支給申請書の作成・提出

計画の取り組みが完了したら、助成金の支給申請を行います。支給申請のステップでは各助成金の様式に沿って申請書を作成し、取り組みの内容や実績、かかった費用等を正確に報告する必要があります。​また、申請時に複数の添付書類が必要である上、​提出期限やタイミングは助成金ごとに異なるため、必ず事前に確認しておきましょう。​

5.審査・支給

申請書を提出した後は、労働局や助成金の管轄機関による審査が行われます。​審査では、「助成金の支給要件を満たしているか」「提出書類に不備や漏れがないか」「取り組みが計画通りに実施されているか」等が確認されます。​

審査を無事に通過して受給要件を満たしていると判断されれば、「支給決定通知」が届いて指定した口座に助成金が振り込まれます。​支給申請から実際の入金までには数か月程度かかるケースもあるため、申請スケジュールに余裕をもっておくと安心です。​

研修に助成金を活用する際の注意点

研修に助成金を活用する際の注意点として、以下の2点があげられます。

研修に助成金を活用する際の注意点
  • 助成金によって申請の手続きが異なる
  • 助成対象となる研修の受講対象者を確認する

上記のポイントに注意して、正確に助成金を申請しましょう。

助成金によって申請の手続きが異なる

助成金制度は多岐にわたり、各制度で申請手続きや必要書類、提出期限が異なります。​例えば、人材開発支援助成金の場合、訓練開始の1か月前までに「職業訓練実施計画届」を労働局へ提出し、訓練終了後2か月以内に支給申請を行う必要があります。​

また、訓練コースの追加・変更がある場合には都度「職業訓練実施計画届」の提出が必要です。​申請手続きの詳細や様式は制度ごとに異なるため、公式情報を確認して正確に手続きを行いましょう。

助成対象となる研修の受講対象者を確認する

助成金の対象となる研修や受講者の要件も制度によって異なるため、注意が必要です。​例えば、「人材育成支援コース」では、研修内容によっては正社員だけでなく契約社員やパートタイム労働者も対象となります。​

一方で、助成金制度によっては特定の雇用形態や職種に限定される制度も存在します。​また、訓練の内容や時間数、実施方法(OJTやOFF-JT)によっても助成の可否が変わるため、事前に制度の要件を詳細に確認して自社の研修計画が適合しているかを検討しましょう。

まとめ

企業が研修に助成金を活用すれば、人材育成にかかるコストを大幅に削減できて質の高い研修の実施が可能となります。主な制度には「人材開発支援助成金」や「スキルアップ助成金」等があり、対象者や申請手続きは助成金ごとに異なるため注意が必要です。

事前に要件を正確に把握し、計画的に申請を進めれば、研修の効果と助成金のメリットを最大限に引き出せます。助成金を活かしてコストを抑えながら研修を実施し、優秀な人材の定着を図りましょう。

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