開業・会社設立直後で十分な資金がなく、補助金・助成金で運転資金をまかないたい方も多いでしょう。補助金・助成金には、開業・会社設立時に活用できるものも数多くあります。ただし、審査に受からなければ受給できないため、申請書類の作成には入念な準備が必要です。
今回は、開業・会社設立時に活用できる補助金・助成金を10選紹介します。本記事を読めば、開業・会社設立時に利用できる補助金・助成金を把握して、スムーズに申請できます。補助金・助成金を活用して、開業・会社設立直後の事業を早い段階で軌道にのせましょう。
自社で使える助成金・補助金・優遇制度が分かる
目次
補助金・助成金とは|両者の違いも解説
補助金と助成金は企業や個人が特定の目的のために受け取れる資金援助制度ですが、対象費用や受給難易度に違いがあります。
補助金は主に国や地方自治体が交付し、公共性の高い事業や政策目的に沿った活動を支援します。例えば、中小企業の設備投資や環境対策などに活用されます。一方、助成金は雇用関係・研究開発関係の取り組みに対して提供されるケースが多いです。
また、補助金は一般的に金額が大きく審査は厳格です。採択件数が限られている関係もあり、申請要件を満たしていても審査落ちするケースがあります。
一方で、助成金は制度にもよりますが、補助金よりも提供する金額の規模が小さいケースが多いです。よって、申請要件を満たしていれば受給できるケースも多数あります。
補助金・助成金を提供する主な団体・組織
補助金・助成金は、さまざまな団体や組織から提供されています。以下では、主要な提供元と特徴を紹介します。
自社の目的に合った補助金・助成金を見つけるための参考にしてください。
厚生労働省
厚生労働省は雇用の促進や労働環境の改善、社会保障の充実などを目的とした補助金・助成金を提供しています。主な制度には、以下のようなものがあります。
提供する補助金・助成金の分野 | 概要 |
雇用関連 | 雇用調整助成金や特定求職者雇用開発助成金など、企業の雇用維持や新規雇用を支援する制度がある。 |
職業能力開発 | 従業員のスキルアップを目的とした教育訓練給付金や人材開発支援助成金などがある。 |
働き方改革関連 | 労働時間の短縮や有給休暇の取得促進などを支援する助成金がある。 |
福祉・介護関連 | 介護サービス事業者や障害者支援施設などへの補助金がある。 |
企業の人材確保や従業員の健康維持、ワークライフバランスの向上など幅広い目的に活用できます。
経済産業省
経済産業省は、日本の産業競争力強化や経済成長を促進するための補助金・助成金を提供しています。主に以下のような分野で支援を行っています。
提供する補助金・助成金の分野 | 概要 |
中小企業支援 | ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金など、中小企業の生産性向上や販路開拓を支援する制度がある。 |
技術開発・イノベーション | 戦略的基盤技術高度化支援事業など、新技術の開発や事業化を支援する。 |
エネルギー・環境 | 省エネルギー設備投資の促進や再生可能エネルギーの導入支援など、環境に配慮した事業活動を後押しする。 |
経済産業省の補助金・助成金は、事業規模や目的に応じて多岐にわたります。公募情報をこまめにチェックし、自社の事業計画に合致する制度を見つけるのが重要です。
各地方自治体
各地方自治体は、地域の特性や課題に応じた独自の補助金・助成金制度を設けています。地域経済の活性化や地域課題の解決を目的としている点が特徴です。
例えば、東京都では都内で創業する企業に向けて「創業助成金」制度を設けています。従業員人件費・賃借料・広告費など、創業初期に必要な経費の一部を助成してくれます。
具体的な補助金・助成金制度の情報は、各自治体のウェブサイトや地域の商工会議所、産業支援センターなどで入手可能です。地域に根ざした事業や新規創業を考えている方は、地元の自治体が提供する制度を積極的に活用しましょう。
民間の企業・団体
民間の企業や団体も、独自の視点で補助金・助成金制度を設けています。例えば、トヨタ自動車によって設立された「トヨタ財団」は、「先端技術と共創する新たな人間社会」という助成制度を募集しています。先端的なデジタル技術をとりまく社会課題の解決に貢献するプロジェクトが対象で、総額4,000万円を助成する制度です。
民間の企業・団体の助成金・補助金制度は、公的機関の支援では対象外となるような革新的なアイデアや小規模なプロジェクトにも門戸を開いている点が特徴です。民間の補助金・助成金を探す際は、各団体のウェブサイトや専門のポータルサイトを活用しましょう。
補助金・助成金を活用するメリット
補助金・助成金の活用は、企業や個人にとってさまざまなメリットをもたらします。以下では、特に重要な2つのメリットについて詳しく解説します。
上記のメリットを理解すれば、補助金・助成金の戦略的な活用につながります。
返済の必要がない
補助金・助成金の最大のメリットは、返済の必要がない点です。返済負担がないため、キャッシュフローを悪化させずに事業を継続しやすくなります。特に、新規事業や研究開発など、すぐに収益化が難しいプロジェクトにおいて非常に有益です。
ただし、補助金・助成金には使途や成果報告の義務があることが多いため、計画的かつ適切な利用が求められます。また、競争率が高い場合もあり、申請時には十分な準備と魅力的な事業計画の提示が重要です。
外部からの信用が高まる
補助金・助成金を獲得できれば外部からの信用が高まる点もメリットです。公的機関や信頼ある団体からの資金援助は、事業の価値や将来性が認められたことを意味します。よって、取引先や顧客からの信頼が高まり、ビジネスチャンスの拡大につながります。
また、補助金・助成金の獲得実績は金融機関からの融資を受ける際にもプラスに働く点もメリットです。事業の将来性や経営者の能力の証明となり、より有利な条件での資金調達が可能になる場合があります。
開業・会社設立時に活用できる補助金・助成金10選
ここでは、開業・会社設立時に活用できる補助金・助成金を10個紹介します。
開業や会社設立時には、さまざまな資金需要が発生します。上記の補助金・助成金は、新規事業の立ち上げを強力にサポートしてくれます。
地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)
地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)は、中小機構・都道府県・金融機関が設立したファンドの運用益により中小企業者を支援する事業です。概要は以下表の通りです。
対象者 | 創業や販路開拓などに取り組む中小企業者 |
支援内容 | 事業化に向けた初期段階の取り組みに対する助成金の交付 |
助成額 | 最大600万円(わかやま中小企業元気ファンド) |
地域の農林水産物・伝統技術を活用する事業に対して、商品開発・販路開拓の取り組みなどを支援してくれます。主に研究・商品開発、需要の開拓に必要な費用が助成対象です。各都道府県で助成条件・内容などが異なるため、詳しくは中小機構のホームページで確認してください。
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業の円滑な事業承継や事業引継ぎを支援するための制度です。概要は、以下表の通りです。
対象者 | 事業承継・引継ぎを行う中小企業、個人事業主 |
支援内容 | 事業承継・引継ぎに関わる取り組みに対する補助金の交付 |
補助額 | 50万円〜750万円 |
補助率 | 1/2〜2/3以内 |
事業承継・引継ぎ補助金は、「経営革新」「専門家活用」「廃業・再チャレンジ」など複数の類型に分かれている点が特徴です。事業者のニーズに応じた支援を受けられます。事業承継を機に新事業展開や業態転換を行う場合に有効です。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓の取り組みを支援する制度です。概要は以下の通りです。
対象者 | 小規模事業者 |
支援内容 | 販路開拓や業務効率化に関する取り組みへの補助金交付 |
補助額 | 50万円〜200万円 |
補助率 | 2/3〜3/4以内 |
小規模事業者持続化補助金の大きな特徴は、比較的小規模な事業者でも申請しやすい点です。チラシ作成、ホームページ開設、展示会出展など幅広い販路開拓の取り組みが対象となります。また、業務効率化のためのITツール導入なども補助対象となる場合があります。
補助金の活用例としては、新商品のPRのためのウェブサイト制作・新たな顧客層開拓のための展示会出展などです。小規模事業者が経営安定化のステップに進むための重要な支援策です。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善を行う事業主を支援する制度です。概要は以下表の通りです。
対象者 | 非正規雇用労働者の正社員化または処遇の改善に取り組む事業主 |
支援内容 | 正社員化や賃金規定の改定、諸手当の制度化などに対する助成金の支給 |
補助額 | 対象者や企業規模、取り組み内容によって異なる(従業員1人あたり3万円〜198万5千円) |
キャリアアップ助成金は、「正社員化コース」「賃金規定等改定コース」など多様なコースが用意されています。企業は自社の状況や目標に合わせて最適な支援を受けられます。
特に、開業・会社設立時には人材の確保と定着が重要な課題です。キャリアアップ助成金を活用すれば、優秀な人材を正社員として雇用したり、従業員の処遇を改善したりすることが可能です。従業員のモチベーション向上や長期的な人材育成にもつながります。
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は、職業経験の不足などから就職が困難な求職者を一定期間試行的に雇用する事業主を支援する制度です。概要は以下の通りです。
対象者 | 就職困難者を試行的に雇用する事業主 |
支援内容 | トライアル雇用期間(原則3か月)の賃金の一部を助成 |
補助額 | 対象者1人につき月額4万円 |
新規開業や会社設立時に、慎重に人材を見極めながら採用を進めたい事業主にとって有用です。トライアル期間中に労働者の適性や能力を実際の業務を通じて確認できるため、ミスマッチのリスクを軽減できます。
トライアル雇用期間終了後、労働者の適性や能力が確認できた場合は正規雇用への移行が期待できます。企業にとっては安定した人材確保につながり、労働者にとっては安定した雇用を得る機会となる点もメリットです。
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を目的としてITツールの導入を支援する制度です。概要は以下の通りです。
対象者 | 中小企業・小規模事業者など |
支援内容 | ITツール(ソフトウェア、クラウドサービスなど)の導入費用の一部を補助 |
補助額 | 5万円~3,000万円 |
補助率 | 1/2〜4/5以内 |
IT導入補助金は、業務効率化やデータ活用、顧客管理の改善など幅広いIT化ニーズに対応しています。例えば、会計ソフトの導入・顧客管理システムの実装・在庫管理ツールの導入などが対象です。
特に開業・会社設立時には、効率的な業務体制の構築が重要です。初期投資を抑えつつ最新のITツールを導入できるため、創業期の競争力強化に大きく貢献します。
研究開発型スタートアップ支援事業
研究開発型スタートアップ支援事業は、革新的な技術シーズを事業化につなげる研究開発型スタートアップを支援する制度です。概要は以下の通りです。
対象者 | 革新的な技術シーズを活用した事業構想を持つ中小企業 |
支援内容 | 研究開発費用など事業化に必要な経費の補助 |
補助額 | 2億円以内 |
補助率 | 2/3以内 |
本事業は「NEDO Entrepreneurs Program(NEP)」「シード期の研究開発型スタートアップ(STS)」など、複数のプログラムで構成されています。各プログラムは、スタートアップの成長段階に応じた支援を提供します。
特に、技術系のスタートアップにとって、研究開発型スタートアップ支援事業は大きな意味を持ちます。高額な研究開発費用をまかなえるだけでなく、NEDOのネットワークを通じてVCや大手企業とのマッチング機会も得られるためです。
地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)は、雇用情勢の厳しい地域で事業所の設置・整備とあわせて従業員を雇い入れる事業主を支援する制度です。概要は以下の通りです。
対象者 | 同意雇用開発促進地域・過疎等雇用改善地域または特定有人国境離島等地域において、事業所の設置・整備と従業員の雇入れを行う事業主 |
支援内容 | 設置・整備費用と増加した人数に応じて助成金を支給 |
補助額 | 50万円~800万円 |
地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)は、地方創生や地域経済の活性化に寄与する重要な制度です。地方で新たに事業を立ち上げる・都市部から地方へ事業を移転する場合に、有効活用できます。
助成金の額は、事業所の設置・整備にかかった費用と新たに雇い入れた従業員の人数に応じて決定されます。事業計画の段階から、助成金の活用を視野に入れた戦略を立てることが重要です。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けながらも新分野展開・事業再編などで規模拡大を目指す中小企業を支援する制度です。概要は以下の通りです。
対象者 | 新分野展開や業態転換、事業・業種転換の取り組みをおこなう中小企業 |
支援内容 | 事業再構築にかかる設備投資、システム構築、人材育成の費用を補助 |
補助額 | 100万円~5億円 |
補助率 | 1/3〜3/4 |
事業再構築補助金は、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応する企業の取り組みを支援します。新規事業者にとっても、既存事業の再構築や新規事業立ち上げの資金として活用できる可能性があります。
創業助成事業
創業助成事業は、東京都が実施している創業支援制度です。創業助成事業の概要は、以下の通りです。
対象者 | 都内で創業を予定されている、または創業後5年未満の中小企業者のうち、一定の要件を満たす方 |
支援内容 | 従業員人件費・賃借料・広告費など、創業初期に必要な経費の一部を助成 |
補助額 | 100〜400万円 |
補助率 | 2/3以内 |
創業初期にかかる幅広い費用を助成してくれます。東京都内で開業・会社設立を考えている方は、真っ先に検討したい制度です。
補助金・助成金を申請する際に共通して求められる要件
補助金・助成金の申請にあたっては、制度ごとにさまざまな要件が設定されています。以下では、多くの制度に共通して求められる主要な要件について解説します。
上記の要件を事前に理解して準備すれば、円滑な申請手続きが可能です。
雇用保険適用事業所の事業主である
多くの補助金・助成金制度において、申請者は雇用保険適用事業所の事業主であることが求められます。助成金の財源は企業の雇用保険から拠出されているためです。
また、雇用保険適用事業所となるためには、労働基準法や社会保険関連法令を遵守している必要があります。雇用保険適用事業所であれば、法令を遵守した企業であると間接的に確認できます。
審査対応に協力できる
補助金・助成金の申請では、審査への協力が不可欠です。審査は、申請内容の妥当性や実現可能性などを確認するために行われます。審査に対して協力がなされなければ、企業が補助金・助成金を適切に使えるか確認できないためです。
審査過程で追加の説明や資料提出を求められるケースがあります。事務局側からの要請に迅速かつ的確に対応できる体制を整えておくのが重要です。
また、一部の制度では審査の一環として現地調査が行われるケースもあります。事業所の状況や設備などを適切に説明できるよう準備しておきましょう。
定められた期間内に申請できる
補助金・助成金の多くは、申請期間が定められています。定められた申請期間内に手続きを完了できないと、要件を満たしていても申請は受理されません。
利用する補助金・助成金については、常に最新情報をチェックして申請期間を事前に把握しておくのが重要です。各省庁や自治体のウェブサイトを常に確認しておきましょう。
また、申請書類の作成には相応の時間がかかります。可能であれば申請期間開始前から準備を進め、余裕を持って申請できるよう計画を立てましょう。
補助金・助成金を申請する手順・ステップ
補助金・助成金の申請は、以下の手順で進めていきます。
特に、申請書の作成など必要書類の準備には時間をかけ、抜け漏れがないようにしましょう。また、不明点があれば提出先の担当機関に確認するのが大切です。
なお、制度によっては補助金・助成金交付後にも定期的な報告が必要なケースがあります。報告期限が定められているため、公募要領で必ず確認しておきましょう。
補助金・助成金申請時に注意すべき点
補助金・助成金の申請は事業発展の大きなチャンスとなる一方で、いくつかの注意点があります。以下では、申請時に特に留意すべき5つのポイントについて詳しく解説します。
補助金・助成金の申請時は、上記のポイントに注意しましょう。
毎年実施されるとは限らない
補助金・助成金制度は、政策目的や経済状況によって変更や廃止される可能性があるため注意が必要です。例えば、国や地方自治体の予算が足りないために、去年は実施されていても今年は廃止されるケースもあります。また、継続実施される場合でも補助対象や補助率、申請要件などが変更される場合もあります。
関心のある制度については、定期的に最新情報をチェックすることが重要です。特定の制度が終了した場合、類似の新しい制度が設けられるケースもあります。
上記の点を踏まえ、補助金・助成金は「あれば活用する」という姿勢で臨むことが賢明です。常に最新の情報を入手して柔軟に対応できる体制を整えておくことが、効果的な活用につながります。
要件を満たした上で申請書類を準備しなければならない
補助金・助成金の申請には、規定の要件を満たした上で適切な書類を準備する必要があります。申請要項を熟読し、すべての要件を理解・確認しましょう。見落としがないよう、チェックリストを作成するのも有効です。
また、一部の制度では、特定の資格や認証の取得が必要な場合があります。取得に時間がかかるケースもあるため、素早い対応が必要です。売上高や利益率などの財務要件がある場合、自社の状況が適合しているかの確認もしておきましょう。
要件を満たし、適切な書類を準備することは補助金・助成金獲得の大前提です。丁寧かつ誠実な対応を心がけ、自社の事業計画や取り組みを明確に伝えられるよう準備しましょう。
審査に通らなければ受給できない
補助金・助成金は、申請すれば必ず受給できるわけではありません。多くの制度では申請者数が採択数を上回るため、競争率が高くなります。
要件を満たしていたとしても、競争率が高いために審査基準が厳しくなって審査落ちするケースもあります。各制度の審査基準をよく理解した上で、他の申請者との差別化を図るために自社の強みや事業の独自性を明確にアピールするのが重要です。
申請後にすぐ受給できない
補助金・助成金は、申請後すぐに受給できるわけではありません。申請から採択決定まで、通常数か月〜1年程度の期間がかかります。よって、補助対象事業の経費は、受給までの間は自社で建て替える必要があります。
上記の点を踏まえ、補助金・助成金の受給を前提とした安易な資金計画は避けるべきです。自社の資金力や事業計画に基づき、補助金・助成金が受給できるまでの資金繰りも事前に考えておく必要があります。
必要経費の全額が補助されるわけではない
補助金・助成金は事業に必要な経費の一部を補助するものであり、全額が補填されるわけではありません。多くの制度では補助率が定められており、1/2や2/3などの割合で補助されて残りは自社負担となります。
また、補助率とは別に補助金額の上限が設定されています。事業規模が大きくても、上限を超えての補助は受けられません。
補助されない部分の資金は自己資金でまかなうことを考え、補助金・助成金を活用した事業計画を立てる必要があります。補助金だけでなく、自己資金や他の資金調達手段も組み合わせた総合的な資金計画が重要です。
開業・会社設立時の補助金・助成金の活用事例
開業・会社設立時の補助金・助成金の活用事例として、以下の3社を紹介します。
補助金・助成金を申請する際は、上記の事例を参考にしてください。
株式会社Rita|事業承継・引継ぎ補助金
株式会社Ritaは、鹿児島県で居宅介護支援事業を営む会社です。代表者の祖父が運営する公衆浴場事業を承継するにあたり、事業承継・引継ぎ補助金を活用しました。公衆浴場は実質閉店状態になっていましたが、補助金を活用して老朽化した施設を解体し、個室温泉として2棟を新築しています。
高齢者に配慮したユニバーサルデザイン個室温泉としてリニューアルし、他社との差別化を図って収益の獲得につなげています。地元のTVに取り上げられて客数も増えており、事業は好調です。
参考:令和4年度 補正予算6次公募 事業承継・引継ぎ補助金事例集 | 事業承継・引継ぎ補助金
株式会社AQEA CLUB|小規模事業者持続化補助金
株式会社AQEA CLUBは、スイミングスクールの運営をおこなう静岡県の会社です。小規模事業者持続化補助金を活用して低体力者向けに個別トレーニングプログラムを開発し、実行するための器具を導入しています。
高齢者や低体力者でも利用できる器具を導入したため、運動の幅が広がって会員がより楽しくトレーニングできるようになりました。結果として、高齢者層に関する売上が前年比で30%以上増加しています。
参考:新しいエクササイズメニューが行える機器を導入し顧客需要に対応|経済産業省中小企業庁
株式会社マルサン|IT導入補助金
株式会社マルサンは、建築資材の販売をおこなう福島県の企業です。新法対応を事業拡大のチャンスと捉え、木造住宅の構造計算ができるようにIT導入補助金でCADソフトを導入しています。
CADソフトを導入したことにより、社内での技術者育成が以前よりもスムーズに進んでいる点が大きな成果です。構造計算をできる技術者が増えており、社内業務の効率化にもつながっています。
開業・会社設立時に補助金を申請する際は法人口座を用意する
多くの補助金・助成金制度では、補助金の振込先として基本的に法人口座が必要となります。個人口座では対応できないケースが多いため、会社設立後は速やかに法人口座を開設しましょう。
法人口座開設には通常、登記簿謄本や印鑑証明書などの書類が必要です。また、金融機関によっては開設に数週間かかる場合もあるため、余裕を持って手続きを進めましょう。
まとめ
補助金・助成金は、開業・会社設立時の事業運営の強い味方です。補助金・助成金を上手く活用できれば、事業成長の大きな後押しとなります。
しかし、申請には綿密な準備が必要です。制度の選択から要件確認、書類作成まで丁寧に取り組むことが成功の鍵です。
ただし、補助金・助成金には毎年実施されるわけではないなど注意点もあります。審査に受からなければ受給できないため、公募要領を確認して申請書を丁寧に作成しましょう。補助金・助成金を活用して、開業・会社設立後の事業をスムーズに軌道へとのせてください。
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