2024年10月から11月にかけて、各都道府県で最低賃金が引き上げられます。
物価の上昇などに対応するためのもので、それぞれの企業は最低賃金を満たす賃金を設定しなければなりません。
企業によっては金銭的な負担が生じてしまいますが、このようなときに利用できるものとして、補助金や助成金があります。
今回は、最低賃金の引き上げに伴い金銭的な負担が発生する企業に向けて、この負担軽減につながる制度を紹介します。
目次
2024年10月より最低賃金が引き上げ
厚生労働省は、2024年10月から11月にかけて、最低賃金の改定が行われることを発表しました。
都道府県によりますが、50円から59円の引き上げが実施され、引き上げ後の全国平均は1055円です。
中央最低賃金審議会が示した金額よりも、高い引き上げを実施した県が多く、全国平均では前年より51円引き上げられています。
なお、最低賃金の引き上げは都道府県によって発行予定年月日が異なるため、具体的なタイミングは各々で確認が必要です。
負担の軽減には補助金・助成金を活用
負担を軽減するためには、補助金や助成金の活用を検討してみましょう。
どのようなケースで利用できるのか、簡単に紹介します。
補助金を活用できるケース
補助金は、国や地方自治体が特定の目的に応じて、資金を提供する制度です。
直接的に賃金の引き上げに対する費用負担を軽減してくれるものではありません。
別の観点で手元の資金を増やし、それを最低賃金の引き上げに充てるケースが該当します。
例えば、業務効率を改善することによって、賃金を引き上げる際に利用できる補助金などです。
設備投資やITツール導入によって業務を効率化し、その成果で賃金を引き上げる中小企業が利用できます。
助成金を活用できるケース
業務改善助成金は、中小企業の生産性向上により、事業場内最低賃金を引き上げるための制度です。
生産性向上に向けて、設備投資やコンサルティングの契約、人材育成などを推進し、最低賃金を一定以上引き上げた場合に利用できます。
助成される費用は、人件費ではなく、設備投資などにかかった費用の一部である点に注意しましょう。
なお、生産要件を満たすことで、助成上限額や助成率などの拡充が得られるため、可能であれば、こちらを目指してみると良いでしょう。
最低賃金の引き上げに活用できる補助金・助成金
最低賃金の引き上げにより金銭的な負担が生じます。
これを軽減するためには、補助金や助成金の活用がおすすめです。
具体的に、活用を検討したい補助金・助成金を以下に紹介します。
業務改善助成金
対象事業者・申請の単位 | ・中小企業・小規模事業者であること・ 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること・解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと |
対象となる設備投資など | ・機器・設備の導入・経営コンサルティング |
助成上限額 | 60万円~600万円※引き上げる労働者数と引き上げ額で決定 |
助成率 | 3/4~9/10 |
特例事業者 | ・申請事業場の事業場内最低賃金が950円未満である事業者・申請前3か月間のうち任意の1か月の利益率が前年同月に比べ3%ポイント以上低下している事業者 |
業務改善助成金は、中小企業の生産性向上により、事業場内最低賃金を引き上げるための制度です。
生産性向上に向けて、設備投資やコンサルティングの契約、人材育成などを推進し、最低賃金を一定以上引き上げた場合に利用できます。
助成される費用は、人件費ではなく、設備投資などにかかった費用の一部である点に注意しましょう。
なお、生産要件を満たすことで、助成上限額や助成率などの拡充が得られるため、
可能ならば、こちらを目指してみると良いでしょう。
キャリアアップ助成金
対象事業者・申請の単位 | ・雇用保険適用事業所の事業主・キャリアアップ管理者を置いている事業主・対象労働者にかかるキャリアアップ計画を作成している |
選択できるコース | ・正社員化コース・賃金規定等改定コース など |
助成上限額 | ・正社員化コース:40万円~80万円 ・賃金規定等改定コース:5万円~6万5,000円など |
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短期が労働者派遣労働者などの「非正規雇用労働者」の企業内キャリアアップを促進するための制度です。
基本的に就業規則等へ新たな制度を規定し、本制度を利用して、正社員へ転換する場合や、直接雇用する場合に適用されます。
大きく分けて正社員化への支援と処遇改善の支援があり、それぞれに詳細なコースが設けられた制度です。
中小企業省力化投資補助金
対象となる設備投資など | 補助対象としてカタログに登録された製品など |
助成上限額 | 200万円~1,500万円 |
助成率 | 1/2以下 |
特例事業者 | ・事業場内最低賃金を45円以上増加させる・給与支給総額を 6%以上増加させる |
中小企業省力化投資補助金は、中小企業の生産性向上やそれによる賃上げを目指した補助金です。
事前に定められた製品カタログからIoTやロボットなどの製品を導入し、生産性を向上させた場合に利用できます。
また、賃上げの目標も設定されているため、最低賃金の引き上げと合わせてこちらも満たすことで補助金を高められることが特徴です。
なお、所定のカタログから製品を選択して導入するため、製品の提供元と提携して事業を進めなければなりません。
とはいえ、汎用性の高い製品を導入することを前提とした取り組みとなっており、最低限の負担で進めることが可能です。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
対象事業者 | 以下を満たす3~5年の事業計画書の策定および実行 ・付加価値額 年平均成長率+3%以上増加 ・ 給与支給総額 年平均成長率+1.5%以上増加 ・ 事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上 |
対象となる設備投資など | 機械装置・システム構築費(必須)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費 |
助成上限額 | 750万円~1億円 |
助成率 | 1/2~2/3 |
特例事業者 | 補助事業終了後、3~5年で大幅な賃上げに取り組む事業者 |
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業などが実施する革新的な製品やサービスの開発生産プロセスなどの省力化に必要な設備投資などを支援する制度です。
基本的にはIoTやAIなど最新の技術を活用し、生産性を向上させるような投資の補助に利用できます。
また、特例の拡充要件が設定されていて、大幅に賃上げすると控除上限額が引き上げされます。
要件が存在するため、これと最低賃金の引き上げを組み合わせれば、設備投資に対する負担を大きく軽減することが可能です。
事業承継・引継ぎ補助金
申請種類 | ・経営革新・専門家活用・廃業・再チャレンジ |
助成上限額 | ~600万円 |
助成率 | 1/2~2/3 |
事業承継引継ぎ補助金は、事業の再編や事業統合などを契機として、経営革新に取り組む中小企業を支援する制度です。
事業の引継ぎそのものに関わる費用はもちろん、M&Aのコンサルティング代や引継いだ後の経営革新に関わる費用を軽減してくれます。
事業拡大のために別の会社を引継ぎ、今回改定される最低賃金の水準に適合させたいような場合に利用できるとイメージしましょう。
建設事業主等に対する助成金
対象事業者 | ・建設事業主・建設事業主団体・職業訓練法人 |
対象となる制度 | ・トライアル雇用助成金・人材確保等支援助成金・人材開発支援助成金 |
建設事業主等に対する助成金は、建設事業主を対象とした助成金と建設事業主団体・職業訓練法人を対象とした助成金から構成されます。
建設労働者の雇用環境の改善や建設労働者の技能の向上などの取り組みに対して助成されるものです。
最低賃金の引き上げに活用する際は「トライアル雇用助成」「人材確保等支援助成金」が中心となるでしょう。
人材確保等支援助成金
対象コース | ・雇用管理制度助成コース・中小企業団体助成コース・人事評価改善等助成コース・建設キャリアアップシステム等普及促進コース・ 若年者および女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)・作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)・外国人労働者就労環境整備助成コース・ テレワークコース・ 派遣元特例コース |
対象となる設備投資など | コースにより詳細が異なる |
助成上限額 | コースにより詳細が異なる |
助成率 | コースにより詳細が異なる |
人材確保等支援助成金は、働きやすい職場環境を構築する企業が利用できる制度です。
複数のコースが定められていて、どの観点から職場環境を改善するかによって適用できるものが異なります。
近年であれば、賃金の向上とテレワークの導入を組み合わせ、最低賃金が上昇しても働きやすい環境づくりなどが可能です。
地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
対象事業者・申請の単位 | 中小企業のうち所定の13要件を満たしていること |
対象となる設備投資など | 計画書を提出し認められたもの |
助成上限額 | 計画書を提出し認められたもの |
助成率 | 計画書を提出し認められたもの |
地域雇用開発助成金は、都市部ではなく過疎部、いわゆる地方で雇用を創出する企業が利用できる制度です。
新しく事務所などを設立して、現地の雇用を安定させることに寄与すれば費用の一部が補助されます。
新しく事務所を設立する際にこちらの助成金を利用できれば、最低賃金が引き上げられても、実質的な費用負担を軽減できます。
ただ、対象は13道県のみに限られ、それらの中でも25地域しかありません。
これら以外では申請できないため、利用できるケースは限られてしまうでしょう。
人材開発支援助成金
対象コース | ・人材育成支援コース・教育訓練休暇等付与コース・人への投資促進コース・事業展開等リスキリング支援コース |
対象となる設備投資など | コースにより詳細が異なる |
助成上限額 | コースにより詳細が異なる |
助成率 | コースにより詳細が異なる |
人材開発支援助成金は、労働者のキャリア開発を支援する企業に対して、その過程の費用を補助する制度です。
例えば、スキルアップのために何かしらの訓練制度を利用するなどした際に、その費用を一部補填してもらえます。
これから最低賃金が高まるならば、従業員にはそれに見合った働きをしてもらわなければなりません。
例えば、今まで以上に高い生産性で多くの仕事をこなすことや、新しく難易度の高い仕事にチャレンジしたりしてもらうなどです。
ただ、突然このような作業を依頼しようとしても、従業員は対応できないことが多いでしょう。
そのため、最低賃金の引き上げに合わせてスキルアップの訓練を受けてもらい、新しい業務にも対応できるようになってもらうことが大切です。
まとめ
最低賃金の引き上げに活用できる補助金・助成金を紹介しました。
非常に種類が多いためどれを活用できるのかイメージできないかもしれません。
F&M Clubであれば、月額30,000円(税抜)で補助金・助成金の相談を含めた各種コンテンツが使い放題です。
最低賃金の引き上げに対応するためにもぜひご検討ください。