事務所・本社・店舗の移転に使える補助金・優遇税制とは?

事務所・本社・店舗の移転に使える補助金・優遇税制とは?

事務所・オフィスの移転などに補助金は使えないと思っていませんか?

本社や支店などの事務所、店舗などを移転するときに使える補助金はあり、補助金を利用することで移転コストを下げることができます。
今回は、事務所・オフィスなどの移転や建物の新築などに使える補助金・税制優遇制度を紹介します。
オフィスが手狭になってきた、よりアクセスが良い場所へ移転したいなどとお考えの企業様はぜひ参考にしてください。 

自社で使える助成金・補助金・優遇制度が分かる

目次

『事業再構築補助金』は建物も補助対象

建物が対象となる補助金の代表例は国(経済産業省)が所管する「事業再構築補助金」です。
事業再構築補助金とは、中堅・中小企業や個人事業主が今までと異なる分野へ進出するなど自社の事業を再構築するときに、建物の新築や改修、機械装置の購入、広告宣伝費などの一部を国から支援してもらうことができる補助金制度です。

事業再構築補助金の概要

事業再構築補助金は3つの補助枠、5つの補助類型があり、それぞれ補助対象の考え方が異なります。

補助枠・補助類型概要
成長分野進出枠
(通常類型)
成長分野への大胆な事業再構築に対する取り組み
成長分野進出枠
(GX進出類型)
グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取り組み
コロナ回復加速化枠
(通常類型)
コロナの影響を受け、コロナで抱えた債務の借り換えを行っている事業者や事業再生における取り組み
コロナ回復加速化枠
(最低賃金類型)
最低賃金引き上げの影響を大きく受ける事業者への支援
サプライチェーン強靱化枠国内サプライチェーンの強靱化に資する取り組み

事業再構築補助金の補助上限額は最大1.5億円(サプライチェーン強靭化枠は5億円)、補助率の上限は3/4です。補助率や補助上限額は補助枠や従業員数により異なります。
直近の第12回公募における補助制度の概要は次のとおりです。

補助枠従業員数補助上限額
(大幅賃上げ特例時)
補助率
(大幅賃上げ特例時)
成長分野進出枠
通常類型20名以下1,500万円 (2,000万円)【中小企業】
1/2以内(2/3以内)
【中堅企業】
1/3以内(1/2以内)
21名から50名3,000万円 (4,000万円)
51名から100名  4,000万円 (5,000万円)
101名以上6,000万円 (7,000万円)
GX進出類型20名以下3,000万円 (4,000万円)【中小企業】
1/2以内(2/3以内)  
21名から50名5,000万円 (6,000万円)
51名から100名7,000万円 (8,000万円)
101名以上8,000万円 (1億円)
中堅企業  1億円 (1.5憶円)1/3 以内(1/2以内)
コロナ回復加速化枠
通常類型5名以下1,000万円【中小企業】
2/3以内
(従業員数が
5名以下の場合400万円、
6~20人の場合600万円、
21~50人の場合800万円、
51人以上の場合は1,200万円
までは3/4以内)
【中堅企業】
1/2以内または2/3以内
6名から20名1,500万円
21名から50名2,000万円
51名以上3,000万円
最低賃金類型5名以下500万円【中小企業】
借り換えしている場合
3/4以内
借り換えしていない場合
2/3以内
【中堅企業】
借り換えしている場合
2/3以内
借り換えしていない場合
1/2以内
6名から20名1,000万円
21名から50名1,500万円
サプライチェーン強靭化枠
中小企業(建物費がある場合)5億円
(建物費がない場合)3億円
1/2以内
中堅企業(建物費がある場合)5億円
(建物費がない場合)3億円
1/3以内
【引用】事業再構築補助金(サプライチェーン強靭化枠を除く)公募要領(第12回)1.3版|事業再構築補助金事務局
【引用】事業再構築補助金(サプライチェーン強靭化枠)公募要領(第12回)1.4版|事業再構築補助金事務局

事業再構築補助金の対象となる建物

事業再構築補助金の対象となる建物費とは建物と建物附属設備です。
ただし建物を新築する場合は必要性が認められた場合に限られます。

事業再構築補助金の補助対象となる建物

①事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫その他事業計画の実施に不可欠と認められる建物の建築・改修に要する経費

②建物の撤去に要する経費

③賃貸物件等の原状回復に要する経費

➃貸工場・貸店舗等に一時的に移転する際に要する経費(貸工場・貸店舗等の賃借料、貸工場・貸店舗等への移転費等)

【引用】事業再構築補助金(サプライチェーン強靭化枠を除く)公募要領(第12回)1.3版|事業再構築補助金事務局

また建物の新築や改修に伴う経費についても補助対象とならない経費が例示されています。

事業再構築補助金の補助対象とならない建物関連経費の例
  • 構築物
  • 家賃、保証金、敷金、仲介手数料、光熱水費
  • 賃貸する建物
  • 単なる契約期間満了に伴う退去のための原状回復費用

【参考】事業再構築補助金(サプライチェーン強靭化枠を除く)公募要領(第12回)1.3版|事業再構築補助金事務局

建物の新築は必要性が求められます

事業再構築補助金は建物が補助対象となりますが、建物を新築する場合は「必要不可欠である理由」が求められ、その理由を「新築の必要性に関する説明書」として提出する必要があります。
必要不可欠である理由とは、既存建物の改築では補助対象事業ができない、賃借可能な物件が近隣にないなどです。事業再構築補助金事務局の公式ホームページに新築費用が認められるケースが例示されています。

【引用】新築の必要性の判断例|事業再構築補助金事務局

『ものづくり補助金』は生産性向上投資が幅広く対象

ものづくり補助金とは、新製品開発や生産プロセスの省力化などのための設備投資・システム構築が対象となる経済産業省が所管する補助金です。なお商業、サービス業の企業も対象となります。
ものづくり補助金は事務所など建物の取得費は対象とはなりませんが、事務所で使用する機械装置・システム構築費などが幅広く対象となります。直近の公募回である第18次公募の概要は次のとおりです。

補助枠補助率補助上限額
(大幅賃上げ特例適用時)
省力化(オーダーメイド)枠中小企業
1,500万円まで1/2以内
1,500万円超の部分は1/3以内
小規模・再生事業者は2/3以内
750万円から8,000万円
(1,000万円から1億円)
製品・サービス高付加価値化枠
(通常類型)
中小企業
1/2以内
(コロナ回復特例適用時2/3以内)
小規模・再生事業者
2/3以内
750万円から1,250万円
(850万円から2,250万円)
製品・サービス高付加価値化枠
(成長分野進出類型(DX・GX))
2/3以内1,000万円から2,500万円
(1,100万円から3,500万円)
グローバル枠中小企業
1/2以内
小規模事業者
2/3以内
3,000万円
(3,100万円から4,000万円)
【引用】ものづくり補助金18次公募要領 概要版|ものづくり補助金事務局

ものづくり補助金の補助対象経費となる機械装置・システム構築費の範囲は次のとおりです。

補助対象経費の区分対象となる経費
機械装置・システム構築費①専ら補助事業のために使用される機械・装置、工具・器具(測定工具・検査工具、電子計算機、デジタル複合機等)の購入、製作、借用に要する経費
②専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費
③①もしくは②と一体でおこなう改良・修繕または据付けに要する経費
【引用】ものづくり補助金公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金事務局

『事業承継・引継ぎ補助金』(M&A型(Ⅲ型))はM&Aによる事業拡大が対象

事業承継・引継ぎ補助金とは、事業を第三者から承継するM&Aなどが対象となる補助金です。他社の事業を承継し営業拠点などを入手するときに活用できます。また補助対象となる経費として建物の賃借料、工事費用などが認められています。
本補助金は「経営革新枠」「専門家活用枠」「廃業・再チャレンジ枠」の3種類の補助枠があります。

補助枠概要
経営革新枠事業再編や統合を伴う事業承継を契機する経営革新や廃業などの取り組み
専門家活用枠事業の引き継ぎ時に必要となる売り手または買い手の専門家経費
廃業・再チャレンジ枠事業承継やM&Aに伴う廃業などの取り組み

事業承継・引継ぎ補助金の補助枠ごとの補助率・補助上限額は次のとおりです。

補助枠補助類型補助率補助上限額
経営革新枠創業支援類型(Ⅰ型)2/3以内
または
1/2以内
600万円
または800万円
(廃業時上乗せ150万円)
経営者交代類型(Ⅱ型)
M&A類型(Ⅲ型)
専門家活用枠買い手支援類型(Ⅰ型)2/3以内
または
1/2以内
600万円
(廃業時上乗せ150万円)
売り手支援類型(Ⅱ型)
廃業・再チャレンジ枠廃業・再チャレンジ類型2/3以内150万円
【引用】事業承継・引継ぎ補助金(9次公募)の概要|事業承継・引継ぎ補助金事務局

本補助金のうち経営革新枠のM&A型(Ⅲ型)の概要は次のとおりです。

補助対象以下の主な要件を満たすこと
・中小企業である被承継者から事業を引き継いだ経営資源を活用した経営革新に取り組む
・補助事業において付加価値額または1人当たりの付加価値額の伸び率が年3%以上向上する計画
・新商品の開発または生産など経営革新的な事業への取り組みかつ認定経営革新等支援機関の確認書がある
補助対象経費・店舗等借入費(国内の店舗・事務所・駐車場の賃借料・共益費・仲介手数料)
・設備費(店舗・事務所の工事、機械器具、など)
・原材料費など
補助率1/2以内
ただし小規模企業や赤字である企業からの事業承継は2/3へ引き上げ
補助上限額600万円
以下に該当する賃上げをおこなう場合は800万円へ引き上げ
・ 補助事業期間終了時に事業場内最低賃金を地域別最低賃金(既に達成している場合は事業場内最低賃金)+50円以上賃上げ
【参考】事業承継・引継ぎ補助金(9次公募)の概要|事業承継・引継ぎ補助金事務局

『大規模成長投資補助金』は補助上限額が最大50億円!

大規模成長投資補助金とは、工場や物流センターなどを新設する大型投資が対象となる補助金です。工場・事務所など建物の建築費用が補助対象となります。
大規模成長投資補助金は補助率が1/3、補助上限額が50億円と大きな金額が補助されます。
また補助対象として、中小企業の規模を超える中堅企業(従業員2,000名以下)が含まれる点が特徴です。

補助対象以下の要件を満たす中小企業、中堅企業
一般枠・投資額10億円以上
・賃上げ要件
(従業員への給与支給総額の年平均上昇率が最低賃金の上昇率以上)
特別枠・投資額10億円以上
・賃上げ要件
(従業員への給与支給総額の年平均上昇率が最低賃金の上昇率以上)
・2025年3月末までに補助事業が完了見込み
補助対象となる経費・建物費(拠点新設・増築など)
・機械装置費(器具・備品費などを含む)
・ソフトウェア費
・外注費、専門家経費など
補助率1/3以内
補助上限額50億円
【参考】大規模成長投資補助金リーフレット(2次公募)|経済産業省
【引用】大規模成長投資補助金2次公募リーフレット|大規模成長投資補助金事務局

大規模成長投資補助金の補助対象となる建物は、生産設備の導入に必要な建物であることが求められ、その中には事務所も含まれています。中古の建物の購入や、土地の造成費などは補助対象となります。

補助対象経費の区分対象となる経費
建物専ら補助事業のために使用される事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫その他成長投資計画の実施に不可欠と認められる建物の建築、増築、改修、中古建物の取得に要する経費
※1 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和 40 年大蔵省令第 15 号)における「建物」、建物と切り離すことのできない「建物附属設備」、およびその「付帯工事(土地造成含む)」にかかる経費が対象です。
※2 建物の単なる購入や賃貸、土地代は補助対象外となります。
※3 建物における構築物(門、塀、フェンス、広告塔等)は補助対象外となります。
※4 撤去・解体費用は補助対象外となります。
※5 生産設備等の導入に必要なものに限ります。
※6 入札・相見積りが必要です。
※7 補助対象となる建物費等は、単価 100 万円(税抜き)以上のものとします。
【引用】大規模成長投資補助金 公募要領(2次公募)|中堅・中小成長投資補助金事務局

なお2024年6月に発表された1次公募における採択結果をみると、申請件数736件に対して採択件数109件(採択率14.8%)と、狭き門となっています。

1次公募における採択案件は、売上高成長率や付加価値増加額などが申請案件全体よりも高水準となる申請が採択されています。

主な指標採択案件
(中央値)
申請案件全体
(中央値)
全社年平均売上高成長率年平均10%年平均7%
補助事業付加価値額増加額14.2憶円5.1億円
年平均従業員目標賃上げ率年4.3%年3.5%
補助金額に対する
補助事業付加価値増加額割合
126%61%
【引用】1次公募における各種指標の中央値(採択者、申請者全体)|大規模成長投資補助金事務局

『IT導入補助金』はDX化やITツールが対象

事務所の移転にあわせてPCや業務システムの更新を検討している事業者向けの補助金が「IT導入補助金」です。
IT導入補助金は中小企業が生産性向上を目的として導入するPCやソフトウェアなどが補助対象です。補助対象となる製品やサービスは事務局のホームページにおいて公開されているものに限られます。
IT導入補助金は、補助上限額が450万円、補助率が1/2から4/5と高め、申請手続きはそれほど難しくない、などの理由から人気がある補助金です。IT導入補助金の主な概要は次のとおりです。

【引用】IT導入補助金チラシ(2024年9月版)|中小企業庁
【参考】IT導入補助金2024|IT導入補助金事務局

『小規模事業者持続化補助金』は販路開拓や生産性向上投資が対象

小規模事業者持続化補助金とは、従業員数が少ない小規模の法人または個人事業主が対象となる補助金です。
事務所や建物は補助対象となりませんが、販路開拓費用や機械などのリース料、WEBサイト構築費などが対象となります。補助上限額は200万円です。

 通常枠賃金引き上げ枠卒業枠後継者支援枠創業枠
補助率2/3以内2/3以内
(赤字の場合3/4以内)
2/3以内2/3以内2/3以内
補助上限額50万円200万円200万円200万円200万円
インボイス特例による上乗せ50万円
【参考】小規模事業者持続化補助金(一般形)ガイドブック第13版|小規模事業者持続化補助金事務局

小規模事業者持続化補助金の補助対象となる経費は以下のとおりです。

補助対象となる経費活用事例
機械装置等費製造装置の購入など
広報費新サービスを紹介するチラシ作成・配布、看板の設置など
WEBサイト関連費WEBサイトやECサイトの開発、構築、更新、改修、運用などの経費
展示会等出展費展示会・商談会の出展料など
旅費販路開拓(展示会場との往復を含む)などの旅費
新商品開発費新商品の試作品開発などに伴う経費
資料購入費関連する資料・図書の購入費用など
借料機器・設備などのリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの)
設備処分費新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備処分など
委託・外注費店舗改装など自社では実施困難な業務を第三者に依頼
【参考】小規模事業者持続化補助金(一般形)ガイドブック第13版|小規模事業者持続化補助金事務局

『優良木造建築物等整備推進事業』は木造建物の新築が対象

事務所や店舗を新築するときに、温もりを感じることができるなどのこだわりにより「木造にしたい」と考えている場合もあるでしょう。木造建築物の新築が対象となる補助金制度があります。
優良木造建築物等整備推進事業とは、国土交通省が所管する補助金制度のひとつです。事務所や店舗などの中高層・大規模木造建物を建築する場合における木造化費用が対象となります。補助率は1/2または1/3、補助上限額は2億円または3億円です。
補助枠として次の2つがあります。

補助枠概要
普及枠炭素貯蔵効果が期待できる中大規模木造建築物の普及に資するプロジェクト
先導枠先導的な設計・施工技術が導入されるプロジェクト

対象となる建物などの概要は次のとおりです。

補助対象以下の主な要件に該当する建物 主要構造部に木材・木質材料を使用する建物新築の場合はZEH・ZEB水準に適合する建物
(事務所等)
階数が4以上
(事務所以外の非住宅)
延べ面積が3,000平方メートル超または階数が3以上不特定多数または特定手数のものが利用する建物
(以下、例示)
映画館、病院、ホテル、旅館、共同住宅、百貨店、マーケット、
展示場、物品販売業を営む店舗、事務所など
補助対象となる経費調査設計計画費建築工事費
補助率普及枠(調査設計計画費)
木造化に関する部分の1/2以内
(建築工事費)
木造化した場合の建築工事費と木造化しない場合の建築工事費の差額に対して1/3以内
先導枠(調査設計計画費)
木造化に関する部分の1/2以内
(建築工事費)
木造化した場合の建築工事費と木造化しない場合の建築工事費の差額に対して1/2以内
補助上限額普及枠2億円
先導枠3億円
【参考】優良木造建築物等整備推進事業 募集要領(2024年)|優良木造建築物等整備推進事業評価事務局

『サステナブル建築物等先導事業』(省CO2先導型)は建物の新築・改修が対象

サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)とは、より効果の高い省エネ・省CO2技術を採用した建物が補助対象となる国土交通省所管の補助金制度です。
ZEH・ZEB水準を満たす建物が主な対象であり、プロジェクト単位で応募し採択される必要があります。
建物の用途などにより、以下の3つの類型があります。

一般部門
(建築物(非住宅)、共同住宅、戸建住宅)
省CO2の実現性が優れる建物の新築・改修が対象
中小規模建築物部門
(非住宅)
延べ面積が概ね5,000平方メートル以下の非住宅建物の新築のみが対象
LCCM低層共同住宅部門省CO2の実現性が優れる低層のアパート・マンションなど共同住宅の新築のみが対象

上記のうち一般部門(建築物(非住宅)、共同住宅、戸建住宅)と中小規模建築物部門(非住宅)の概要はつぎのとおりです。

 一般部門(建築物(非住宅)、共同住宅、戸建住宅)
中小規模建築物部門(非住宅)
補助対象となる主な要件①新築される住宅・建築物については、ZEH・ZEB水準の省エネルギー性能を満たすもの
②材料、設備、設計、運用システムなどにおいて、CO2の削減などに寄与する先導的な技術が導入されるもの
補助対象となる経費建物の工事費 設計費など附帯事務費
補助率1/2以内
新築の場合、建築工事費の5%以内
補助上限額1プロジェクトあたり原則3億円以内
【参考】サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)|国立研究開発法人建築研

『地方移転強化税制(オフィス減税・雇用促進税制)』は本社移転や地方拠点に使える

「地方移転強化税制」とは事務所の移転や地方拠点の開設が対象となる税制優遇制度です。
東京都外に本社機能の一部を移転させる投資(移転型)あるいは地方の企業が地方にある事業所を新設・増築する投資(拡充型)について、税額控除(4%または7%)もしくは特別償却(15%または25%)などの優遇措置があるため、企業によっては大きな節税効果が期待できます。
さらに従業員を増やすまたは転勤させる場合、1人あたり最大170万円が法人税から税額控除されるほか、地域によっては固定資産税の優遇措置などがあります。

この税制優遇措置を適用するためには「地方活力向上地域等特定業務施設整備計画」(以下、整備計画といいます)を策定し、都道府県の認定を受ける必要があります。

整備計画は累計認定件数717件(2024年7月末時点)となっており、このうち地方の企業が事業所を移転または拡充する拡充型が647件を占めています。

【引用】やさしく解説!地方拠点強化税制について|内閣府

移転型(都内から地方への移転)

移転型とは東京23区から地方へ事務所、研究所、研修所などを移転する場合が対象となる類型です。
工場や店舗、営業所は対象外ですが業種に制約はなく、また、登記簿上の本店の登記を移転する必要もありません。
移転型の対象となる例は次のとおりです。

  • (本社の移転)本社を東京23区内から地方へ移転する
  • (本社の機能の一部を移転)本社の研究開発部門を東京23区内から地方へ移転する
  • (本社の機能の一部を移転)本社内の研修施設が手狭であるため地方に研修所を設ける

拡充型(地方から地方への移転)

拡充型とは、地方にある企業が同一または別の場所に本社機能の一部を拡充または移転する投資が対象となります。
拡充型の対象となる例は次のとおりです。

  • (地方にある本社の拡充)地方にある本社を増築する
  • (地方から地方へ本社を移転)地方にある本社を別の地方へ移転する
  • (地方にある本社の機能の一部を移転)本社内のデータセンターを別の地方へ移転する

オフィス減税

整備計画の認定を受けた企業が建物を取得するときに、法人税の税額控除または特別償却ができます。

地方移転強化税制(オフィス減税)の概要
類型移転型拡充型
税制優遇
(法人税)
建物などの取得価格に対して
7%の税額控除
あるいは
25%の特別償却
建物などの取得価格に対して
4%の税額控除
あるいは
15%の特別償却
税制優遇
(法人税)の
限度額
当期法人税等額の20%
(ただし雇用促進税制と合計)
税制優遇
(地方税)
下記の地方税を免除または軽減
・不動産取得税
・固定資産税
・事業税
下記の地方税を免除または軽減
・不動産取得税
・固定資産税
 
対象以下のいずれも満たすこと
・事務所、研究所、研修施設などの建物・建物附属設備・構築物
・取得価額が1,000万円以上(中小企業の場合)
または
取得価額が3,500万円以上(中小企業以外の場合)
整備計画の
認定期限
2026年3月31日
事業開始の
期限
整備計画認定日の翌日から3年以内
【参考】地方拠点強化税制(2024年9月13日版)|内閣府地方創生推進事務局
【参考】やさしく解説!地方拠点強化税制について|内閣府

雇用促進税制

企業が整備計画に基づいて事業を実施し従業員を増やす場合、従業員1名あたり最大170万円が法人税から税額控除できる支援措置です。

地方移転強化税制(雇用促進税制)の概要
類型移転型拡充型
税制優遇(法人税)

新規雇用正社員1名につき
50万円
+上乗せとして40万円(地域により30万円)を
最大3年間
新規雇用正社員1名につき
30万円
転勤による配属者1名につき
40万円(地域により30万円)
+上乗せとして40万円
転勤による配属者1名につき
20万円
税制優遇(法人税)
の限度額
当期法人税等額の20%
(ただオフィス減税と合計)
税額控除の対象
となる企業
税額控除を受ける事業年度とその前年の事業年度において、企業側の事情による離職者がいないこと
整備計画の認定期限2026年3月31日まで
【参考】地方拠点強化税制(2024年3月4日版)|内閣府地方創生推進事務局
【参考】やさしく解説!地方拠点強化税制について|内閣府

地方公共団体独自の補助金・助成金を忘れずにチェック

補助金といえば事業再構築補助金など国が交付する補助金が有名ですが、それら以外にも補助金制度があります。
都道府県や市区町村など地方公共団体が独自に制度を設けている補助金などです。
情報源が限られていることが多いため、詳しい専門家への問い合わせ、補助金・助成金を検索するツールの活用、都道府県などの産業振興関係部署や企業立地部署への確認などをおこない、受給漏れとならないように事前に確認しておきましょう。
以下は都道府県が独自に定めている補助金・助成金の一例です。

商店街起業・承継支援事業【東京都】

都内の商店街において店舗を新たに開業するときや、既存店舗と異なる分野の店舗を開店するときなどに、工事費や設備・備品導入費、店舗賃借料などの一部が助成される制度です。
商店街起業・承継支援事業の補助率は2/3、補助条件額は694万円です。概要は次のとおりです。

補助対象都内商店街で個人事業主または中小企業が開業など下記の3つの類型で店舗を開店するときの経費の一部 開業:新規に実店舗を開店する場合多角化:既存の実店舗と異なる分野の実店舗を開店する場合事業承継:後継者や第三者が引き継いだ店舗を改装する場合
補助対象となる経費店舗改装・改装工事費 設備・備品購入費 宣伝・広告費
補助率2/3以内
補助上限額店舗改装・工事費など250万円
(宣伝・広告費は100万円)
店舗の賃借料1年目180万円(15万円/月)
2年目144万円(12万円/月)
3年目120万円(10万円/月)
【参考】2024年度商店街起業・承継支援事業|東京都中小企業振興公社

テレワーク促進助成金【東京都・オフィス設備】

都内に本社または事業所を置く中小企業・中堅企業などがテレワーク環境を整備するための投資が対象となります。常時雇用する従業員が対象となる「一般コース」、非正規従業員が対象となる「非正規社員拡充コース」の2つがあります。

東京都のテレワーク促進助成金の補助率は2/3(従業員数30名以上の企業は1/2)、補助条件額は150万円(従業員数30名以上の企業は250万円)となっており、概要は次のとおりです。

補助対象以下の条件などを満たす企業がテレワーク環境を整備するための情報通信機器の導入費用の一部 都内に事業所がある個人事業主、中小企業、中堅企業などテレワークに関する社内規定の整備「テレワーク東京ルール実践企業宣言」制度の登録本制度の支給決定日から4か月内に、テレワーク実施対象者全員が6回以上テレワークを実施(非正規社員拡充コースのみ)テレワーク課題解決コンサルティングを受けた「テレワーク導入提案書」の受領
補助対象となる経費パソコン、タブレット、スマートフォン、周辺機器などの物品の購入費またはレンタル用財務会計ソフト、CADソフトなどの業務ソフトウェアの購入費またはライセンス利用料など環境構築のための設定費用、保守管理費用
補助率従業員数2名以上30名未満の企業2/3以内
従業員数30名以上999名以下の企業1/2以内
補助上限額従業員数2名以上30名未満の企業150万円
従業員数30名以上999名以下の企業250万円
【参考】2024年度テレワーク促進助成金<非正規社員拡充コース>募集要項(郵送の手引き)|東京しごと財団
【参考】2024年度テレワーク促進助成金<一般コース>募集要項(郵送の手引き)|東京しごと財団

企業立地促進交付金【福岡県】

福岡県内に工場や本社機能の一部などを移転・新設または増設する計画が補助対象となる制度です。主な対象は製造業やIT産業です。補助上限額が最大50億円(投資金額によって異なります)となっており、大型の投資計画についても活用できます。

またすべての業種を対象として、本社機能部門(調査・企画、情報処理、研究開発部門など)がある事業所が取得する場合についても補助上限額が最大5億円となっています。

補助対象福岡県内に工場や本社機能の一部を移転、あるいは新設や増設するための費用の一部
補助対象となる経費建物、建物附属設備、構築物機械装置、工具、器具備品
補助率業種や投資する施設により異なります
補助上限額(製造業など)
移転の場合、5億円
新設または増設の場合、1億円
(半導体など特定の業種に該当する場合)
投資金額に応じて10億円、20億円、30億円、50億円
【参考】福岡県企業立地促進交付金(補助金)|福岡県

産業集積促進助成金【山梨県】

山梨県内に新たにオフィス、工場や研究所、宿泊施設(ホテル、旅館など)、データセンターなどを設置する投資計画が対象となります。業種や投資内容に応じて下記の5つの制度が設けられています。

  • 製造業:山梨県内で新たに工場などを設置する場合
  • 情報産業:情報関連サービス業の企業が山梨県内に新たに事業所を設置する場合
  • 本社機能の移転:山梨県内に本社、研究施設、研修所を設置する場合
  • オフィスなどの設置:山梨県内にオフィス、研究・研修施設を新たに設置する場合
  • 宿泊業:山梨県内で新たに宿泊施設を設置した場合

上記のうち「オフィスなどの設置」の概要は次のとおりです。

補助対象次の条件をすべて満たす投資にかかる費用の一部 山梨県内へオフィス、研究・研修施設を新たに設置操業から1年以内に県外からの転勤者または県外からの新規雇用者が合わせて5人以上となり、居住の実態を有する既存事業所が山梨県内にない
補助対象となる経費・建物(社宅を含む)
・建物改装費
・設備機器
・従業員の住宅手当
補助率新たにオフィス、研究・研修施設、社宅を設置した場合
・投下固定資産額(土地取得費を除く)
5%
・賃借で新たにオフィス、研究・研修施設、社宅を設置した場合または自己資金で設置し機器を賃借で導入した場合
賃借料および通信回線使用料の1/2以内(3年間)
・転勤者、新規雇用者に住宅手当を支給した場合
住宅手当の1/2以内(3年間)
・賃借したオフィス、研究・研修施設、社宅を改修した場合
改修経費の1/2以内(3年間)
・水素製造設備・水素利用設備
上記に5%を加算
補助上限額新たにオフィス、社宅などを設置
1,500万円
賃借など
年500万円(最大3年間)
【参考】山梨県産業集積促進助成金(オフィスなどの設置)|山梨県(オフィスなどの設置)

事務所移転で補助金を活用するときの6つの注意点

事務所の移転などで補助金を活用したいと考えるときに注意しておく点が6つあります。

最新の改正情報を確認しておく

補助金や税制優遇制度は1年ごとに見直されるなど、頻繁に改定がおこなわれており、補助対象の変更や申請書類の改定などがなされています。
補助金を申請するときは必ず最新の公募要領を確認しましょう。

採択事例を参考とする

補助金の多くは申請した事業計画について審査を受け、採択されることが受給できる条件となります。
申請しようと考えている補助金制度について、既に採択されている事例は申請前に目を通しておきましょう。

加点措置を活用する

補助金の審査における採択率は制度により大きく異なります。自社の計画が採択される可能性を高める方法として、審査上の評価に加点される「加点措置」の活用があります。
加点措置は補助金制度によって異なるため、事前に公募要領などで確認しておきましょう。

助成金を併用する

複数の補助金を同じ計画で受給することはできないことが原則です。
ただし設備投資に補助金を活用し、投資を活用した人財活用について厚生労働省の人材育成を支援する助成金を併給するなどの方法もあります。

税制優遇制度を活用する

補助金と助成金だけでなく、不動産取得税や固定資産税の減免措置など地方公共団体の支援策についても忘れずに活用しましょう。

事業見通しを立てておく

補助金や助成金の申請においては事業計画を求められることが多くあります。事務所の移転や大型の投資をおこなうときは事業計画書を策定しておくなど、事前にしっかりと準備しておきましょう。

まとめ

事務所の移転や建物の建築に活用できる補助金・税制優遇制度をまとめて解説しました。
事務所の移転や解説は自社の経営に大きく影響する可能性がある一大イベントです。事前にしっかりとした事業計画を立てるとともに、多額のコストの一部を賄うことができる補助金などの支援策を十分に活用しましょう。

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