キャリアアップ計画書はどのように作成すれば良い?記載例とともに紹介

キャリアアップ計画書はどのように作成すれば良い?記載例とともに紹介

キャリアアップ計画書はキャリアアップ助成金を申請するための第一歩となる書類です。
キャリアアップ助成金は非正規労働者の正社員化や賃上げが対象となり、従業員の定着率の向上に活用できる助成金ですが、どのように計画を作成すれば良いかわからない方も多いでしょう。
本記事ではキャリアアップ計画書の作成方法を記載例とともに紹介します。

自社で使える助成金・補助金・優遇制度が分かる

キャリアアップ助成金(2024年度版)とは

キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者など非正規雇用労働者を正規雇用する、賃金を引き上げるなどの処遇改善に取り組む企業が対象となる助成金です。法人だけでなく個人事業主も対象です。
キャリアアップ助成金を活用することで、人材の安定的な確保や従業員のモチベーション向上などを図ることができます。
キャリアアップ助成金は大きく分けて、正社員化支援枠と処遇改善支援枠の2つの助成枠があり、取り組み内容によって助成額が異なります。

【参考】キャリアアップ助成金のご案内(2024年度版)|厚生労働省
【参考】キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)のご案内(2024年度版)|厚生労働省

正社員化支援枠2コースの助成対象、助成額

正社員化支援枠は次の2つのコースがあります。

  • 正社員化コース
    6か月間以上雇用している非正規雇用労働者を正社員へ転換するときに助成されます。
    正社員化コースの助成額(1名あたり)は80万円であり、さらに加算措置があります。なお1年度につき1事業所あたり20名が上限です。
申請者の
企業規模
正社員への転換前の雇用形態
有期雇用労働者無期雇用労働者
中小企業80万円 (40万円×2期)40万円 (20万円×2期)
大企業60万円 (30万円×2期)30万円 (15万円×2期)

以下の要件に該当する場合は加算額が助成されます。

正社員化コースの助成加算額正社員へ転換前の雇用形態
有期雇用労働者無期雇用労働者
派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用する場合28万5,000円28万5,000円
対象者が母子家庭の母または父子家庭の父である場合9万5,000円4万7,500円
人材開発支援助成金の訓練修了後に正社員化した場合
(自発的職業能力開発訓練または定額制訓練以外の訓練修了後)
9万5,000円4万7,500円
人材開発支援助成金の訓練修了後に正社員化した場合
(自発的職業能力開発訓練または定額制訓練修了後)
11万円5万5,000円
正社員転換制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合
(1事業所あたり1回のみ)
20万円
(大企業は15万円)
20万円
(大企業は15万円)
勤務地限定など多様な正社員制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合
(1事業所当たり1回のみ)
40万円
(大企業は30万円)
40万円
(大企業は30万円)
  • 障害者正社員化コース
    障害のある非正規雇用労働者を正規雇用労働者または無期雇用労働者へ転換するときに助成されます。
    障害者正社員化コースの助成額(1名あたり)は次のとおりです。
支給対象者転換内容申請者の
企業規模
助成額
重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者有期雇用から正規雇用中小企業120万円
(60万円×2期)
大企業90万円(45万円×2期)
有期雇用から無期雇用中小企業60万円
(30万円×2期)
大企業45万円
(22万5,000円×2期)
無期雇用から正規雇用中小企業60万円
(30万円×2期)
大企業45万円
(22万5,000円×2期)
重度以外の身体障害者・重度以外の知的障害者・発達障害者など有期雇用から正規雇用中小企業90万円
(45万円×2期)
大企業67万5,000円
(33万5,000円+第2期34万円)
有期雇用から無期雇用中小企業45万円
(22万5,000円×2期)
大企業33万円
(16万5,000円×2期)
無期雇用から正規雇用中小企業45万円
(22万5,000円×2期)
大企業33万円
(16万5,000円×2期)

処遇改善支援枠4コースの助成対象、助成額

処遇改善支援枠は非正規雇用労働者の待遇を改善し、より良い労働環境を整備する企業への支援制度です。改善する処遇の内容に応じて以下の4つのコースがあります。

  • 賃金規定等改定コース
    有期雇用労働者などの基本給の賃金規定などを3%以上増額改定し、実際に賃金を引き上げた場合に助成されます。

賃金規定等改定コースの助成額(1名あたり)は次のとおりです。なお1年度1事業所あたり100名までが上限です。

申請者の企業規模賃金引き上げ率
3%以上5%未満5%以上
中小企業5万円6万5,000円
大企業3万3,000円4万3,000円

上記に加えて、職務評価の手法を活用する賃金規定などの増額改定をおこなった場合は1事業所あたり20万円(大企業の場合は15万円)が加算されます。

  • 賃金規定等共通化コース
    有期雇用労働者などと正社員との共通の賃金規定などを新たに規定し、実際に適用した場合に助成されます。支給額は1事業所あたり60万円(大企業は45万円)です。
申請者の企業規模制度導入時
中小企業60万円
大企業45万円
  • 賞与・退職金制度導入コース
    有期雇用労働者などを対象に賞与・退職金制度を新たに導入し、支給または積み立てを開始したときに助成されます。
    支給額は1事業所あたり40万円または56万8,000円(大企業の場合、30万円または42万6,000円)です。
申請者の企業規模制度導入時
賞与または退職金制度の
いずれかを導入
賞与および退職金制度を
同時に導入
中小企業40万円56万8,000円
大企業30万円42万6,000円
  • 社会保険適用時処遇改善コース
    短時間労働者が新たに社会保険被保険者となった際におこなう手当支給・賃上げ・労働時間延長などが助成対象となります。
    2026年3月31日までの限定的な助成制度となります。
    企業のおける取り組み内容に応じて、『手当等支給メニュー』『労働時間延長メニュー』『併用メニュー』があります。助成は同一労働者について1コースのみとなります。
申請者の
企業規模
手当等支給メニュー
1年目および2年目3年目
社会保険料相当額の
手当支給または賃上げ
基本給の総支給額を
18%以上増額
中小企業40万円(10万円×4期)10万円
大企業30万円(7万5,000円×4期)7万5,000円
申請者の
企業規模
労働時間延長メニュー
1時間以上
2時間未満
2時間以上
3時間未満
3時間以上
4時間未満
4時間以上
基本給の賃上げ
15%以上
基本給の
賃上げ10%以上
基本給の
賃上げ5%以上
中小企業30万円30万円30万円30万円
大企業22万5,000円22万5,000円22万5,000円22万5,000円

併用メニューは、社会保険加入後、1年目に手当等支給メニュー、2年目に労働時間延長メニューの取り組みをおこなった場合、それぞれの額が助成されます。

キャリアアップ助成金の申請に必要なキャリアアップ計画書とは

キャリアアップ助成金の主な手続きは次の5つです。

  1. キャリアアップ計画書の作成
  2. 就業規則などの改定
  3. 就業規則などに基づいた正社員への転換や処遇改善の実施
  4. 正社員転換などの実施後、6か月間の賃金支払い
  5. 支給申請

キャリアアップ助成金を申請する第一歩がキャリアアップ計画書の作成です。
キャリアアップ計画書とは、非正規雇用労働者などのキャリアアップのために、自社で取り組む内容、対象となる労働者、期間などをあらかじめ記載した計画書のことです。様式は厚生労働省のホームページから入手できます。
【参考】申請様式ダウンロード(キャリアアップ助成金)(2024年4月1日以降の取組に係る様式)|厚生労働省

キャリアアップ計画書を作成する手順

キャリアアップ計画書を作成する手順は次の5ステップです。

キャリアアップ計画書の作成手順

STEP1 キャリアアップ管理者の選定
STEP2 キャリアアップ計画期間の決定
STEP3 計画対象、目標などの取り組み(申請するコース)を決定
STEP4 従業員からの意見聴取
STEP5 キャリアアップ計画書の提出

STEP1 キャリアアップ管理者の選定

キャリアアップ管理者とは、事業所ごとに、非正規雇用労働者のキャリアアップに取り組むために必要な知識および経験を有していると認められる者とされています。
キャリアアップ管理者は個人事業主、法人の代表者や取締役、従業員などで問題ありませんが、労働者代表と兼務できないなど次の3つの条件に注意します。

【キャリアアップ管理者を選定するときの3つの要件】

  • キャリアアップ計画を実施する雇用保険適用事業所に雇用されている
  • 複数の事業所で兼任できない
  • 労働者代表と兼任できない

【参考】キャリアアップ助成金Q&A(2024年度版)|厚生労働省

STEP2 キャリアアップ計画期間の決定

キャリアアップに取り組む計画期間を決定します。計画期間は3年間以上5年間以内です。
計画期間内の取り組みが助成対象となるため、特に予定がない場合は5年間とすることがおすすめです。

計画の始期は届け出の翌日以降を記載します。計画の確認に時間がかかることを考慮しておきましょう。

STEP3 計画対象、目標などの取り組み(申請するコース)を決定

キャリアアップのための取り組む内容を決定します。内容は対象となる労働者、目標、期間、目標を達成するために実施する取り組みなどです。
厚生労働省が発表している「有期雇用労働者等のキャリアアップに関するガイドライン」に沿って作成してみましょう。

【参考】有期雇用労働者等のキャリアアップに関するガイドライン|厚生労働省

STEP4 従業員からの意見聴取

非正規雇用労働者を含めて、申請する事業所の労働者代表から意見を聴取します。
労働者代表はキャリアアップ管理者との兼任ができないことに注意しましょう。

STEP5 キャリアアップ計画書の提出

キャリアアップ計画書を都道府県労働局へ提出します。都道府県によって労働局、ハローワークなど提出先が異なることがあるため、事前に確認しましょう。
申請方法は書面または電子申請です。ただし、支給申請を電子申請によっておこなう場合はキャリアアップ計画書を電子申請で届け出しておく必要があります。

キャリアアップ計画書の記載方法

キャリアップ計画書は全4枚です。以下、厚生労働省が発表している記載例をもとに解説します。
【参考】キャリアアップ助成金のご案内(2024年度版)|厚生労働省

表紙【様式第1号(表紙)】

1枚目はキャリアップ計画書の表紙となるページです。記載が必要となる項目は提出日など簡単な項目のみです。
(注意点)
労働者代表者はキャリアアップ管理者と兼務ができないため、別の従業員であることが必要です。

共通事項【様式第1号(共通)】

2枚目はキャリアアップ計画書を届け出する事業所とその事業所におけるキャリアアップ管理者などを記載します。
(注意点)
キャリアアップ管理者の配置日が計画提出日よりも前の日付であることを確認しましょう。

キャリアアップ計画(共通事項)【様式第1号(計画(全コース共通)】

3枚目は申請するキャリアップ計画の計画期間と、取り組むコースについてマルを付します。マルを付けていないコースは助成金を受給できません。
計画作成後に届け出時とは別のコースに取り組む場合は、変更届を提出してコースを追加することとなります。
なお、取り組むことができなかったコースがあっても特に罰則などはありません。

コース別の計画内容【様式第1号(計画(その1から6))】

キャリアアップ計画書の4枚目として、コースごとの計画内容を記載します。
様式はコース別に分かれており、『計画(その1)』から『計画(その6)』まで6種類あります。

  • 正社員化コース
    様式第1号(計画(その1))「1 正社員化コース」に係る計画内容
  • 障害者正社員化コース
    様式第1号(計画(その2))「2 障害者正社員化コース」に係る計画内容
  • 賃金規定等改定コース
    様式第1号(計画(その3))「3 賃金規定等改定コース」に係る計画内容
  • 賃金規定等共通化コース
    様式第1号(計画(その4))「4 賃金規定等共通化コース」に係る計画内容
  • 賞与・退職金制度導入コース
    様式第1号(計画(その5))「5 賞与・退職金制度導入コース」に係る計画内容
  • 社会保険適用時処遇改善コース
    様式第1号(計画(その6))「6 社会保険適用時処遇改善コース」に係る計画内容

記入する内容は、自社におけるキャリアアップ計画の対象者、目標、取り組み内容に該当するチェックボックスにチェックを付けます。

キャリアアップ計画書の提出はいつまで?提出先は?

キャリアアップ計画書の申請期限は、取り組みを実施する日の前日までです。申請期限が行政機関の休業日となる場合はその翌営業日が期限となります。
不備や見落としなどで再提出が必要となることがあるため、取り組み実施日の1か月前までに提出することが推奨されています。
提出先は事業所を管轄する都道府県労働局です。都道府県によって労働局、ハローワークなど申請窓口が異なるため、事前に確認しておきましょう。

キャリアアップ計画書を変更するときは届け出が必要?

キャリアアップ計画書を提出後、提出した事項や申請するコースを変更する場合などは事前に届け出が必要です。変更を届け出しない場合、助成金を受給できない可能性があります。

変更の際は「キャリアアップ計画書(変更届)」が必要

キャリアアップ計画書の記載事項について変更する場合は、管轄労働局に「キャリアアップ計画書(変更届)」を提出する必要があります。変更届を提出するときの添付書類は次の3つです。

【キャリアアップ計画書(変更届)の添付書類】

  • 変更前のキャリアアップ計画書の写し
  • キャリアアップ計画変更箇所申告表
  • 変更後のキャリアアップ計画

【引用】キャリアアップ計画書(変更届)(2024年4月1日更新)|厚生労働省

変更届が必要となる変更内容

キャリアップ計画書(変更届)の提出が必要となる主な変更事項は次のとおりです。

  • 事業名、労働者代表者、キャリアアップ管理者、計画期間や取り組み内容など
  • 取り組むコースの変更、追加

なお同一コース内で取り組み内容のみを変更する場合(社会保険適用時処遇改善コース内のメニューの変更など)は届け出不要とされています。

キャリアップ計画書の注意点・同時におこなうべき手続き

キャリアアップ計画書は「作成して終わり」ではありません。キャリアアップ計画書を作成したときは、就業規則など関係する書類についても改定が必要です。

特に就業規則は労働法に関する専門知識が求められるため、専門家への相談がおすすめです。

就業規則、賃金規定などの改定

最も負担となる作業が就業規則などの改定です。就業規則を見直すときに、以下の内容について見直ししておきましょう。

  • 正規雇用労働者と非正規雇用労働者の区分の定義
  • 非正規雇用労働者から正規雇用労働者への転換の基準と手続きの方法、転換時期など
  • 昇給、賞与などの支給基準、賞与を支給しない場合の文言など
  • 諸手当の名称、支給額、支給基準など
  • 有期雇用労働者の契約期間

またキャリアアップ助成金の申請においては就業規則とともに労働条件通知書が重要な書類となります。就業規則の変更とともに、雇用形態を転換した際の労働条件通知書の作成や更新を忘れないように注意しましょう。

就業規則を変更したときは労働基準監督署へ届け出が必要

就業規則を変更したときは、労働基準監督署へ届け出が必要であり、あわせて従業員からの意見の聴取、社内での周知などが必要となります。

まとめ

キャリアアップ助成金は、従業員にとっては待遇が良くなり、企業にとっては人件費の一部を受給でき、人材定着につながりやすくなるなど、双方にメリットがあるため、積極的に活用を検討しましょう。

キャリアアップ助成金を申請するための第一歩である「キャリアアップ計画書」は全4枚であり、計画書の作成自体はそれほど難しくありません。
キャリアアップ助成金の審査が厳しいといわれる主な理由は、計画書と就業規則など書類間で高い整合性が問われるためであるといわれています。
就業規則の見直しなどは社会保険労務士や専門的な知識がある専門家を活用し、従業員の定着率の向上、モチベーションの上昇などに計画的に取り組みましょう。

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