働き方改革推進支援助成金の申請には、必要書類の作成・対象となる補助事業の実施などさまざまなステップを踏みます。
スムーズに手続きをおこなうためにも、事前に申請方法を理解しておくことが重要です。
この記事では、働き方改革推進支援助成金の申請方法について、種類・対象者・スケジュールなどを解説します。
働き方改革推進支援助成金を活用して、自社の労働環境改善・生産性向上に繋げましょう。
自社で使える助成金・補助金・優遇制度が分かる
目次
働き方改革推進支援助成金とは
働き方改革推進支援助成金は企業が長時間労働の解消・柔軟な働き方の導入などに取り組む際に、かかった費用の一部を助成してくれる制度です。
働き方改革推進支援助成金の目的は企業の自発的な働き方改革への取り組みを促し、労働者の生産性向上・健康維持に繋げる点にあります。
助成対象には、休暇取得の促進・労務管理者に対する研修などさまざまな取り組みが含まれます。
企業は労働時間の削減・柔軟な働き方の実現に向けた具体的な計画を立て、一定の要件を満たせば助成金の交付を受けられる流れです。
企業の経済的な負担が軽減され、従業員の働き方改革がより推進されることが期待されています。
働き方改革推進支援助成金の活用事例
働き方改革推進支援助成金の特徴・活用事例として、厚生労働省が公表している事例を3つ紹介します。
働き方改革推進支援助成金を申請する際は、上記の事例を参考にしてください。
顔認証システムと労務管理ソフトの導入|株式会社寺田鉄工建設
株式会社寺田鉄工建設は、総合建設業を営んでいる会社です。
同社は労働時間の集計にタイムカードを使用してエクセルで手入力をおこないデータ集計していました。
しかし、打刻の印字不明瞭・打刻漏れが発生するようになり、労働時間を適切に把握できていない点が課題となっていました。
上記の状況から同社は働き方改革推進支援助成金を活用して、顔認証システム・労務管理ソフトを導入しています。
打刻漏れ・手入力によるミスなどのエラーが起きなくなり、正確な労働時間を計測できるようになりました。
労働時間を可視化できるようになったこともあり、時間外労働時間の削減も促進されています。
工業用縫製ミシンの導入による業務効率化|中外製網株式会社
中外製網株式会社は、繊維工業を営んでいる会社です。
同社では漁業用の網の補正作業を手作業でおこなっていたため、縫製に時間がかかり長時間労働が発生している点が課題でした。
そこで働き方改革推進支援助成金を活用して、工業用縫製ミシンを導入します。
手作業よりも作業時間が短縮され残業時間の大幅な減少へと繋げています。
結果として年間の時間外労働は半減し、労働環境の改善に結びつきました。
多機能加熱調理器の導入による三方よし|株式会社グッドステーション
株式会社グッドステーションは、社会福祉士施設業を営む会社です。
同社では、入居者全員の食事を一度に4〜5食ずつしか用意できず、業務が非効率的である点に課題を感じていました。
そこで働き方改革推進支援助成金を活用して、多機能加熱調理器を導入しました。
操作が簡単で誰でも効率よく調理できるようになり、調理時間の短縮に繋げています。
また、一度に入居者全員分の調理が可能となったため、人材不足の解決につながっている点も特徴です。
働き方改革推進支援助成金の申請前に確認しておきたい項目
働き方改革推進支援助成金を申請する前に、企業は以下の項目を確認しておくことが重要です。
- 支給対象となる取り組み
- 成果目標
- 実施期間
- 支給額
後述で詳しく解説しますが、働き方改革推進支援助成金は4つのコースに分かれています。
コースごとに上記の項目が異なるため、申請条件などが合致しているかをよく確認しましょう。
2024年働き方改革推進支援助成金のコース・種類
2024年働き方改革推進支援助成金のコースには、以下の4種類が存在します。
上記の中から、自社の課題解決につながるコースを選択しましょう。
業種別課題対応コース
業種別課題対応コースは建設業・運送業・病院・砂糖製造業を対象とした支援制度です。
業種別課題対応コースでは、以下のような取り組みにかかる費用の一部を助成してくれます。
- 生産性の向上
- 時間外労働の削減
- 週休2日制の推進
- 勤務間インターバル制度の導入
- 医師の働き方改革推進
建設業・運送業・病院・砂糖製造業は、2024年4月1日から時間外労働の上限規制が適用されます。
上記業種での労働環境改善を支援するために、新たに設けられたコースです。助成金額は最大1,000万円となっています。
労働時間短縮・年休促進支援コース
労働時間短縮・年休促進支援コースは、中小企業の長時間労働の改善・年休取得率の向上に取り組む企業を対象としています。
2020年の4月1日から中小企業に時間外労働の上限規制が適用されたことをきっかけに設立されたコースです。
業務効率化のための新規設備導入・外部の専門家によるコンサルティング実施など幅広い経費が対象となります。助成金額は最大730万円です。
勤務間インターバルコース
勤務間インターバルコースは、勤務間インターバルの導入に取り組む中小企業を対象としています。
勤務間インターバルとは、勤務終了後から次の出勤までに一定の休息時間を設ける制度です。
たとえば、前日の業務終了から翌日の出勤まで11時間以上の休息時間を設けるといった具合です。
労働者の生活・睡眠時間を確保して健康維持・過重労働防止を図るための制度で、2019年4月から制度導入が努力義務化されました。
勤務間インターバルコースでは勤務間インターバル制度導入における幅広い経費が支援対象で、最大580万円の助成を受けられます。
働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)
団体推進コース
団体推進コースは、事業主団体(事業協同組合・商工会議所など)を対象とした支援コースです。
事業主団体が傘下の事業主が雇用する労働者の労働条件改善のため、時間外労働の削減・賃金引き上げに向けた取り組みを実施した場合に助成金を受けられます。
労務管理に関するセミナー・外部専門家による指導など幅広い取り組みが対象となります。助成金は最大1,000万円です。
働き方改革推進支援助成金の対象者
働き方改革推進支援助成金の対象者はコースごとに条件が異なるため、下記の厚生労働省 で確認してください。
なお、上記は中小事業主であることを前提としており、以下の条件を満たす必要があります。
業種 | 資本または出資額 | 常時使用する労働者 |
小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50名以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100名以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100名以下 |
そのほかの業種 | 3億円以下 | 300名以下 |
働き方改革推進支援助成金の対象となる取り組み
働き方改革推進支援助成金の対象となる取り組みは、具体的に以下の通りです。
団体推進コースの対象となる取り組み
団体コースのみ事業主団体を対象としているため、助成を受けられる取り組み内容が異なります。
申請をおこなう際には、上記の取り組みに該当するか事前に確認しましょう。
- 市場調査の事業
- 新ビジネスモデル開発、実験の事業
- 材料費、水光熱費、在庫等の費用の低減実験(労働費用を除く)の事業
- 下請取引適正化への理解促進等、労働時間等の設定の改善に向けた取引先等との調整の事業
- 販路の拡大等の実現を図るための展示会開催及び出展の事業
- 好事例の収集、普及啓発の事業
- セミナーの開催等の事業
- 巡回指導、相談窓口設置等の事業
- 構成事業主が共同で利用する労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新の事業
- 人材確保に向けた取組の事業
団体推進コース以外の対象となる取り組み
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 人材確保に向けた取組
- 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
- 労務管理用機器の導入・更新
- デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
- 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)
働き方改革推進支援助成金の申請方法
働き方改革推進支援助成金の申請方法は、主に以下の3ステップを踏む必要があります。
- ステップ①交付申請書の作成・提出
- ステップ②支給対象事業の実施
- ステップ③支給申請書の作成・提出
働き方改革推進支援助成金を申請する際は、上記ステップを参考にしてください。
ステップ①交付申請書の作成・提出
働き方改革推進支援助成金を受給するための最初のステップは、交付申請書の作成・提出です。
まず、申請する事業の内容・実施に向けた具体的な計画を立てる必要があります。
助成対象となる取り組みが自社の課題解決に適しているかを確認し、計画書を作成しましょう。
次に、交付申請書に必要事項を記載します。
申請者情報・計画内容・見積もり金額などを正確に記載します。加えて、必要な添付書類も併せて準備しましょう。
提出先は、最寄りの労働局雇用環境・均等部(室)です。
申請書類一式を担当部署に直接持参するか、郵送で提出します。
申請書類の内容が審査の対象となり、助成対象として認められるかどうかが判断されます。
申請内容に不備があると交付決定が遅れる、もしくは不採択となる可能性があるため十分な準備が必要です。
ステップ②支給対象事業の実施
交付申請が承認されると、いよいよ支給対象事業の実施に入ります。
申請時に作成した計画に沿って事業実施期間内に事業を完了させなければなりません。
特に重要なことは、事業実施にかかる経費の管理です。支給申請には対象経費を支払った証明書が必要です。
支払の事実(支払の相手方・支払内容・支払日・支払額など)を証明できる資料を保管・整理しましょう。
ステップ③支給申請書の作成・提出
最後のステップは、支給申請書の作成と提出です。
支給申請書には、事業の実施結果・助成対象経費などを記載します。加えて、証拠書類の添付も必要です。
提出先は、交付申請と同様に最寄りの労働局雇用環境・均等部(室)となります。
支給申請書類一式を担当部署に直接持参するか、郵送で提出します。
2024年分の支給申請書の受付の締切は、事業実施予定期間が終了した日から起算して30日後の日、または2025年2月7日のいずれか早い日までです。
2024年働き方改革推進支援助成金のスケジュール
2024年の働き方改革推進支援助成金の申請スケジュールは、以下の通りです。
交付申請期限 | 2024年11月29日 |
事業実施期間 | 交付決定の日から当該交付決定日の属する年の1月31日まで |
支給申請期限 | 事業実施予定期間が終了した日から起算して30日後の日、または2025年2月7日のいずれか早い日まで |
2024年の働き方改革推進支援助成金は2024年4月1日から申請受付が開始されています。
申請受付は通年でおこなわれていますが、締切は2024年11月29日までです。
採択結果が公表された後、補助対象となる事業を交付決定日の属する年の1月31日までに実施する必要があります。
働き方改革推進支援助成金の必要書類
働き方改革推進支援助成金の申請には、以下の書類を準備する必要があります。
- 交付申請書(様式第1号)
- 事業実施計画(様式第1号別添)
- 36協定届(特別条項の締結状況を含む)
- 就業規則の写し
- 労使協定の写し
- 対象労働者の交付申請前1月分の賃金台帳の写し、労働時間が分かる書類
- 見積書
上記のように、働き方改革推進支援助成金の申請には、さまざまな書類の準備が必要です。書類作成の際は要件を十分に確認し、必要な情報を漏れなく記載しましょう。
申請様式は厚生労働省ホームページよりダウンロードできます。
働き方改革推進支援助成金を申請する際の注意点
働き方改革推進支援助成金を申請する際の注意点として、以下の4点が挙げられます。
- 対象条件を確認する
- 締切には余裕をもって提出する
- 実際に支給されるまでに時間がかかる
- 支給対象事業の実施期間は長めに確保する
働き方改革推進支援助成金を申請する際は、上記のポイントに注意しましょう。
対象条件を確認する
働き方改革推進支援助成金を申請する際の最も重要な注意点は、対象条件を十分に確認することです。
働き方改革推進支援助成金ではコースごとに対象となる条件が異なっています。
たとえば、「業種別課題対応コース」では特定の業界の課題解決に資する取り組みが対象であり、対象業種は限定されています。
助成対象経費にも条件があり、設備投資・研修実施など使途が限定されているため注意が必要です。
労働時間の削減効果・年次有給休暇の取得促進など、成果目標も定められています。
したがって、申請前に自社の状況に合った支援コースを見極め、対象となる取り組み・必要な要件を確認しましょう。
担当の労働局に問い合わせるなど、事前の十分な確認が重要です。
締切には余裕をもって提出する
働き方改革推進支援助成金の申請では、締切日までに余裕をもって書類を提出しましょう。
働き方改革推進支援助成金は、年ごとに申請受付期間が設けられています。
2024年の場合、交付申請の締切は2024年11月29日までです。
実際に支給されるまでに時間がかかる
働き方改革推進支援助成金を申請する際の注意点として、実際の支給までに時間がかかる点があげられます。
交付申請書類の審査には、ある程度の期間が必要です。
申請書類の内容を詳細に確認し、助成対象として適切かどうかを判断する作業に時間を要するためです。
交付決定通知を受け取ってから事業を実施するわけですが、事業完了後に支給申請をおこなう必要があります。
支給申請書類の審査にも、再び時間がかかります。申請してから実際の支給まで1年近い期間がかかることが一般的です。
支給対象事業の実施期間は長めに確保する
働き方改革推進支援助成金の申請に当たっては、支給対象事業の実施期間を十分に確保しましょう。
事業実施期間は当該交付決定日の属する年の1月31日まで設けられていますが、実際には予期せぬ遅延や障害が生じる可能性があります。
支給対象事業の実施期間を長めに確保しておけば、事業が予定通りに進まない場合でも無理なく取り組みを完遂できます。
まとめ
働き方改革推進支援助成金の申請には計画作成・書類提出などいくつかのステップがありますが、事前の要件確認・余裕をもった申請が重要です。
支給までに1年近くの期間を要するため、資金が枯渇しないよう財務面の管理も慎重におこなう必要があります。
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