中小企業省力化投資補助金は人手不足対策のために導入する省力化設備が対象の補助金です。
対象製品をカタログから選択する簡便な方式ですが、業種による制限や販売事業者との共同申請が必要などの注意点があります。
本記事では、省力化投資補助金の申請方法や補助額、補助率などをわかりやすく解説します。
自社で使える助成金・補助金・優遇制度が分かる
目次
中小企業省力化投資補助金とは
中小企業省力化投資補助金(以下、省力化投資補助金と記載しています)は、人手不足解消を解決するための汎用的なロボットの活用などが対象となる補助金です。省力化投資により生産性の向上と賃上げを推進することが目的です。
所定のカタログから対象製品を選択し、その購入費用の2分の1、最大1,500万円を受給することが可能です。
カタログに掲載されている製品のみが対象、補助を受けたい申請事業者と製品を販売する販売事業者が共同で申請するなどの要件があります。
中小企業省力化投資補助金の申請方法と受給までの流れ
省力化投資補助金の申請から受給までの流れは次のとおりです。
STEP1 GビズIDプライムアカウントの取得
STEP2 販売事業者との購入相談、事業計画の策定
STEP3 交付申請(電子申請)
STEP4 採択通知・交付決定
STEP5 省力化製品の購入
STEP6 実績報告
STEP7 補助額の確定、補助金の支給
STEP1 GビズIDプライムアカウントの取得
省力化投資補助金を申請するときはGビズIDプライムアカウントの取得が必須です。
GビズIDとは、法人や個人事業主向けの行政サービス共通ID・パスワードのことであり、プライム・メンバー・エントリーの3種類があり、省力化投資補助金の申請には、GビズIDプライムの取得が必要です。
STEP2 販売事業者との購入相談、事業計画の策定
省力化投資補助金の対象となる製品とその販売事業者をカタログから選択し、販売事業者との間で共同事業実施規約を締結します。
事業計画として、カタログから選んだ製品やその省力化効果を記載します。事業計画書に記載する事項は次のとおりです。
- カタログから選んだ製品を用いた事業の内容
- 労働生産性の向上目標を達成する見込み
- 賃上げをおこなう場合は従業員に表明した旨
- 補助対象製品の使用方法
- 期待される省力化の効果
- 省力化により既存の業務から抽出できると期待される時間・人員の使途
STEP3 交付申請(電子申請)
事業計画は、省力化投資補助金を申請する事業者と販売事業者が共同で申請します。
複数の販売事業者から購入するときは、販売事業者ごとに申請と実績報告が必要です。
申請手続きは事務局ホームページに開設予定である電子申請システムからおこないます。
申請時に必要な項目は次のとおりです。
- 法人の形態
- 資本金
- 従業員数
- 申請者の業種
- 役員情報
- 株主比率
- 過去3年間の課税所得
- ほかの補助金の申請、採択状況
- 人手不足に関する事項
- 事業計画
- 現在の給与支給総額、事業場内最低賃金
- 賃上げに関する状況
- 直近の決算情報(損益計算書、貸借対照表)
- 従業員1人あたり勤務時間の年間平均
STEP4 採択通知・交付決定
交付申請後、事務局で審査がおこなわれます。
採択されると同時に交付決定が下り、申請受付システムから申請者へ通知されます。
STEP5 省力化製品の購入
交付決定後に対象製品の購入契約と設置および支払をおこないます。
交付決定から実績報告までの補助事業実施期間は12か月間です。
購入時における注意点は次の3つです。
- 交付決定前の購入は対象外(事前着手は認められていません)
- 支払時の証憑は補助金の受給を申請する際に必要となるため、必ず保管
- 現金での支払は対象外
STEP6 実績報告
対象製品の購入後、事務局へ以下の書類を提出します。
賃上げによる補助上限額の引き上げを申請している場合は、賃上げ実績を確認できる資料が用意できてからの報告となります。
- 支払証憑(契約書、請求書、納品書、検品書、振込票など)
- 導入実績の証憑
- 事業計画の達成状況(省力化効果、賃上げの実績)
なお省力化製品の納品後1年未満での利用解除は補助金を返還する必要があります。
STEP7 補助額の確定、補助金の支給
実績報告に基づいて事務局が補助金額を確定し、事業者へ振込します。
中小企業省力化投資補助金の補助上限額・補助率
省力化投資補助金の補助上限額は200万円から最大1,500万円ですが、従業員数と賃上げ要件により異なります。
補助率は従業員数にかかわらず2分の1以下です。
従業員数 | 補助上限額 (大幅な賃上げをおこなう場合) | 補助率 |
5名以下 | 200万円(300万円) | 2分の1以下 |
6名~20名以下 | 500万円以下(750万円) | |
21名以上 | 1,000万円以下(1,500万円) |
従業員数は常時使用する従業員の人数です。
2か月間以内の短期雇用従業員、4か月間以内の季節雇用従業員、試用期間中の従業員などは含みません。
中小企業省力化投資補助金の補助対象者と対象条件
省力化投資補助金の対象となる事業者の条件は下記の6つです。
(事業者としての条件)
- 中小企業またはその関係組合
- すべての従業員の賃金が地域別最低賃金を超えている
(現状と計画についての条件)
- 人手不足で生産性の向上が必要
- 申請する内容がほかの補助金と重複していない
- 労働生産性を向上させる計画
(大幅賃上げによる補助上限額の特例のみ)
- 申請時と比較して最低賃金45円以上増加など賃上げを図る
【引用】中小企業省力化投資補助金 公募要領|中小企業省力化投資補助金事務局
省力化投資補助金の補助対象となる中小企業
対象となる事業者は中小企業、個人事業主、中小企業関係の事業協同組合などです。
中小企業または個人事業主については、経営している事業の主な業種の区分により、資本金または従業員数が以下の範囲内であることが必要です。
資本金 | 常時雇用従業員数 | |
製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300名 |
卸売業 | 1億円 | 100名 |
サービス業(以下の業種を除く) | 5,000万円 | 100名 |
小売業 | 5,000万円 | 50名 |
ゴム製品製造業(タイヤ、チューブ、工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900名 |
ソフトウェア業または情報処理サービス業 | 3億円 | 300名 |
旅館業 | 5,000万円 | 200名 |
そのほかの業種 | 3億円 | 300名 |
上記について、例外が2つあります。
例外その1:親会社・子会社はまとめて1つの会社
親会社が株式(議決権)の過半数を保有している子会社の場合、親会社とすべての子会社をあわせて1つの会社として取り扱われ、グループのうち1社のみが申請可能です。
例外その2:大企業の子会社は対象外
大企業が株式の2分の1以上を保有している中小企業は対象外です。
すべての従業員の賃金が最低賃金を超えていること
省力化投資補助金の補助対象となるためには、すべての従業員の賃金が地域別最低賃金以上の水準であることが必要です。
人手不足
人手不足とは下記の①から④のいずれかの状態を指します。
④のみによる申請は例外となり、省力化の効果を定量的に説明することが求められます。
- 直近の従業員の平均残業時間が30時間超
- 従業員数が前年度比5%以上の減少(リストラは除く)
- 求人掲載など採用活動をおこなっても採用人数が求人数に満たない
- そのほか、省力化を進める必要に迫られている
ほかの補助金などと重複していない計画
以下に該当する場合は省力化投資補助金の対象外となります。
- ものづくり補助金の交付決定から10か月以内の事業者
- 過去3年間に2回以上、ものづくり補助金の交付決定を受けている事業者
- 事業再構築補助金の対象となる事業に使用する計画
- 観光地・観光産業における人材不足対策事業の交付決定を受けたまたは申請中の事業者
- 補助対象経費は重複していないが、テーマや事業内容がIT 導入補助金と同一または類似内容の事業(同じ業務プロセスに省力化製品を導入するもの)
労働生産性の向上目標
省力化投資補助金の計画書は、労働生産性を年平均成長率3.0%以上向上させる内容が求められます。
労働生産性は報告時点で期末を迎えている直近の事業年度について、以下の計算式によります。
※効果報告回数については当該報告時点を含めます。つまり、過去に効果報告を行った回数に1を加えた数です。
賃上げ(大幅賃上げ特例による補助上限額の特例)
補助上限額の引き上げの特例を申請する場合は、賃上げ目標を計画書へ記載します。
賃上げ計画は次の3つの条件をすべて満たす必要があります。
- 申請時と事業期間終了時点とを比較して、事業場内最低賃金が45円以上増加
- 申請時と事業期間終了時点とを比較して、給与支給総額が6%以上増加
- 申請時に従業員へ賃上げ計画を説明している
事業場内最低賃金の増加は、申請する事業を実施する事業場が対象です。
また給与支給総額とは、すべての従業員と常勤の役員へ支払う給料、賃金、賞与、役員報酬などであり、福利厚生費や法定福利費、退職金は除きます。
【引用】中小企業省力化投資補助金 公募要領|中小企業省力化投資補助金事務局
中小企業省力化投資補助金の補助対象
中小企業省力化投資補助金の主な補助対象は次のとおりです。
補助対象経費 | 主な内容 | 注意点 | 対象外の例 | |
補助対象としてカタログに登録された製品など | 製品本体価格 | 機械装置 工具・器具 付随するソフトウェア、専用システムなど | 事前に登録されている価格が上限 | 中古品交付決定前の購入品消費税現金で支払ったもの新規事業で使うものなど |
導入経費 | 工設置作業費 運搬費 動作確認費など | 事前に登録されている価格が上限 | 交付決定前の費用移動交通費宿泊費申請費用、申請代行費用消費税保険料など |
【引用】よくある質問|中小企業省力化投資補助金事
中小企業省力化投資補助金の補助対象をカタログから選ぶ注意点
省力化投資補助金の対象は導入する製品のカテゴリごとに、対象となる業務や申請者の業種によって異なり、カタログに掲載されている製品に紐付けされた業務のうち1つ以上の業種を経営している必要があります。
カタログは随時改定されるため、最新の情報を確認しましょう。
カテゴリ | 対象業務 | 対象となる業種 | |||||
製造業 | 卸売業 | 小売業 | 倉庫業 | 宿泊業 | 飲食業 | ||
清掃ロボット | 施設管理 | 〇 | 〇 | ||||
配膳ロボット | 配膳・下前 | 〇 | 〇 | ||||
自動倉庫 | 保管・在庫管理、入出庫 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
検品・仕分システム | 資材調達、加工・生産、検査、保管・在庫管理、入出庫 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
無人搬送車 | 資材調達、加工・生産、検査、保管・在庫管理、入出庫 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
スチームコンベクションオーブン | 調理 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
券売機 | 注文受付 | 〇 | |||||
自動チェックイン機 | 受付案内、予約管理、請求・支払、顧客対応 | 〇 | |||||
自動精算機 | 請求・支払 | 〇 | 〇 |
中小企業省力化投資補助金のメリット
省力化補助金を活用する主なメリットは次の3つです。
- 生産性向上
- 従業員の負担軽減
- 販売事業者からのサポート
生産性向上、人手不足の影響の緩和
省力化機器を導入することで、人手を増やすことなく生産性を向上させることが可能です。
人手に依存していた業務を自動化できるため、ほかの業務に人員を投入することができます。
従業員の負荷の軽減
機器を導入することで従業員にかかる負荷を軽減することができ、労働時間の短縮などにつながります。
販売事業者のサポート
販売事業者から製品の導入検討時や事業計画の策定時にアドバイスを受けられ、機器を十分に活用しやすくなります。
中小企業省力化投資補助金の申請期間
省力化投資補助金の申請受付開始時期は現時点では未定です。
公募回数は、2026年9月末までに合計15回程度、2か月に1回程度の頻度で公募されると予測されています。
中小企業省力化投資補助金の受給後のスケジュール
省力化投資補助金を受給後の主な手続きは効果報告・実地検査・財産管理(補助対象機器の利用)の3つです。
【引用】中小企業省力化投資補助金 公募要領|中小企業省力化投資補助金事務局
効果報告は5回5年間
事業完了後に最初に到来する4月から6月までの間を第1回として、以降の5年間、効果報告が必要であり、報告内容は次のとおりです。
- 補助対象機器の稼働状況
- 省力化の効果(従業員数、労働時間、決算情報)
- 賃上げの実績(給与支給総額、事業場内最低賃金)
上記のうち省力化の効果については販売事業者と共同で報告する必要があります。
実地検査
実績報告後、効果報告期間が終了するまでの間に、事務局により補助対象機器が設置されている事業場への実地検査があります。
補助金額などによっては会計検査院の実地検査がおこなわれます。
財産管理
補助金を受給して購入した機器については、一定の期間、売却や廃棄、別の事業での利用などが制限されます。一定の期間とは原則として法定耐用年数を指します。
何らかの事情で補助対象製品を売却する場合は、事前に事務局の承認が必要です。
また、残存簿価や売却額に相当する額の補助金を返納する場合もあります。
まとめ
中小企業省力化投資補助金は、自動ロボットや券売機、AIを活用した設備などの導入費用が半額となる効果があります。人手不足で従業員の負担が重くなっている企業や、自動倉庫の導入などで生産性の向上を図りたい企業などにおすすめの補助金です。
省力化投資補助金は2024年から開始される新しい補助金であり注目度が高いため、多数の応募が予測されています。公募回数を重ねることで採択率が低くなる可能性があるため、早めに申請準備をしましょう。
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自社で使える助成金・補助金・優遇制度が分かる
付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
労働生産性=付加価値額÷従業員数
労働生産性の年率平均成長率=
[{(効果報告時の労働生産性)÷(交付申請時の労働生産性)}^(効果報告回数※)-1 -1]×100%